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あなたは、異世界行ってまず何をするのか真面目に考えたことがありますか

ドサッ。

 落ちた。それも見事に腰からの着地である。

「痛たた。折れたかと思ったわ」

 腰をさすりながら体を起こす。しかし、落ちたのがベットからで良かった。これが、飛行機からなど高所からだったと思うと・・・。生きた心地がしないだろう。

 それにしても、外は明るい。朝という時間ではないだろう。時計を確認する。目覚まし時計の針は、昼の12時に差し掛かろうとしていた。

「昼まで寝たのか」

 まあ、過ぎたことはしょうがない。それより今しがた見ていた夢が大切である。大変に仕様のないものだった。異世界に転生するくらいだから勇者とか賢者だとかに転生させても良かったのではないだろうか。あんな良く分からない(派手さのない)能力じゃ何も面白くない。だが、加工しだいでは小説の題材にでも成るかもしれない。

 必死になって思い出してみる。だが、いまいちはっきりしない。覚えているのは、気が付くと死んで転生して、空から落ちてまた死んだということだけである。そこで目が覚めた。なぜかゴリラの姿が目に浮かぶがそれは気のせいだろう。ふむ。これはまだだな。少し、眠らせておこう。また何か思いついたら話にすれば良い。

 それにしても、微妙な時間である。昼を食べるべきか、朝を食べるべきか。夢から覚めたというのにイマイチの実感がわかない。これがもう少し早い時間であれば、朝食と共に何かしらの作業でもするというのに。何というかやる気の出ない。疲れているんだな。あんな夢くらいだし。

 よし、寝よう。1時間くらい寝てそれから動くことにする。

 それではお休み。布団に入り目を閉じる。もちろんタイマーはセットしなかった。


 すごいゴツゴツする。背中からは一定周期で振動が伝わってくる。新手の旧式マッサージ機であろうか。すごい大雑把ダイナミックな感覚である。

「お、目が覚めたのか」

 男の声がする。俺のうちには男は俺しかいない。もちろん合鍵なんて渡した人はいない。消去法で、警備員か管理人であろう。しかし、どうしてまた。

 これは早急に起きなければいけない。きっとガス漏れか何かやらかしたのだろう。畜生。こんなことなら家の中を片付けておくべきだった。

 目を開ける。違う。違う・・・違おう。違おいすぎる。見覚えのない天井、しかし病院ではない。そもそも本当に天井なのか。 周囲を確認する。なんというか布ぽい。しかし、病院のカーテンの様ではない。それよりもくすんでおり、使い込んでいるのがわかる。それが左右と天井を覆っている。また、床は木製であり、わずかに動いている。

 理解できない。 また夢の中か?今度は一体・・・

「おい、大丈夫か。別に怪我している箇所とかはないと思ったんだが、どこかしら痛むのか」

 声の主を探す。頭の方向からする。取り敢えず何か返事をしなくてはならない。

「あっ」

 知らない人。日本人ではない。しかし、外国人かと聞かれると、違う。こんな人種の人とは生まれてから20数年会ったことも見たこともない。

 しかし、言葉はわかる。やはり、何かしら話さなくては。

なんと言えばいいんだ。伝わるのか。

「いや、違うぞ。俺たちは人さらいじゃない。大丈夫だ。」

喋らない俺に見かねたのか、ゆっくり落ち着いた声で先ほどの男がそう言った。

「わっ、わかりました」

わからない。何が起きたのかも、何もかもわからない。のどが渇いている気がする。

「なら、良かった」

男は嬉しそうである。そして、前を向いた。

 これは、あれかな自分の姿を確認する。今、俺の予感が当たっているとするならば・・・全身を確認する。”手は子どものような小ささである。腕は子どものような長さである。足は子どものような長さである。結論、子どもである”。そいえばさっき見た夢の中もこれくらいの子どもの姿だった気がする。

「あれ、生きてるんですけど」本当に疑問だ。

「何か言ったか」と男が聞き返してくる。

あわてて「いえ、独り言です」と返しておく。

「そうか。何かあったら気にせず聞いてくれ」

 何でもいいのだろうか、そしたら、俺の姿が子どもなことについて聞いてみたい。ダメだ。これはいけない。変人扱いされる。それよりも、夢の中で俺が殺した人間が生きているという危険な事態が起きている。それが問題である。

 違う、それが問題なんじゃない。これが夢の続きなのかが問題なのだ。そうならば、あのアイデアには活躍の機会が生まれることになるかもしれない。まあ、事実上ボツにしたアイデアに出番が与えられるということは釈然としないのだが。しかしこうなると、とことんこの夢を研究する必要がある。

 本当にあんな設定が利用できるのか、一抹の不安がある。だがその疑問がために、せっかくのアイデアが潰れたら最悪である。ここは、俺が目覚めるまでの数時間が勝負。ここでしっかり成果を残し、アイデア採用を目指す。誰かのアイデアに負けるのはいい。だが、自分が元々考えていた他のアイデアには負けられない。

 となると、やるべきことは言ったてシンプルである。

「すみません。ここってどこですか」そう、物語を進めるのである。多少乱暴な気もするが背に腹は代えられない。

「ここは、ヘレニケ街道をコロニス領からエリゴネ領に向かう方向に進んでいる。ええと、最寄りの村は、エイケンス村とかだな。馬車だからすぐに行けるぞ」

 なるほど、さっぱりわからない。唯一わかったのは、ここが、大人11人くらい乗れそうな巨大な馬車の荷車であるといことだけだ。もう少し、設定に使える情報を集めておきたい。ええと他には何を聞けばいいんだこれ。普通なら転生時に教えてくれるような気もするんだけどこういったことは。

「そういえば、今更だけど君の名前はなんていうのかな?」と、どこからか知らない声がする。

「ああ、ごめん。こちらから名乗るべきだよね」やはり、俺と話していた男ではない。根本的に声質が異なる。

「そうだな。考えてもみれば名前すら知らないか」とこれは先の男。

「じゃあ、俺からだな。俺の名前は、マシュー・ストックウェルだ。エダという村に住んでいる。そしてこっちにいるのが」

「アンソニーです。一応、マシューの息子ですよ。」

「一応ってなんだよ。」マシューが軽快にツッコむ。

 マシューとアンソニーか。似てない。いや、失礼だけど、似てない。この二人親子かよ。きっと会った人みんなが言ったのだろう。というかここってロンドンなの?異世界じゃないのもしかして。

 それは置いといて、マシューは体の大きな男で、腕周りなど鍛え抜かれているのがよくわかる。例えるなら熊で、多分、ガテン系というべき人たちの中でもリーダー役をしていそうである。取り敢えず、この人のところにいればなんとかなるそんな安心感を与える。

 一方の、アンソニーは、爽やか系の整った顔立ちで猫のような目をしている。マシューと異なりガツガツせずに、丁寧な言葉を少しずつ重ねて話すそのさまはイケメンそのもの。ズルい。ズルいぞ。それだけでなく、ただ、子首を傾げる仕草にも、その人間性が溢れており、その適度に筋肉のついた肉体は、ギャルゲーの王子様のようであり、先輩と呼ばずにはいられない。いったい幾人の女性を勘違いさせてきたのだろうか。

 なるほど、これは女性向け小説になるのかな。男性向けという先入観があり、今までその発想には至らなかった。新発見である。まだまだ観察が必要だな。

「ところでいいかな。君の名前を教えてもらえないかな。なんと呼べばいいのかわからなくて」

 そう、ここで、問題が発生した。誠に残念なことに俺の名前は100年以上前の日本人にもつけれられていたな名前であり、昨今のキラキラネームなどとは縁がない。ゆえに、この世界の住人、それも外国人然とした人に発音できるかわからない。かと言って、すぐには小説にそのまま使えそうな名前も思い浮かばない。

 俺は───

 1.ナナミヤ・オトです。よろしくお願いします。

 2.すみません。気がついたら、ここにいたんです。名前も思いつかなくて

「ナナミヤ・オトです。よろしくお願いします」

  やはりここはオーソドックスに行こう。できる限り、怪しまれないように。

「おおう、よろしく。急に改まられるとびっくりするな」

「そうですね。よろしくお願いしますねオットーさん」

 良かった、発音できたか。なんか違うけど。というか、俺の名のほうが姓になっていないか。挨拶の仕方を間違えたとか? まあいいか、次に聞くべきなのはどこに向かっているのかだな。

「それでオットーはどこから来たんだ?どうして、あんなところに倒れていたんだ?」

 しまった、先に質問された。早いよマシュー。というか、これはやばいな、いい回答が見つからない。というかなんと答えるべきかわからない。これはあれだな、あえてこれ以上聞きにくくする答えをするときだ。主人公の設定なんてものは、あとから都合に合わせて変えればいいのだから。

「僕は両親が死んでしまい、親戚がどこにいるのかもわからなくて行く当てがなかったんです」これくらい許されるだろう。物語の中だから。

「そうかすまないことを聞いてしまった。許してくれ」緊急手段とは言え、二人揃ってそんな悲しそうなリアクションされるとこちらが申し訳なくなる。いたたまれなくなったのかマシューが「じゃあ、うちの村くるか?今からだと街につく前には夜になってしまうからな。」と言った。

「いいんですか」

「私も賛成ですよ。うちの村はすぐそこですし」

「すぐそこって言ってもあと4時間はかかるがな」

といって、マシューは楽しそうに笑う。

 どうやらこの二人といれば退屈しなさそうである。時間だけが心配だな。

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