表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王総統 ~最強の独裁者が異世界で戦争国家を生み出した~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/34

第21話 独裁者は破滅を与える

 ライダンが猛然と攻め立ててくる。

 縦横無尽に振り回される大剣は、すべての攻撃が私の命を刈り取るのに十分な威力を秘めていた。


「うおおおおオオォォォッ!」


 地面を切り裂きながら刺突が繰り出される。

 跳躍して避けた私は空中で発砲する。


 ライダンは身を翻して大剣を盾にして凌いだ。

 威力の低い拳銃弾は刃に弾かれる。

 よほど狙わなければ大剣を破壊するのは難しいだろう。


(防御行動が迅速だ。こちらの攻撃を警戒しているらしい)


 私は拳銃を捨てながら着地する。

 そこにライダンが斬りかかってきた。

 緩急を織り交ぜた動きで、横殴りの斬撃を放ってくる。


 私はナイフを添えて大剣を受け流した。

 その際、微かな衝撃と違和感を手元から覚える。

 見ればナイフが欠けていた。

 受ける角度が少し不味かったらしい。

 危うくナイフごと胴体を真っ二つにされるところだった。


「ほう」


 感心する私はナイフを投擲する。

 ライダンは大剣にかかる遠心力で躱してみせた。

 そこから彼は這うような姿勢から切り上げを繰り出す。


(鈍重な大剣を活かす術をよく知っている。大した練度だ)


 紙一重でやり過ごした私は、赤熱した刃に注目する。

 近くにいるだけで高熱を感じる。

 掠めれば重傷を負うのは間違いなかった。

 "轟炎"の二つ名も伊達ではないようだ。


 私はライダンから距離を取ると、装着した指輪に意識を向ける。


「ちょうどいい、使いどころがなくて困っていたところだ。君には実験体となってもらおう」


 遠隔召喚で短機関銃を取り出した。

 ロングマガジンの改良版で、射撃速度に優れている。

 構えた私はすぐさま短機関銃を乱射した。


 ライダンは慌てて大剣を盾にする。

 弾丸が次々と大剣に命中して火花を散らせた。

 今回も使っているのは拳銃弾なので、向こうの防御を崩すには至らない。

 何百発と当てれば変わるだろうが、その暇はなさそうだった。


「くそがッ」


 悪態を吐いたライダンが突進を仕掛けてくる。

 大剣で射撃を遮りながら、強引に間合いを詰めてきた。

 中距離から遠距離は不利だと悟ったのだろう。

 その判断は正しかった。

 銃火器を扱う私を殺したいのならば、ライダンは大剣のリーチで戦い続けるしかない。


(まあ、そう簡単に対策はさせないがね)


 後退した私は、遠隔召喚で三つの手榴弾を掴み取った。

 それらのピンを指で挟んで引き抜いて転がすと、そばの瓦礫の陰へ転がり込んだ。


 直後に爆発が起きる。

 瓦礫から覗くと、ライダンは片脚を負傷していた。

 鉄片が食い込んで出血している。

 腕にも火傷を負っていた。


 さすがの英雄でも、至近距離で爆発は防ぎ切れなかったらしい。

 むしろそれだけの怪我で済んでいることが驚異的だった。

 よほど危機察知能力に秀でているのだろう。


 ライダンは血を吐き捨てて私を睨む。


「卑怯者が……正々堂々と、戦えよ」


「見苦しい批難はよしてくれ。これも立派な戦法だとも。それよりこのような余興に参加してやったのだから感謝してほしいものだね」


「ふざけるなァッ!」


 怒り狂うライダンが大剣を振り上げた。

 迫る刃を一瞥しつつ、私は短機関銃の射撃を見舞う。


 大剣は私のそばに突き立ったが当たっていない。

 斬撃の最中に軌道がずれたのだ。

 何もしていなければ私の身体を縦断していたことだろう。


 大剣の柄から手を離したライダンが呻く。


「ぐぅ、くそ……」


 彼の両手から血が溢れ出していた。

 足元には千切れた指が何本か転がっている。


 短機関銃の射撃により、私は指を破壊したのだ。

 身体強化で耐えられることを想定して、同じ箇所に命中させることで確実に欠損させたのである。

 岩の巨人の時と同じ要領だったのでそう難しくはない。

 おかげで斬撃を外すこともできた。


 ライダンは大剣を握ろうとするも上手くいかない。

 血で滑る上に、残る指では力が足りないのだ。

 大剣は見るからに扱いが難しい武器である。

 操るための指が減ると、途端に使えなくなるのだろう。


 大剣を諦めたライダンは、血を飛ばして殴りかかってきた。

 格闘戦に切り替えたらしい。

 連続で攻撃を繰り出してくるも、動きはピーク時より遥かに遅い。

 数々の負傷が彼を消耗させていた。


(そろそろ限界だな)


