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五月の連休明け、今年度最初の委員会が開かれた。
「あら、ストーカーくん。さすがだね、同じ委員会だなんて」
放課後、特別教室に集められた環境委員たちの中に僕を見つけると、夏原さんは澄ました顔でそう言った。僕は笑う。そう、僕は彼女と同じ委員会を選んで入った。ストーカーだと言われても反論できるはずがない。
「うん、同じ委員としてよろしく」
「よろしくも何もないよ。こんな委員会、押しつけられただけなんだから」
彼女は鼻で笑って、僕の隣の席につく。
「知ってた? 環境委員ってこの学校一の“ブラック委員”なのよ。クソみたいに仕事が多いんだって。しかも掃除」
「え、そうなの?」
「そんなことも知らないで環境委員になったわけ? 情弱ね。同情する」
「いや、ほら、僕は君と同じ委員になりたかっただけだから」
はぁ、と彼女は頬杖をついて眉をひそめる。
「それじゃ本当のストーカーじゃん」
「だから本当にストーカーなんだって」
「はいはい。しかも年季が入ってるんだっけ?」
僕はうなずく。
「そうだよ、ヴィンテージものなんだ」
*
委員会が終わって教室に戻ると、クラスメイトの本山が近寄ってきた。
出席番号順の席で前後になり、教室で一番よく話す相手だ。明るい髪色と軽いノリのいかにもサッカー部って感じの男子。
「なぁ優磨。お前さ、隣のクラスの夏原さんと話してたんだって!?」
すごい。なんでそんなこと知ってるんだ。
「え、怖い。もしかして本山って僕のストーカー?」
僕の冗談を相手にせず、彼は早口でまくしたてた。
「んなわけねーだろ。いや、たまたま教室の前を通りかかったやつが騒いでたから。あの夏原さんが男と話してる、って。夏原さんって美人だけど怖いだろ? 入学式の時も先輩を平手打ちでぶっ倒して生徒指導受けてるし、それから彼女に言い寄ったバスケ部の先輩――ほら、イケメンで有名な三年生、あの人を竹刀で撃退したって噂だぜ」
「そんな噂があるの?」
「知らないのかよ、超有名な先輩なのに」
夏原さんの言ってた通りだ。まだ五月なのに奇妙な噂が流れてる。僕は妙に感心してしまった。
「すごいな、みんな夏原さんに注目してんだ」
「注目っていうか……あれだけ美人だからなぁ。昔からやたらと目立ってるんだよ」
僕は首を傾げた。美人なのは間違いないけど、なんで本山が夏原さんの昔のことを知ってるんだ?
「俺さ、夏原さんと保育園からずっと一緒なんだよ」
「え、幼なじみじゃん」
「そんな感じじゃねーよ? 一言も会話したことないし」
保育園から中学校まで同じとこに通ってたのに? それはすごいな。
「というか昔から誰とも話さないんだよ、夏原さんは。小学校でも有名だったんだから」
「へぇ」
確かに怖いもんな。僕も話しかけて視線で射殺されそうになったし。
「で、優磨、お前みたいなひょろひょろが話しかけて大丈夫だったか? 夏原さんどんな感じ?」
僕は親指をたてる。
「とりあえず話しかけただけで殺されるようなことはなかった。安心しなよ」
「そうなんだ、意外。俺も話しかけてみればよかった」
まぁ、コバエ扱いはされたけど。
「それより本山、部活行かなくていいの? サッカー部って毎日練習だろ?」
「あはは」
本山は腹を抱えて笑う。
「なんだよ、優磨も俺のことサッカー部だと思いこんでんの? 俺、吹奏楽部だよ。楽器はクラリネット」
「えぇ?」
「見た目でよくサッカー部と間違われるんだよな」
「ご、ごめん」
うわぁ、勘違いしてた。サッカー部にも本山にも申し訳ない。
「いいのいいの。サッカー部だって思われてた方がなにかと生活しやすいって、兄ちゃんにアドバイスもらってるからさ。“カーストが高そう”に見えるんだってよ」
「そ、そうなの?」
うんうんと本山は楽しそうにうなずいてる。
カーストとか、よくわかんないけど。
とりあえず、こいつは面白いやつみたいだ。




