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3. 回復の兆し

 執事ハワード・ストリートはまたもや目を疑った。エミリお嬢様が、朝食をとりながら涙しているのだ。

 能力が無かったことがどれほど彼女にショックを与えたのかが分かる。何事にも動じない、喜怒哀楽の薄い方だと思っていたが、実は自制心が物凄いだけで、ちゃんと喜怒哀楽はあったのだ。

 確かに、能力の有無は、貴族にとってはそれなりに重要なマターである。エミリもまた、ウォールデン家の息女として能力者であることが望ましかった。能力の有無が15人に1人の割合とはいっても、貴族においては二割が能力者なのだ。

 ハワードはエミリを非常に気の毒に思った。能力者でなかったことはとても辛いことだろう。だが、今は慰めの言葉など彼女の耳には届くまい。

 とりあえず、いつもと同量の朝食を召し上がっているのだから、今にも倒れるということはない。今は何も声掛けすべきではない。

 ただし、今後の様子は要注意だ。何がきっかけとなって更なる悲しみに陥るか知れない。きっとこれ以上落ち込んだらまずい。非常にまずいことになる。子どもでも精神的に病んでしまうことはある。とにかく、規則正しい生活を送れるようサポートし、数日のうちに立ち直れるか注視していこう。

 失意のまま朝食を終え、自室に戻って行ったエミリを、ハワードは静かに見送った。



ーーーーーーーー



はぁ……。

何に対してもやる気が出ないわ…。

かといって、部屋にこもっていても気が滅入るだけだわ。ちょっと庭を歩いてこよう…。



さて。

気分転換に庭に出てみました。

うちの庭、そこそこ広いのよね。ちょっと小さな植物園くらい。

庭は森に隣接していて、庭の端まで歩けば、大きな木がたくさんあるの。ちなみに森もうちの敷地です。森は一人で入るなと言われているので、その手前までね。


木が林立しているところまで、のんびり半時間ほど歩いた。森の入り口付近だ。ここら辺りは、リスとか小鳥とか、無害な動物が住んでいるので癒やしを求める今の私にはもってこいなのだ。


花盛りの庭や晴れた空、木漏れ日の差す森。

多少気が晴れた。

人間なんて単純なものだもんね。

あとは日にち薬よね…。これから毎日この辺りまで散歩して、小動物セラピーしに来よう。



ーーーーーーーー



小動物セラピーも、はやひと月。

落ち込んでいた気分も少し浮上してきたかな。

みんなからもだんだん心配なさそうと思われるようになってきたみたい。日課の散歩に出るときに普通に送り出してくれるようになった。

今日もリスや鳥と戯れにきた。

いつも寄ってきてくれるリスがいて、今顔見知り以上友達未満って感じ。


……ん? 今日のリス、ぼやけて見える…。

え? 木や花はくっきりはっきり見えるわよ? リスだけぼんやり見えてるの?

……いや、リスだけじゃない。小鳥もだ。

よく目を凝らすと、ぼんやりというより、対象物の周りが白く靄がかかったように見えている。


なんなの? よく分からない現象だわ。

目の不調?

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