 私は前腕で蹴りを弾くと、容赦なく短機関銃の引き金を引いた。

 弾切れになるまで撃ち込んでいく。


 後ずさるライダンは両腕でガードした。

 傷だらけになりながらも、急所は辛うじて守って耐えた。

 両腕は肉が弾けて骨が露出しているがまだ動かせる様子だった。


(部位強化……ダリルと同じ技か)


 彼のそれに精度は劣るものの、一応は発動できるらしい。

 短機関銃の連射を耐えるとはなかなかの性能だ。

 きっとそこには彼自身の根性も含まれているに違いなかった。


 ライダンはめげずに組み付こうとしてくる。

 私は短機関銃を捨てると、指輪で散弾銃を召喚した。

 シェイラと同じフルオート式の怪物スペックだ。


 発砲の寸前、危険を察知したライダンは凄まじい反応速度で横に飛んで散弾から逃れる。

 彼は瓦礫に隠れながら私の背後に回り込もうとしていた。

 途中で被弾しつつも、なんとか致命傷を避けている。

 この期に及んでもまだ勝ちを狙う姿は、飢えた獣のようであった。


(悪くないな。早々に絶望されても面白くない)


 私は遠隔召喚で特殊警棒を呼び寄せる。

 すると指輪が割れて外れてしまった。

 どうやら使用回数の限界を迎えたらしい。


 指輪を気にする間もなく、ライダンが再び掴みかかってくる。

 彼の指に炎が灯っていた。

 大剣に宿していた力を移したのか。

 あれで掴まれるのは少し面倒かもしれない。


 私は特殊警棒のスイングをライダンの脳天に叩き込んだ。

 自己催眠で強化した腕力は凄まじい力を発揮する。

 頭蓋を砕き割る感触と共に、前のめりになったライダンが声を上げた。


「ぎぃ、アッ!?」


 ライダンは鼻と口から血を垂れ流していた。

 叫ぶ彼は燃える拳を振り上げるも、私は気にせず特殊警棒で打ち払う。

 さらに彼の脇腹に蹴りをめり込ませた。


 ライダンはあえなく倒れる。

 彼が起き上がる前に、私は素早く滅多打ちにした。

 まずは腰と両膝を破壊して機動力を奪う。

 関節を砕いたので回復は困難だろう。


「ぐ、ぉ、が……」


 ライダンが足首を握り潰そうとしてきたので、手の甲を踏み付けて妨げる。

 そこから左右の肩を順に殴打して骨を折っておく。

 数カ所を粉砕しておけば、身体強化でも動かせないはずだ。


 四肢の自由を失ったライダンを叩きのめす。

 反撃を挫くように何度も執拗に特殊警棒を振り下ろした。

 頭部にもクリーンヒットが連発しているので、もはや意識も曖昧なことだろう。


 特殊警棒が折れたところで私は手を止める。

 ライダンは既に虫の息だった。

 全身各所の骨が折れて瀕死である。

 放っておいても死ぬだろうが、彼には見せしめとして役立ってもらう。


 私は予備の指輪で拳銃を召喚した。

 特に躊躇うことなく、動けないライダンを銃殺する。

 装填された弾をすべて彼の頭部に撃ち込んだ。


 場に静寂が訪れた。

 両軍が黙り込んでライダンの死体を見つめていた。

 続けて拳銃を持つ私に注目する。


 私は悠然とした動きで帝国軍に身体を向けた。

 彼らから絶大な殺気を感じる。

 決闘で敗北した陣営は降伏するルールだが、守る気がないのは明白だった。


 無論、最初から予想できていたことだ。

 だから対策も考えている。

 私は銃を捨てて両目の能力を発動させた。


「――何をしている、頭が高いぞ。君達の前にいるのは総統だ。敗北者としてふさわしい態度を示したまえ」


 最前列の帝国兵がひれ伏した。

 そこから波及して次々と頭を垂れていく。

 誰も逆らうことは許されなかった。

 英雄を失った敗残兵は、洗脳を施されて私に忠誠を誓う。


 やがてすべての帝国兵が平伏した。

 それはすなわち、私がおよそ十万の兵士を手に入れたことを意味していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! ……やっぱりこうなったか。 ド汚ぇ手上等な総統相手に「正々堂々たる戦い」を期待したのが、ライダンの、そして帝国の敗因。 [一言] 続きも楽しみにしています!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