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その晩、体はひどく疲れてダルかったのに、頭の中はいろんなことを考えて、忙しく働いていた。
涼乃のこと。
そして、僕自身のこと。
僕は、涼乃を傷つける彼女の両親を許せないと思った。
彼女は今日、死にかけていたんだ。
どうして血の繋がった親がそんなことをする? そんなことが許されていいんだろうか?
言葉の形にならない、何か得体のしれない感情が、腹の底でくすぶっていた。それは激しく、熱く、自分がかぶった殻を焼き尽くしてしまいそうだった。
そして目を閉じると、涼乃の顔に並んで、二つの人の良い顔が浮かぶ。
山丘のおじさんとおばさん。
あの人たちは今日、本当に本当に僕を心配してくれていたんだ。
自分の親に殺されかけたような僕のことを。
どうせまたすぐ死ぬ、くだらない僕のことを。
あぁ、今度は別のやわらかな何かが腹の中で生まれている。あぶくのように生じては弾け、その正体がつかめない。
自分のことなのに、どうして何も分からないんだろう。もどかしさに苛立ち疲れ果て、僕は眠りについた。