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「君、なんで委員長なんてやってんのよ」
翌日の朝、いつもの公園で僕は彼女にすごまれていた。彼女は僕が委員長になったことが気に食わないらしい。眼力に殺気がこもってる。
肉食獣に狙われる小動物の気持ちが分かる気がした。でも彼女がなんで怒っているのかは全然分からない。困った。
だいたい僕が先生に目をつけられた(?)のは涼乃のせいなんだから、僕のほうが怒りたいくらいなんだけど。そんなこと怖くて言えない。
「学級委員だなんて、なに似合わないことやってるのよ、バカじゃないの? はぁ? 友だちの推薦? そんなの断ればいいでしょ」
「僕にそんなことできると思う? もう、なんでそんな風に怒るんだよ、涼乃には迷惑かけないよ」
彼女は頬を赤くさせて激怒した。
「もう十分迷惑してるわよっ! 君が今年もやるかと思って、こっちは環境委員になっちゃったんだから!」
「え?」
「もう、なんで山丘くんがいない環境委員に入んなきゃいけないのよ。バカみたい」
頬を上気させ、口をとがらせて怒る涼乃。
ダメだ。
どうしよう。
――可愛い。このひと、すごく可愛い。
「ごめん……あのね、僕だってさ、涼乃と一緒の委員会に入ろうと思ってたんだよ。クラスのバカな男子が僕を委員長に推薦しなければ」
「はいはい、もういいわよ。別に君がいなくても私は真面目にブラック委員会の仕事をまっとうしますから。過労で死んだら泣いてちょうだい」
「縁起でもないこと言わないでよ」
僕が本気で焦り出すと、彼女は気勢を削がれたらしい。
「バカね、冗談よ。私が勝手に環境委員になったんだもん、ちゃんと仕事はするし、そんなことくらいでこの私が死ぬわけないでしょ」
あーぁ、と彼女は伸びをする。
「委員会でも“ぼっち”をやるのか。ちょっと気が滅入るな」
「うん。ごめん」
山丘くんが謝るようなことじゃないわよ、と彼女はもう冷静だった。
「それにしても君が学級委員長だなんてね。似合わない気がするけど」
「僕もそう思う。でも、荒坂先生が」
「あぁなるほど……あの人、熱血なのよね」
剣道部の顧問として、僕よりあの先生のことをよく知ってるんだろう。彼女は肩をすくめた。
「このあいだもね、私に後輩の指導を押し付けようとするのよ。そんなこと私にできるわけないじゃない。ただでさえ人と話すのが苦手なのに」
僕はうなる。
「でも涼乃は剣道部のエースだろ。その技術を伝えられたら、チームの成長になるんじゃないの?」
「はっ、山丘くんまで熱血教師みたいなこと言わないでよ」
た、確かに。うわまずいぞ、荒坂先生が感染ったのかな。
ゾッとする僕の隣で、彼女はめずらしく背を丸めた。
「でもそうね、私も変わらなきゃいけないのかも。クラスでも、部活でも、委員会でも、なんとか“ぼっち”から抜け出せないか、ちょっと頑張ってみようかな」
︎「涼乃がそうしたいなら僕は応援するよ」
だって僕はそのうち君の代わりに死んじゃうから。いつまでも君のそばにはいられないから。
――でも、もし許されるなら。
少しでも長く君と一緒にいたいなぁ。
君が中学を卒業するのを見届けて。できれば、一緒に高校生になって……。




