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5. 街歩き

オーラって奥が深いわ。

オーラに色が見え始めてから一月ほど、まだオーラを読む練習を続けている。

オーラは、対象者から滲み出る気分の反映ではあるけど、結局は読み取る私のフィルターがかかっているというか…私が色に対して持つイメージが適用されている感じ。

赤は怒りややる気などの能動的な感情、橙は喜び、青は寂しさや落ち込み、黒は憎しみ、というような、私が色に対してもともと持っているイメージが核になっていると思う。ただ、対象者の個人差も結構あって、オーラによって心の中が読める! っていう万能感はないわね。

ある程度付き合いを深くして対象者の色のクセを知らないと読みにくいんだと思う。普段のオーラとの差異で、今日は落ち込んでるとかイライラしてるとか推測することになるから、普段の対象者をよく知らないとあまり役に立たない能力ね。

まぁ使い方次第では大きな武器になるかも知れないし、可能性は未知数ね。


さて、今日は屋敷の外に出てみようと思う。

初対面の人たちのオーラを観察するの。

屋敷から街まではそこそこ距離があるから、侍女のエマと一緒に買い物に行くという名目でね。

エマのオーラは黄色で、時々赤が混じってくる。よその車とすれ違う時に少し赤くなるから、エマの赤色は緊張なんじゃないかと思う。ちなみに車は人力で、各家庭で車夫を雇ってるの。うちにも4人の車夫がいるわ。明治時代っぽくて最高です!!



ーーーーーーーー



車で30分ほど行ったところで街の中心地に着いた。数回は母と来たことがあるけど、呉服店しか行ったことないから、街の様子ってほとんど知らないの。本当、ワクワクするわ!

大人たちの言動から察するに、治安はめちゃくちゃ良いと思う。日本と遜色ないくらいじゃないかしら。みんな暮らしが安定していて軽犯罪がほとんどないのね。市民意識が高いのかしら?


車を停めて、通りを歩いてみる。ここは王都に繋がる大動脈になっている大通り。道幅が広く、端に車を停めておいてもスペースには余裕がある。道の両側に店が連なっていて、活気あるというよりはお洒落な洗練された雰囲気。


うわ……。これ、ちょっと気持ち悪くなりそう。

視界のあちこちで色んな色が明滅してる。

オーラが見えて以来、一度に10人以上の人を視界に入れたことがないから、正直気分が悪くなってきたわ…。しかも屋敷じゃ皆安定した色なのですぐに目が慣れるんだけど、街では絶えず色が変わるからチカチカして目が疲れちゃう。目をつぶって歩きたいくらい。

我慢して1分ほど歩いたけどもう無理。


「…ちょっと、人に酔ってしまったみたい。すぐに店に入りましょう」


「それはいけませんね、すぐに。この喫茶店でよろしいですか」


「ええ」


すぐに目の前の喫茶店に入り、角のソファ席についた。

迅速な対応で助かったわ、エマ。とりあえず座ったらひとごごちついた。侍女と二人きりで行動するのも初めてだったけど、エマが焦って取り乱したり大騒ぎしたりするタイプじゃなくて良かった。


「おかげんはいかがですか、エミリ様。申し訳ありません、ご気分が優れないことに気がつきませず…」


「そんなに大事じゃないから大丈夫よ。座ったら落ち着いたわ。すぐに動いてくれてありがとう、エマ」


「とんでもないです。…少しお顔色も良くなられましたね。ひとまず安心いたしました」


エマのオーラが少しクリーム色に近くなった。安心したときの色なのね。


「せっかくだから一服しましょ。エマも何か頼んで。私はココア」


「かしこまりました」


エマが給仕を呼び止めてココアと珈琲を注文した。本当にこの人、迅速で良いわね。変に遠慮しないでちゃんと自分の分も注文してるし。エマとは楽に付き合えるわ。


注文して5分くらいでサーブされた。

…ちょっと!

珈琲茶碗が素敵! 和洋折衷のような柄の陶器で、金も使われているの。

喫茶店っていうのも近代文化の醍醐味よね~。

うわぁ、エマの珈琲、良い香り。5歳児が珈琲なんか頼んだら不自然かと思って無難にココアにしちゃったけど、珈琲がとても美味しそう。

このお店、気に入ったわ。また来たいな。


ふぅ。一服したら気分も完全に良くなったわ。そろそろ店を出ても良さそうね。

…ん? なんか目の端にキラキラしいものが…。

少し離れた席の、あら、男の子。この子のオーラが、えらくキラキラしてる。

あれ? この子、この間の5歳児式典で見かけた、美形3人のうちの賢そうな子だ。烏の濡れ羽色の如き見事な黒髪ストレートに、切れ長の目、通った鼻筋。各パーツの配置も完璧で黄金率って感じ。目や眉のあたりがそこはかとなく賢そうなのよね。本当に男前な子ね。


わ、いけない、目が合っちゃった。ジロジロ見過ぎたわ。

謝罪の意味を込めて目礼しておこう。

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