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38. 夜話

「エミリー、寝るぞー」


え?

今まさに布団をかぶろうとしていたんだけど。

扉が開いてお父様が颯爽と入ってきた。


「一緒に寝るの?」


「あと4日したらまたしばらく会えなくなってしまうからな」


そう言ってベッドに腰掛けた。

お父様って言い出したら聞かなそうだし…まあ良いか。


「はい、どうぞ」


少し座る位置をずらして布団に入れてあげる。


「エミリは向こうでは心細くないか?」


お父様がこっちにいるからってことよね?


「うーん…物心ついたときにはああいう状況だったし、寂しいとか心細いとか思ったことはないわ」


私の精神年齢って多分かなり高いし。自由にやらせてもらってるから心配ご無用よ。


「そうか。エミリがしっかりした子で良かった」


頭をヨシヨシされた。


「いつ帰らしてもらえるかなあ」


「決まってないの?」


参勤交代みたいなものじゃないのかしら。


「はっきりとは決まってないんだよ。うちの領地は広くて豊かだろう? だから中央からは常に注視されてきたという歴史がある」


ふむふむ、加賀百万石の前田家ってところか。難しい立場なのね。


「だからこそ、初代領主の定めた掟に、清廉潔白とある。少しでも腹に一物などと疑われたら、すぐに目を付けられる。最悪の場合は取り潰しだろうな。ただ、地理的にも重要な地区で領民も40万と大規模だ。実際に取り潰すとなると大混乱になるだろうからそう簡単にはされないだろうが」


確かにうちの人たちって竹を割ったような人ばかり。全然裏がなくて付き合いやすい感じだし、逆に工作とか手回しとか苦手そう。そういう歴史が背景にあったのね。

ところで、初代の定めた掟って、いわゆる家訓ですね! 素敵素敵! まさに江戸時代。


「歴代領主は必ず王都に数年呼ばれている。最初は三年で、またしばらくしたらもう三年というのが通例だったんだが……俺の場合、もう五年だからなあ」


そうね……私、全然お父様の記憶がないもんね。ちょっとくらい帰ってきてたんでしょうけど、覚えてないわ。


「誰かに気に入られちゃったの?」


「うーん。まあ、濁さずに言うと、そうだな」


中央の為政者って、多分男性が多いわよね。貴族の嗜みとも言える男色かしら。

これはますます前田利家っぽくなってきたわ。お父様、風貌的特徴も似てるし。

それとも、権力のある女性に気に入られちゃったのかしら。だとしたら、お母様、一人で領地にいて心細いし寂しいでしょうね。


「俺は中央でのし上がる気は全くないんだが、有力官僚には睨まれるし、王都にいても良いこと無しだ。そうはっきり申し上げてるんだがなあ」


「それは凄いわね…。本当に裏も表もないのね」


そうか。なかなか手放してもらえないのね。


「でも、お姉様たちがこのお屋敷から学校に通ってらっしゃるんだし、悪いことばかりでもないわよね」


「まあなぁ。ただ、学校には寮もあるからここが絶対に必要ということもないんだよ。それに、アリシアは今年で卒業だ」


寮があるのね、知らなかった。それなら確かにここから通う必要もないわね。

ちなみに上の姉はアリシア、下の姉はクレアです。

今回は二人とも折悪しく学校からの合宿中でお会いできない。お母様が残念がっていたわ。


「それならお母様もお寂しいでしょうし、早く帰れたら良いわねぇ」


本拠地のピンチの時には流石に帰してもらえるんじゃ?

それか今回のような特殊な局面だとか。


「お父様は不本意かも知れないけど、うちで新たに発見したことや取り組みの成果で取り引きできないかしら?」


「ああ、それは不本意ではないよ。やってみるつもりだ。そもそも、うちはどんな分野でも中央への報告が義務付けられているからな。災害魔獣対策なんて、言ってみれば軍事力だ。だから毎年対策結果をまとめて報告しているんだ。今回のエミリの発見はその報告義務の中に含まれる事項だしな」


「あら。それじゃあ取り引き材料にならないわね」


「情報だけではな。実際に中央への協力や、成果物の献上ができれば取り引きになるだろう」


なるほど。

うん、私、頑張るわ。

お父様とお母様の夫婦円満のためにも!


「お前には知っておいてもらおうと思ってたくさん喋ってしまったな。まあ深く考え過ぎないでくれ。とにかく、俺はお前がジェーンを支えてくれているのがありがたい」


またヨシヨシされた。


「お父様が思っているより、多分、お母様は立派に領主様をされてるわよ。お父様には生まれながらの才があるけど、お母様は急成長されているし。この間の西地区の再検査で、毎日三回、一月の間領民への挨拶をこなしていらっしゃるんだもの。聞いている領民たちはうっとりしていたわ」


一日三回公演を一月やり遂げた舞台女優みたいなもんよ。

本当に素晴らしいわよ。私は真似できないわ。


「それは見てみたいな。ジェーンの凛々しい姿が想像できない」


「格好いいわよ」


今やカリスマ領主だからね。

そう言ったら、お父様が優しく笑った。


「俺が帰るまでお母さんをよろしくな」


「もちろん。万全のサポートをするつもり。お父様も頑張ってね」

父娘水入らず。

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