27. 再検査
役所に隣接する講堂に、非能力者約500人が集められていた。ウォールデン家が治めるデヴォンス地区西部の10代と60代である。
能力再検査について、結局のところウォールデン家首脳会議では、最初に領主屋敷および役所の本所がある西部を対象とすることが決定した。
大事業の実施にあたり、最初の成果が出るまでは、人的資源を含めたイニシャルコストを最小限にしたいという狙いだ。そのため、労働力の中心である20代から50代は外し、今後のレベルアップ期間を見込んだ青田買いの10代と、隠居手前の世代である60代をターゲットとした。非能力者の平均寿命は82歳なので、75歳頃に隠居することが多い。隠居と言っても、自給自足以上の農作業はする活発な高齢者が大半である。農業に従事する割合が大きいためピンピンコロリ型の高齢者が多いのだ。そのため、仮に60代に能力者がいても、十分な働きが期待できる。
10代が約五万人、60代が約一千人であり、全一か月の実施予定である。
一度に500人の検査を、手続きも含め二時間で行い、それを一日に三回転で1500人を捌ける算段だ。
能力者の割合が未知数であるため、処理にどれほど時間がかかるかも不明である。ひとまず今回の検査で様子を見て今後必要に応じて改善していくことになっている。
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領主ジェーン・ウォールデンが全体に向けて短い挨拶をした。
「突然の召集に、みな都合をつけてよく集まってくれた」
朗々と響く美貌の領主の声に、500人の領民は夢見心地であった。あまりにも現実離れしている。自分たち平民に、領主が直接声を聞かせてくれるとは。同じ人とは思えない、美しい領主。ただの検査と、何の心構えもなく来たために呆けるばかりである。
ウォールデン家としては居丈高に出し惜しみしているわけではなかったが、領民の人口があまりに多いため、これまで平民との交流の機会がなかった。この機会に一度姿を見せておこうとのエミリの進言により、ジェーンの演説第二段実施のはこびとなった。
「みなの勤勉さ、真っすぐな心根、大変嬉しく思う」
その場の領民の心が一つになった。なんだかよくわからない検査の知らせだったが、今日、来て良かった。
もとより召集をさぼったり見送ったりするような民たちではない。真面目で素直な領民はデヴォンス地区の特徴であった。
さすが母。今日の演説も完璧だ。エミリは全体の空気が一体化し、感動で黄金色になったのを見届け、鑑定準備に入った。さて、本題の鑑定もしっかりやらなくては。
外見のインパクトを重視し、トップスは白のプルオーバー、ボトムスにも白のロングスカートと、前世の修道女をイメージした装いのエミリが登場した。記録係の事務員一人に、補佐役も一人つけ鑑定に臨む。
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いよいよ、だわ。
500人なんて集団は初めてだから柄にもなく緊張してる。
一列20人で25列、なかなかの人数ね。
でもここでオーラ酔いなんてしちゃったら、みんなの努力や時間が無駄になる。
絶対に成功させる。
覚悟を決めて、能力をオンにする。
…よし。大丈夫。いける。
一列分だけを識別してオンにできた。
でも、やっぱり集中力がいる。大見得切って二時間で二万人とか言っちゃったけど、一日に1500人にして良かったわ…。
それでもかなりのプレッシャーだけど。
「この方とこの方、こちらの方は別室へ」
オーラに灰色の澱みがあった人を別室指示する。
あ、これは能力者ってことじゃないのよ。
能力再検査だけでは集まりが悪いかと不安があったので、健康診断も兼ねてるの。
怪我とか病気とか、灰色の澱みとしてオーラに反映されるので、見逃さなければ健診にもなるという便利さ!
多分全ての疾患を網羅できてるわけじゃないけど。
一応別室で診察してもらえるようにしてるの。これはうちの貯蓄を切り崩して予算を組んだ。
今四列目だけど、別室行きが十名で、能力者はまだ出ないわね。
次、五列目。
…ここまで、能力者はいないわね。
やだ、こんなに大々的に検査しておいて、能力者ゼロだったらどうしよう。
でも確かに、特殊能力って自分以外見たことないわ…。
実在するのかしら。特殊能力者って。
前世が日本人の私が特殊なだけ…?
今さらだけど不安で少し手が冷えてきた。
次、十列目。
…いたわ!
ついにキラキラオーラ発見。
「この方は、手続きをお願いします」
隣に付き添っている事務員に手続きを依頼する。
すっごく小さな輝きだけど、確実にキラキラと光っている。
よし。
不安だったけど、能力者、いた。いてくれた。
はあ…良かった。ちょっと寿命が縮んだわ。




