救ってくれたお姉さんは■■■■でした
「この浜辺で夜釣りをする物好きがいるとわね」
「おねーさん?」
「着物で夜の浜辺は危ないと言う忠告であれば不要ですよ、眼は良い方ですから。はっきりと貴方の真っ赤に染まりきった顔が見える程度にはね」
本当に赤く染まりましたね。ふむ…主様に捧げる供物として贄はもっとも嫌われますが、私もその贄として扱われていた時期がありましたから嫌いなのですよね。
この少年の顔立ちは中性的で長い髪も相まって女の子に見えてしまいますね。
「おねーさん、家に帰らなくていいの?」
「今の私は貴方の様な将来有望な子供を集める旅をしているのですよ」
「もしかして最近噂されてる夜の着物美人?」
「おや、ご存知でしたか。ところで、その背中の傷は学校での虐めによるモノですか?」
「な、なんのこと?背中に傷なんて無いよ。おねーさんの気のせいだよ」
ああ…なるほど……私の主様が嫌うタイプの事案ですね。これは早急に解決しておきませんと、この子が主様に献上できるようになる頃には死んでしまうか、その美貌が無駄になってしまいそうですからね。
「姐さん、これ何処に持って行けばいいですかね?」
「これは主様の私物故、扱いには気をつけてくださいね」
「姐さん、その主様ってのはいつ会えるんですか?」
「私の口から言えるのは私達からは会いに行けないということよ。主様が私を頼ってくださる時、その時はこの命が尽き果てようと主様の願いを叶えるまでですからねぇ……」
姐さんことキュー様は出会った頃からその美貌が変わらないどころか磨きが掛かり続けている。
小一の頃、姐さんに命を救ってもらい……いや、初めて浜辺で会ったあの夜からずっと俺は姐さんに片想いをしている。
その姐さんも片想いの相手である主様がいるんだとか。
「兄さん、キュー御姉様の恋人になるのは私だから諦めて新しい恋をするといいよ」
「残念だったな深月。姐さんは男に惚れてるんだ。ならお前よりも俺の方が確率としては高いだろ」
深月は俺より後に姐さんに拾われた妹みたいな存在だ。同じ人に恋して、奪いあうライバル故にそこそこ気があったりもするけどな。
「……そろそろ二人には私の真なる姿を見せても良いかもしれませんね」
姐さんの真なる姿?まさか!
「ああ…二人には期待させて悪いのだけど、私は純粋な人ではないと言う話よ」
「御姉様が亡霊であろうと私は御姉様を愛し続けますよ!」
「俺もです!」
「ならばこの尻尾の手入れを任せますね」
姐さんは綺麗な金髪だ……しかし、その金の毛並みの塊が九つお尻の方から出てきた……まさか!
「私の正体は九尾の狐。主様に仕える犬のまとめ役ですわ」
Twitterで頂いたネタ第一段です。今回割愛した話は読みたいと言う声があればそのうち短期連載という形で書くかもしれません




