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死神が僕にくれた幸福な運命  作者: 風乃あむり
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5


 いやいやながら引き受けた学級委員長の仕事を、僕はなるべく穏当にやり抜けようとした。


 うまく立ち回っても、逆に何もしなくてもダメだ。極端な行動は目立つ。最低限の仕事だけこなして、目立たぬまま一年が過ぎるのを待てばいい。


 小学生の頃からそうやって過ごしてきた。学校でも、山丘の家でも。だからうまくいくはずだった。


 新学年最初の行事は体育祭。その実行委員は本山だった。


「俺は実行委員としてクラスを盛り上げるからな。優磨はいいんちょーとして俺をサポートしてくれよ!」


 きりりとかっこつけて僕に宣言したこいつは、本当にクラスのムードメーカーだった。


 体育祭当日。六月の初旬、気持ちのいい快晴の土曜日。たくさんの保護者が来校していた。


 本山は声を張り上げクラスの応援をリードし、喜ぶときは一番に跳ね上がり、悔しがるときは全力で地団駄を踏んだ。


 クラスのみんなも本山につられて盛り上がっている。

 その様子を見ながら僕は、あぁこいつは本当にいい実行委員だなあって――、


 思うわけがない。


 徒競走の応援に精を出す本山の楽しげな顔を見ていると、おさえようもなくむかむかしてくる。


 本山、お前知ってたか? 体育祭っていうのは本番までが大変なんだからな。


 各種目の出場選手を決めるときは、もめないようにみんなの意見を聞いて。担任の予定や他クラスと練習場所の調整をしつつ、朝練のスケジュールを組んで。練習をサボるやつがいたらそいつの事情を聞きつつ説得したり。


 そういうのを全部僕に押し付けやがって!


 当日もクラスの誘導とか整列させるとか地味なことはいっさいやらないし。そのせいかクラスのみんなも本山じゃなくて僕に細々したことを言いつけてくるし。


「おーい山丘、さっきの借り物競争でけが人出たけど、全員リレーはどうする? あいつもう走れないよ」


「大丈夫だよ、本山が二回走る。本部の方にも報告しておいたから」


「山丘くん、次の競技の集合時間までまだ余裕あるよね? 先輩の応援に行ってきていい?」


「うーん……いいけど、すぐ戻ってきてね」


「おーい、山丘! こっち来てくれー!」


 今度は荒坂先生まで!!


 なんだこれ!?

 僕は委員長として最低限の仕事しかしないつもりだったのに、なんでこんなことになってんだ!?


 分かってる、悪いのは全部本山だ。こっそりと誰にも気づかず歩く僕の行く道を、大騒ぎしながらあいつが荒らしていくから!


 昼休みにはもう疲れ果てて、応援席で弁当を広げながらぐったりだった。最悪なことに、隣では本山がやたらと豪華な重箱入りの弁当をがっついている。


「どうした優磨! はやくメシ食ってウォーミングアップしようぜ!! 全員リレーはぜってぇ勝ちたいしな!」


「いやだ、僕は昼休みはちゃんと休憩する。アップしたいなら自分でやれよ」


「なんだよー優磨、ノリ悪いじゃん!」


「お前が仕事しないから疲れてるんだよ!!」


 本山はケタケタ笑った。


「いやぁ、やっぱり優磨を委員長に推薦しておいて正解だったな!」


「こ、このやろう! 自分が楽して目立つために僕に委員長を押しつけたな!?」


「今さら気づいたのかよ〜!」


 だめだ、付き合いきれない。このままこいつと一緒にいたら体力と精神力が底をつく。


 僕はさっさと弁当を食べ終わり、万国旗がはためくグラウンドを出た。昼休みの終わりまではまだ時間がある。少しくらいグラウンドを離れても文句は言われないはず。


 校舎の脇を抜けて裏庭の方まで来ると、グラウンドで流れるBGMが遠のいて、ようやくひと心地つけた。


 裏庭は普段から人がいない。二つの校舎に挟まれ緑が生い茂るこの場所は昼間でもやや薄暗く、生徒たちからは忘れられた場所だ。


 そこに涼乃がいた。


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