✒ 冒険者ギルド / 薬剤を鑑定してもらう 1
僕は1人立ちしたばかりの新人調合薬剤師のリット・ハニッシュ・トンビルだ。
今日は冒険者ギルドに作った薬剤を持って行く事にした。
リッドンは僕のフードの中で気持ち良さそうに眠っているし、セフィートは静かに僕を見守ってくれている。
──*──*──*── 冒険者ギルド
冒険者ギルドに入ると受け付けカウンターの買い取り窓口へ真っ直ぐ向かった。
マジックバッグの中から出した薬剤の幾つかをカウンターの上に置いたら買い取りを希望している事を伝えた。
買い取りカウンターに居る鑑定士が直ぐに薬剤の鑑定を始めてくれた。
僕がカウンターの上に出した薬剤は何れもLV1の物ばかりだけど、ランクは全て★5のばかりだ。
此処の冒険者ギルドの鑑定士は嘘偽りなくちゃんと正規のLVと正規のランクで買い取り交渉をしてくれるのかな?
鑑定してもらう時は何時もドキドキするんだ。
リット
「 あの…どうですか? 」
僕は如何にも自信がなさそうな弱々しい新人を装ってみた。
こうやって自信無さ気に下手に出て尋ねてまると、鑑定士は足元を見て正規より低いランクを言ってきたりするもんだ。
然もドヤ顔で偉そうに!
目の前の鑑定士は年配の鑑定士だから、どうだろう?
鑑定士
「 う〜ん……何れもLV1の薬剤だね 」
リット
「 そうなんですね…。
あの…それで──、ランクなんですけど… 」
流石にLV1より下はないから、LVは偽らないみたいだな。
問題はランクだ。
リット
「 ★は幾つになりますか? 」
僕は少し身を乗り出すと興味津々に聞いてみる。
新人調合薬剤師が1番ドキドキする場面だ。
鑑定士
「 あぁ…ランクね… 」
リット
「 はい! 」
鑑定士
「 そうね……まぁ、良くて★2と★3って所だね。
じゃあ、買い取るから書類にサインして── 」
コイツもか…。
ランク★5の薬剤なのに★2と★3だって!?
新人調合薬剤師を馬鹿にするのも大概にしてほしい!!
リット
「 本当に★2と★3なんですか?
鑑定、間違ってませんか? 」
鑑定士
「 何を言うんだ?
俺はベテランの鑑定士だが。
鑑定士が鑑定を間違えるわけがないだろう。
冗談は止してくれ 」
リット
「 僕は冗談なんて言いませんよ。
大事な薬剤の鑑定もまともに出来ない鑑定士を雇っている冒険者ギルドに薬剤を売るなんて出来ないって言ってるだけです。
虚偽癖のある鑑定士じゃなくて、ちゃんと正規の鑑定の出来る鑑定士を呼んでください 」
鑑定士
「 なんて言い掛かりだ!
俺は虚偽の鑑定なんかしてないぞ!
新人のくせに生意気を言うな! 」
リット
「 僕の薬剤は確かに何れもLV1ですよ。
だけど、ランクは何れも★5なんです。
★2も★3も1つも無いんですよ。
なのに貴方は鑑定士でありながら、僕に嘘の鑑定結果を教えて正規の価格より安い価格で買い取ろうとしたんです。
これって、立派な虚偽罪になりますよ。
鑑定士が虚偽の鑑定をして新人調合薬剤師を騙していいんですか?
いいわけないですよね、犯罪なんですよ。
貴方は冒険者ギルドで犯罪を犯してる事になるんですよ?
そんな信用の出来ない鑑定士を雇っている冒険者ギルドに大事な薬剤を正規の価格より安値で売れますか? 」
鑑定士
「 こ…このガキ──言わせておけば!! 」
リット
「 残念ですけど……僕は貴方の居る冒険者ギルドでは薬剤を売りません 」
僕は言いたい事だけ言うと、カウンターに出していた薬剤をマジックバッグの中へ入れた。
虚偽の鑑定をした鑑定士は僕を睨んでいる。
リット
「 虚偽の鑑定をしたアンタが怒るのは筋違いだろ?
怒りたいのも睨みたいのも虚偽の鑑定をされて安値で買い取られかけた僕の方なんだけどね? 」
鑑定士
「 このっ──、言いたい放題言いやがって── 」
?
「 ──どうしましたか?
騒がしいですね 」
鑑定士
「 鑑定士長!
聞いてくださいよ!
このガキが、俺の鑑定にケチを付けるんですよ! 」
鑑定士長
「 落ち着きなさい、ベガトル。
君は── 」
リット
「 リット・ハニッシュ・トンビルです。
新人調合薬剤師で、作った薬剤を買い取ってもらう為に来ました。
止めましたけど 」
鑑定士長
「 『 止めた 』とはどう言う事かな?
事情を知らない私にも詳しく話してもらえるかい? 」
リット
「 僕は構いません。
幾らでも話しますよ。
何せ僕は被害者ですからね 」
鑑定士
「 このガキ!!
未だ言うか!! 」
鑑定士長
「 ベガトル、黙りたまえ!
此処では人目がある。
リット君、場所を変えてもいいかな? 」
リット
「 僕は構いません 」
鑑定士長
「 有り難う、リット君。
ベガトル、貴方も来るんだ 」
虚偽鑑定士と僕の言い合いを見掛けて現れた鑑定士長と共に僕は買い取りカウンターから離れた。
──*──*──*── 応接室
僕が鑑定士長に案内された部屋は応接室らしい。
僕は鑑定士長に促されて僕は1人用のクッションへ腰を下ろして座る。
僕の薬剤を鑑定した虚偽鑑定士は僕から離れた場所に座らされている。
応接室には僕の知らない大人が3名も居た。
1人はギルドマスター,1人は鑑定院長,1人は冒険者みたいだ。
ギルドマスターと鑑定院長まで出て来ちゃったよ。
強そうな冒険者は虚偽鑑定士の横に立っている。
多分だけど、虚偽鑑定士を牽制する為に呼ばれたんじゃないかな?
僕と向かい合うようにテーブルを挟んでソファーに座る鑑定士長の前に、僕はマジックバッグから出した薬剤を並べた。
さっき買い取りをしてもらう為に出した薬剤ばかりだ。
鑑定士長,鑑定院長,ギルド長が虚偽鑑定士が書いた書類を見ている。
勿論、僕も見せてもらっていて、書類には僕の薬剤のLVとランクが記入されている。
僕の薬剤はLV1と記入されていて、ランクは★2,★3ばかりだ。
書類には虚偽鑑定士のサインがちゃんと記入されている。
鑑定士長
「 ……成る程、これがベガトルがリット君の持ち込んだ薬剤を鑑定した結果という事だね。
これからギルドマスターの前で、鑑定院長と私がリット君の持ち込んでくれた薬剤の鑑定をさせてもらう事になるけど、いいかな? 」
リット
「 どうぞ、お願いします 」




