31. メル
「失礼いたします」
夕食の前なのに部屋に帰ってこないメルを探しています。
方々探したけど見当たらないので、とうとう母の部屋まで来ちゃったわ。
「お母様、今お忙しい?」
「いいえ、大丈夫よ。お入りなさい」
「ありがとうございます。メルを探しているんだけど、お母様、メルを見かけなかった?」
「メルちゃんならここにいるわよ」
母の肩からヒョコっと顔を出すメル。
やっぱりここにいたか。
この子……一日に一度はお母様に会いにきてるわね。
「ごめんなさい、お母様。お邪魔じゃなかった?」
「全然よ! むしろ可愛くて癒やされていたくらい。毎日一度は来てくれるものね、メルちゃん? 今日は私が日中バタバタしていたから夕方に来てくれたのよね」
母に撫でられてすっごく幸せそう。
私より母に懐いているというべきか。私はただの友達って感じで、母は想い人って感じなのよ。
確かに母はいつまでも綺麗だけどさ!
母に負ける娘ってのも可哀想じゃない。失礼しちゃうわ。
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「エマ、ちょっと聞いてほしいことがあるの」
「私ですか? 構いませんが…」
朝、メルがいつものように遊びに出掛けた。
メルのことを相談するチャンス。
「ありがとう。あのね、メルのことなんだけど」
「はい」
「あの子って……面食いだと思うの。エマはどう思う?」
「ええ、間違いなくそうだと思います」
やっぱり?! 即答だったわね。
「そうよね! 私もそう思うの。シェラ、クリス君、お母様。あの子が懐くのって、最高峰の美形ばっかりよね」
「…あのー……」
エマが驚いて言葉に詰まった。オーラも少し白んだ。
何事にも動じないしっかりもののおねえさんって感じの人なので少し珍しい。
「どうしたの?」
「エミリ様、失礼ですがお姉様方のお顔は覚えておいでですか?」
「うーん…おぼろげには。この一年お会いしてないからねぇ…」
二人の姉は、王都の学校に通っている。
父の住まいでもある我が家の王都屋敷から通学しているから、しばらくこっちに帰ってなくて会えていないのよね。
今度王都に行くときに会えるかしら。
「お姉様方のことはどうお思いですか?」
「お姉様たちのことって、お顔のこと? もちろん美人だと思うわ。身内というのを差し引いても、お母様に似て美少女よね」
「エミリ様は、ジェーン様にもお姉様方にもよく似ていらっしゃいますよ」
「まぁ似てなくはないかもね」
この間もリストさんにお母様に似てるっていうようなことを言われたもんね。
「つまり…エミリ様も、申し上げるまでもなく、お美しくていらっしゃいますよ」
え。
ええ!
「ええ…?! 私って美人なの?」
「ご存知なかったことに驚きですが…」
「だって、誰もそういう扱いじゃなかったし」
私に対する評価って、変わり者、これ一択って感じなのよ。
「そう仰られてみれば、確かに…。当たり前のこと過ぎましたし、何よりエミリ様はご容貌よりも知性が際立たれていらっしゃるので」
「気を遣わなくて良いわよ。変わった子ってことでしょ?」
「いえいえ、とんでもないことです! 以前はそう思っていた不届き者もいたかもしれませんが、今このお屋敷でエミリ様をそのように思っている者などいるはずがありません」
「そうなの?」
「はい。この数か月のエミリ様のご活躍、誰もが敬服しております。台所の料理人たちも、立食パーティーの成功を大変喜んでおりますし、彼らも全てはエミリ様のおかげだと思っているのです」
そうだったの。
いや、でもこの数か月頑張ったのはみんな一緒だし、中心はお母様とハワードとリストさんだし。
料理だって、私は一切作っていないわ。全部、料理人たちが試行錯誤して完成させてくれたんだもの。
「みんなの方が頑張っていたわよ。私のしたことってお手伝い程度よ」
「何を仰いますか。エミリ様のなされたことは、5歳のお嬢様ができることではありません。実働だけをとってみましても、一月もの間、毎日六時間もなさって…。みな感服しております。ほとんどの者は信奉していると申しても良いほどです」
まあ、前世が日本人だからねぇ。
六時間労働って超ホワイトだと思う。多分、私、前世はどこかの企業に勤めてたんだわ。記憶は全然ないけど。
しかも生まれてこの方、疲れたと感じたことがほぼないの。身体が丈夫なのかしら。いくらでも長時間労働できそう。
「そうなのね。そう言ってもらえると嬉しいけど」
ともかく、そうか、私って美人だったのね…。
全然そのギフト、生かせてないけど。
…あら? だったらメルが、私よりシェラやお母様に懐くのはなぜかしら?
「じゃあメルはどうしてあの三人に懐くのかしら」
可愛げの問題? 私は可愛い性格とは言えないし。
いや、それならシェラだって可愛くはないわ。
「私から拝見しますと、メルはエミリ様にもよく懐いていますけれど…。確かに仰るとおり、あのお三方には特に熱狂的ではありますね」
…解せないわ。
宝の持ち腐れ美人エミリ。
次回は近日更新します。




