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多分、僕をしかるべき施設に入れることが検討されていたと思うんだけど、実際にはそうはならなかった。
ある日、見知らぬおじさんとおばさんが僕を迎えにきたんだ。
「はじめまして、優磨くん」
スーツをぴしりと着こなしたおじさんが僕に手を差し伸べた。大きな手だった。
「今まで大変だったね。でも、もう大丈夫だ。これから君は私たちの家で暮らすんだよ」
「……あなたは、誰ですか?」
「君の……遠い親戚だ」
隣でおばさんもうなずいていた。ふっくらとしていて、優しそうな人だと思った。僕のお母さんよりは年をとっていそうだった。
こうして僕はこの二人に引き取られ、世田谷の山丘家で暮らすことになった。