✒ 応接室 / 薬剤を鑑定してもらう 2
リット
「 ギルドマスターの前で、鑑定士長と鑑定院長に鑑定してもらえるなんて光栄です 」
鑑定士長と鑑定院長がギルドマスターの前で堂々と虚偽鑑定をされたら、ギルドマスターもグルなんだろうな。
もし、そうなら≪ コーチゾスの街 ≫を出て他の≪ 街 ≫へ行こうと思う。
フィールドには怪物が出現するから、1人旅は危険だし、自殺行為になる。
冒険者ギルドや傭兵ギルドで護衛を依頼してフィールドを移動するのが一般的だ。
冒険者や傭兵を雇えば、その分お金が掛かるのは当然で、かなりの貯えが必要になる。
新人調合薬剤師の僕には冒険者や傭兵を雇える程の貯えは無い。
だけど、僕には烏の王様のリッドンが居てくれる。
この世界の烏は予想に反して逞しくて強い。
お腹が空くと集団で怪物を襲って骨意外は全て喰べるらしい。
上空から怪物の位置も動きも烏がリッドンへ伝えてくれるから、怪物を避けてフィールドを移動する事が出来るんだ。
いざとなれば、セフィートも妖精も助けてくれるし、何とか次の≪ 街 ≫へは行けそうな気はする。
僕がそんな事を考えている内に、鑑定士長と鑑定院長による鑑定が終わったみたいだ。
鑑定士長と鑑定院長が各々の書類に記入をしてくれている。
僕は虚偽鑑定士にしか薬剤のランクが★5である事を話してない。
鑑定士長と鑑定院長は僕の薬剤をちゃんと鑑定して正規の鑑定結果を記入をしてくれたのかな?
書類への記入を終えた鑑定士長と鑑定院長が書類を見せてくれた。
薬剤の鑑定結果はと言うと────。
鑑定院長
「 ……これはどういう事なのかね?
鑑定士ベガトル、君の事はベテラン鑑定士だと記憶しているが……。
これは本当に君が鑑定した結果なのかね? 」
鑑定士長
「 ベガトル──、貴方がベテランの鑑定士である事はギルドマスターも鑑定院長も私も知っている。
然しだ、貴方の鑑定結果と鑑定院長と私の鑑定結果は合っていない。
ベテラン鑑定士の貴方が何故鑑定結果を間違えて記入しているのか、私には分からないのだが…。
貴方は何故、鑑定結果を書き間違えるミスをしてしまったんだい?
これは──リット君の言う通り虚偽鑑定だ。
虚偽鑑定は鑑定士にとっと最もしてはならない行為だ。
何故か分かるかい?
鑑定は依頼主との信頼の上に成り立つからだよ。
貴方は依頼主との信頼を自ら失う行為をしていたんだ。
それも冒険者ギルドでだ。
これは大罪だ、この虚偽鑑定書は重要な証拠になる。
ベガトル──、ベテラン鑑定士を失う事になるのは残念だが、冒険者ギルドは失った信頼を取り戻さなければならない。
その為には新人調合薬剤師をターゲットにした虚偽鑑定をしていた貴方を解雇する必要がある。
今回が初犯でない事を考えると、貴方は鑑定士ライセンスを剥奪される事になるだろ。
然しだ、それは仕方無い事ではなく当然の結果だよ。
今まで貴方が新人調合薬剤師達に虚偽判定をした事を悔やみ反省したまえ 」
鑑定士:ベガトル
「 そんなっ、鑑定士ライセンスを剥奪されるなんて、あんまりじゃないか!!
何で俺だけ罰せられないといけないんだ!!
虚偽鑑定なんて鑑定士なら誰でもやってるんだよ!!
俺を罰するなんて横暴だっ!! 」
鑑定士長
「 ならばベガトル、貴方は自分以外に虚偽鑑定をした鑑定士の名前をギルドマスターの前で言えるのか! 」
鑑定士:ベガトル
「 ライセンスを剥奪されないなら教えてやりますよ!
俺の知ってる範囲になりますがね!! 」
ギルドマスター
「 そうか。
お前はライセンスの為に、仲間を売ると言うのだな?
ギルドマスター室へ連れて行け! 」
虚偽鑑定士のベガトルは冒険者に立たされると強引に応接室を出された。
応接室に残ったのは、ギルドマスター,鑑定院長,鑑定士長,僕の4名だけになった。
鑑定士長と鑑定院長の鑑定に依れば、僕が持ち込んだ薬剤はLV1で、ランクは全て★5だと判明した。
2枚の書類にも正規のランクが確りと記入がされている。
どうやら鑑定士長と鑑定院長は虚偽鑑定には関わっていないらしい。
現段階では──だけど。
本当に彼等が白なのか僕には分からないけど、僕は薬剤の鑑定をきちんとしてもらえて、正規の価格で買い取り交渉が出来ればそれでいいんだ。
鑑定士長
「 リット君、身内が虚偽鑑定をして済まなかった。
本当に申し訳無い事をしてしまった 」
リット
「 頭を上げてください。
鑑定士長が僕に謝る必要はないです。
僕に謝罪をすべきなのは、虚偽鑑定をした鑑定士でしょう。
僕は正しく鑑定をしてもらって、正規の価格で薬剤を買い取ってもらいたかっただけです 」
鑑定士長
「 リット君──、此処にある薬剤を買い取らせてもらう事は出来ないかい。
勿論、リット君が望む通り正規の価格で買い取らせてもらうよ 」
リット
「 有り難う御座います!
買い取ってもらえると僕も助かります。
宜しくお願いします 」
鑑定士長
「 とんでもない!
此方こそ有り難う。
私はエンリディケ・ソーイナと言う。
薬剤の買い取りをしたい時は、私の名刺を見せると良い 」
そう言うと鑑定士長は僕に名刺をくれた。
リット
「 有り難う御座います 」
僕はテーブルの上に出している薬剤を全て鑑定士長に買い取ってもらう為に、書類にサインをした。
直ぐにギルドマスターが必要な金額を用意して、テーブルの上に銭袋を僕の前に置いてくれた。
鑑定士長
「 リット君、全額あるか確かめてくれるかい 」
リット
「 はい。
確認させていただきます 」
僕は銭袋に入っている硬貨をテーブルの上に出して、金額の確認を始めた。
リット
「 問題ありません。
全額ありました。
有り難う御座います。
これからも宜しくお願いします 」
銭袋をマジックバッグの中へ入れた僕は、応接室を出ると鑑定士長の案内で受け付けカウンターのあるフロアへ戻った。
冒険者ギルドを出た僕は、商人ギルドと薬局ギルドへ向かう為に歩き出した。




