転落
それは暑い、夏休みのある日のことだった。
ここは、どこだ。
俺は、死んだ、のか?
体は別にどこも痛くないし、暑くも寒くもない。何も持っていない。
そうだ。俺は死んだんだ。
あれは、三十分くらい前のことだっただろうか。
「あっつー....」
夏。今年の夏はいつもに増して暑い。俺は自転車のギアを落として坂道を登る。セミも鳴いている。やかましいが、それでこそ夏と言える物。
俺の名前は橘 彗。
この田舎とも言えないが都会とも言えない町に住んでいる学生だ。あ、ちゃんと学校は行ってるからな。ニートじゃない。ゲーム好きだけどさ。友達もいるし。
今日は日曜。駄菓子屋に行き、多少の駄菓子とアイスを買って、家に帰る。学校に行くにも友達の家に遊びに行くにもこの坂を通る。俺の家は坂を上り切った少しにあるので、行く時はとても楽だが帰りがかなりきつい。マウンテンバイクなら多少は変わるんだろうが、俺の自転車は普通のママチャリだ。きついのも分かるだろう。まぁ、俺は毎日この坂を登っているのでもう慣れている。おかげで筋肉が中途半端についた。
暑くて体までアイスの如く溶けそうになりながらも坂を上り切る。額から汗が流れ落ちる。俺は自転車を止め、坂の上からの景色を眺める。この場所は本当にいい場所だ。町が一望出来る。ビル、学校、家、店。町の地図を見るかのように、細かく見える。と、その時、後ろから黒い車が結構なスピードで走ってくる。この辺りに車なんて珍しいな、と思いつつ、後ろを振り返る。車は思ったより目の前を走ってて。俺はビビって後ろに下がる。俺の後ろに置いてあった自転車が倒れ、その拍子に錆びてボロボロになっていたガードレールが俺の自転車と一緒に崖から落ちる。まずい。このままじゃ落ちる。と思った瞬間、俺は体勢を崩して後ろに倒れた。俺も崖から落ちた。落ちる瞬間、時の流れが遅くなったように感じた。俺は思った。
ああ、完全に死んだな。俺。
落ちていく。落ちていく。
その中で俺は目を閉じ。そのまま気を失った。
これが、俺の死因。
読んでくれて本当にありがとうございます!




