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とある冒険者ギルドにて(リンクル)

「ねーちゃん最近良く稼いでるな」

「まあ、家に二人程養わなくていけない人がいますからね」

「その槍捌きはまるで英雄リザ・グラムのようだな」

「流派が同じだからじゃないっすかね」

「流派?なんだそれ」

「英雄リザ・グラムの流派はロストナイツ流と言われていて、私の師匠もロストナイツ流の使い手なので」

「リンクルさん、指名依頼が入ってますよ」

「内容は?」

「貴族が会いたいそうです」

「……そろそろ拠点変えるかぁ」

「おいおい、養う二人はどうするんだよ」

「あの二人は働く気が無いだけでその気になれば冒険者としてアタシ以上に稼げる実力者だからなぁ」

「あの、よろしければそのお二人とパーティーを組んでみてはいかがですか」

「あ~無理っすね、それだけは。あの二人が外出しなくても生活できる様に働くのがアタシの役目なんすから」

「穀潰しなんて見捨てちまえよ」

「いや、金にならんからって理由で今までさんざん世話になってきた家族を捨てる訳にはいかんでしょ」

「どういう訳だ?」

「家から出ない代わりに家事や装備のメンテナンスとかをやってくれてますからね。おっちゃんも奥さんが金稼いで来ないって理由で別れるんすか?」

「あ…なるほどな。役割分担って訳だな」

「あの、冒険者っていう仕事は人々の役に立てる立派な仕事なんですよ?そんな立派な仕事ができるのに引きこもって何もしないのはもったいないと思いますので是非とも説得に行かせて頂けませんかね?」

「……気が変わったこの街にはもう居られないみたいだ」

「え、ちょっと今リンクルさんに抜けられると私達が貰って来た高難易度の依頼はどうなるんですか!?」

「やっぱりな。アタシ達はアタシ達を縛ろうとする鎖を特に嫌う。故にこそアタシだけが外に出てお金を稼いでいるわけだ。上から…貴族から何かしらの圧力を受けているんだろ?」

「それは…」

「アタシに惚れていたのなら悪いとだけ言っておこう」

「ッ!まさか!」

「さぁてね?貴族からの指名は絶対に受けない。これが加入の条件だった。それが破られて貴族からの指名依頼が紹介されてしまった。新入りの単なるミスなら笑って受け流してもよかった。ただ、お前はアタシの大切な存在を貶したからな。それだけは赦せない事だ」

「お前…貴族に逆らうとか死ぬぞ?」

「不敬罪で殺されるような存在ならアタシは既に死んでるような身だぞ?今さら恐れる事など存在しない。警備網も無意味だからな。ボス、今帰ります」

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