29. 祝賀
「素晴らしいわ!」
「やりましたね!」
お母様もハワードももの凄い喜びよう。
私も嬉しい。
まさか、初日から、癒やしと気性予測の能力者を見つけられるなんて。
本当に幸運だわ。
「本当、検査を実施して良かったですわね。ここまで大変だったけど、期待以上の成果が出そうだわ! リストさんにもお礼を言わなきゃいけませんね」
そう言うと、お母様が私の手を取った。
「エミリ、本当にありがとう。あなたがいなければ、この先もずっと見逃していた能力者たちよ。彼らを見つけられて良かったわ」
「私も、自分の能力が役に立って嬉しいです!」
今、最高の気分だもの。
あ、一つ確認しておかなきゃ。
「お母様、特殊能力者への手当てのことなんだけど。私は現能力者たちの少なくとも五割は出すべきだと思うの。本来は五割じゃ全然足りないくらい貴重な能力だけど、命の危険度で見ると、現能力者たちと同等の手当てを出すのは反発があるかと思う」
手当ては、つまりは食費にあててもらうお金だ。
基本の賃金とは別に、日々の食事代として賃金の半額が上乗せされている。
「そうね…。そのあたりは、成功報酬も別の手当てを付けるとして、現状では五割を付けておくのが妥当かしらね」
お母様の同意によって、ひとまず彼女たちにも手当てがつくことになった。食費の補填は大事なことだもんね。
さあ、明日から残り33日、頑張ろう。
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今日は役所の全職員さんをうちに招いて慰労の食事会が開催される。
西地区再検査の全日程が終わったことを祝してのもの。
正式な晩餐会じゃなくて、気の張らない立食パーティーよ。
普通は食事会なんてこの世界では有り得ないんだって。ほら、能力者と一般人の食事量の違いから、食事がタブー化されているから。
でも、ここにいる人たちは、お母様と私を除いて非能力者なんだし、絶対に分かりやすい形で労った方が良いと思って。
大きな仕事をやり遂げた熱が冷めやらないうちにね。
そう言ったら、お母様が是非やろうと同意してくれたの。
主催者サイドのうちの人たちも含めて、みんな初めての催しにそわそわしてる。
でもお祝い事って分かってるからかしら、全体の空気は明るくて良い色をしてるから心配なさそう。
今からリストさんの挨拶が始まる。この挨拶の後に料理を運び込むことにしている。最初から置いてあると落ち着かないんじゃないかってことになって。
「領主ジェーン・ウォールデン様、前事務長ハワード・ストリート様、ならびにウォールデン家の皆様、本日はこのような饗宴にお招きいただきありがとうございます。今回の検査にあたり、ウォールデン家におかれましては
「リストさん、そんなに丁寧にしてくれなくて良いのよ、今日は気楽にやりましょう! 私も初めてのことだからワクワクしているの!」
真面目なリストさんの四角い挨拶が続きかけたところで、お母様が笑いながら助け船を出した。
会場からフーっと溜め息が聞こえてきそう。みんなの少し緊張気味だった朱色の空気も、淡いオレンジ色に変化した。
お母様が許したことで、リストさんも咳払いをして仕切り直す。
「えー、ジェーン様の寛大なお心に感謝し、今日は楽しませていただきましょう。皆、準備から今日までの3か月、よく頑張ってくれた!」
リストさんの労いの言葉に、皆さん喜色満面。
続いて母の合図で、料理と飲み物が会場に運び込まれる。
香味野菜とお肉のスープ、ビタミンカラーの野菜サラダ、フレッシュフルーツとバターのオープンサンド、サーモンピンクのお魚のマリネ、ローストビーフ。
色鮮やかな料理に、会場がワッと盛り上がる。
予想以上の反応だわ、良かった!
料理人たちが試行錯誤して、味も見栄えも良いものを作ってくれたの。こういうもてなし料理が発達していないから、彼らも大変だったと思う。苦労の甲斐あって、出来は上々。
暖かい料理はスープだけだけど、これも滅多にないこと。あんまり出来たてをサーブするって発想じゃないの。本当に近世や近代とよく似てるわ。
今度サンドイッチやピザなんかも提案してみようかな。この世界にはないのよね。
「皆さん、今日は楽しんでいってくださいね。せっかくだから乾杯しましょう。全員グラスは持ちましたか?」
それぞれの手にはグラス。
みんな、子どものように目がキラキラしてる。
「3か月、お疲れ様! 乾杯!」
カンパーイ! と大きく唱和があり、会場の盛り上がりがピークになった。
しばらく盛り上がるのに任せて自由に飲食の時間が取られる。
あちこちで「美味しい…!」と感動の声があがった。
味も大好評ね。後で料理人たちに教えてあげよう。すごく喜ぶわ。
少し時間が立つと、さすがは事務職員、段々と落ち着きを取り戻してきた。
幸せそうな華やかな空気はそのままに、ざわめきだけが収まってきた感じ。
「さて、皆、盛り上がっているな。ここで、改めて今回の結果を報告する」




