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6. 喫茶店にて

男の子が表情を変えないままじっと見てくる。

うーん…、目をそらすのも変ね。怒ってるのかしら。

身分がめちゃくちゃ高い子じゃなきゃ良いけど。


「こんにちは。先日の式典で一緒でしたね」


「こんにちは。よく覚えておいでですね」


おっと! 話しかけてきた。向こうも私を覚えていたとは。


「それはもちろん。ウォールデン家のお嬢様でいらっしゃいますから」


へえ。うちってそれなりの家格なの? 母があまり家について話さないので、相対的な自分の立場をいまいち分かってないのよね。


「ありがとうございます。改めて、エミリ・ウォールデンです。…ごめんなさい、私は不勉強で。お名前をおしえていただけますか?」


「シェラと申します」


ここで、エマが「ストーナー家のご次男です」と耳打ちしてくれた。

ストーナーは王族系の伯爵だったかな。うちは辺境伯だから同等? 都会の血筋と田舎の血筋では田舎うちが下かしら?


「シェラ様、失礼いたしました。不勉強者ですが、よろしければお見知りおきください」


「こちらこそ、仲良くしていただければ嬉しいです。よろしくお願いします」


って、この世界の5歳児凄いわね。同世代と話すの初めてだから、5歳がどれほど喋れるのか知らなかったんだけど、前世の高校生よりしっかりしてるくらいじゃない。


「シェラ様はご散策ですか? 私は街を見物がてらお買い物に参りました」


「僕もお買い物に。特に目的の物はありませんが、少し見て回ろうかと」


「何かお好きなお道具や雑貨がおありですか? 私はお茶碗などの陶器を見るのが好きなのです。詳しくはありませんが」


「そうでしたか。僕も茶器は好きです。今日は、自室に置く花瓶を見に来たのですが」


「あら、素敵ですね。ご自身でお花を飾られるのですね。私は投げ入れ花程度で…生け花は得意ではなくて」


ん? なんか、雑談が始まってから、シェラ様のオーラが生き生きしてきて容量が少し増したような…。意外にお話好きなのかしら。キラキラ+普通の青色だったのが、綺麗なスカイブルーになってきて、ところどころ檸檬色が混じってきた。どういう感情なの? 綺麗な色だから、悪感情ではないと思うけど。


「僕も身内に習っている程度ですよ。毎日季節の花を見ていたら多少は飾れるようになってきました」


「羨ましいご趣味です。私もやってみようかしら…。あら、いけない、良い時間。そろそろ私たちは出ますね。お茶のひとときをご一緒できて光栄でした」


楽しいお喋りだったけど、今日の目的を忘れるところだったわ。そろそろ行かないとお昼前に帰れなくなっちゃうわ。気分もすっかり良くなったしね。


「こちらこそ。そうだ、今度是非うちに遊びにいらしてください」


「まぁ、よろしいのですか? ありがとうございます」


おぉ、友好的な子ね。まぁよその家に遊びに行くのはちょっと興味があるし吝かではない。


「良かった。それじゃ招待状を差し上げますので、後日必ず」


念入りなことね。私、貴族の付き合いを手解きされてないから、どういうのがスタンダードなやりとりか分からないんだけど。わざわざ招待状まで寄越すものなのね。

実はシェラ様と話し始めてから、エマの緊張と不安が高まっていたから自分の振る舞いがまともなのかどうか心配だったんだけど。シェラ様の方はかなり好意的に受け入れてくれたみたい。



ーーーーーーーー



さあ、やっと街の散策よ!

店を出て、すぐに目を閉じた。道行く人のオーラのチカチカをみちゃったらまたしんどくなるし…。スイッチオフにすることってできないのかしら。

薄目をあけて、オーラを見ないように念じながら目に力を込める。

……あら。オフにできた。

いや、でも、まばたきを我慢するのと同じくらい大変だわ。これは、ちょっと立ち止まりながらゆっくり進むしかないわね。


「…大丈夫ですか? まだご気分が優れませんか?」


エマが気遣わしげに声をかけてくれる。


「いえ、大丈夫。目を慣らしながらゆっくり行きましょ」


覚悟を決めて足を踏み出した。

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