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彼女が帰宅したのを確認して(彼女は自分の部屋の窓から僕に手を振ってくれた)、僕も帰路についた。
考え事をしながらゆっくり歩いて帰宅すると、山丘家の門前が慌ただしかった。
「え? パトカー?」
サイレンの音は鳴らしていないものの、赤いランプを回転させたパトカーが一台止まっている。
玄関前ではお巡りさんと山丘のおばさんが何かを話していた。おばさんは深刻な表情で、うろたえているように見えた。
何事だと思いつつ邪魔をするわけにはいかないから、そろりと玄関に近づいた。俯き加減に何かを説明しているおばさんも、背を向けてるお巡りさんも僕に気づかなかった。
「あのぉ、何かあったんですか?」
おそるおそる尋ねると、ばっとおばさんが顔を上げた
「……あっ!!」
と叫んで、僕の肩を勢いよくつかむ。ほとんど悲鳴のようの叫びだった。
「優磨っ!! あなたどこ行ってたの!?」
「……えっ?」
泣き声混じりに追及されて、今度は僕が狼狽えてしまった。
――やばい。僕、やらかした……?
もしかして、と年配のお巡りさんがやや呆れ顔で首をかしげた。
「こちらが家出をした息子さんですか?」
「家出っ!? 僕が!?」
反射的に復唱してしまって、お巡りさんにさらに呆れられる。山丘のおばさんは顔を真っ赤にして頭を下げた。
「そうです、あの、本当にさっき突然家を飛び出して……今までこんなことなかったもので、行き先も見当がつかなくて……夫も私も取り乱してしまって……すいません、夜中に騒いでご迷惑をおかけしました」