21
十数分後、黒猫を追ってたどりついたのは、住宅街の小道の奥にあるこ綺麗なマンションだった。
そのエントランス――オートロックの扉の前に、影が丸くうずくまっている。
膝を抱え込むように座り込んだ、中学生。
プリーツスカートに顔をうずめて、ぴくりとも動かない。
「夏原さん……?」
無造作に流れる黒い髪は、間違いなく彼女のものだ。
十二月の夜は、体の芯を突き刺すように寒い。
屋外で座り込んでいるなんて――呼びかけても返事がないだなんて、どう考えてもおかしい。
「ねぇ、夏原さん……!」
最悪の想像に身を震わせながら、彼女のもとにしゃがみ込んだ。もう一度声をかけて抱き起こそうとすると、彼女はゆっくり顔を上げて、ぼんやりと僕を見た。
「……山丘くん?」
「よかった、生きてた……」
一瞬の安堵の後、彼女の唇に全く色がないのに気づいて、僕は急いで自分の上着を彼女の肩にかけた。
「えっと……?」
夏原さんは思考がはっきりしないようだ。寝ていたのかもしれない。
こんな寒い夜に? 屋外で? でも、白く冷え切った彼女の頬を見れば、そうとしか思えなかった。
「このマンションが夏原さんの家? なんで帰らないの!?」
「え……あの、鍵をどこかに無くしちゃって……親が帰ってくるまで待とうと思ってたら寝ちゃって……ていうかどうして山丘君がいるの?」
あぁ、もう。冬に外で寝るなんて。
「ばかっ!! 凍死したらどうするんだよ!」
彼女は目を見開いた。バカにバカなんて言われて驚いたのかもしれない。でも今はそんなことに構っていられない。
「とにかく、体を温めないと! 家に入れないんだったら……そうだ、とりあえずファミレスに行くよ!」
「……はい」
奇妙に行儀の良い返事をする夏原さんの腕を引っ張って、僕はずんずん歩き出した。




