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22. 結果

 ハワードはこれほとまで鬼気迫る様子のリスト・レイクを初めて見た。実務統括を退くときにハワード自ら後継に指名したのがリストである。若干35歳にして統括役を任せられている実力者だ。


「至急今後の方針について見直さなくてはなりません…!」


 ウォールデン家でハワードとリストの三度目の打ち合わせが行われていた。


「規模の大小を不問として年間平均18.6回の出動、一回あたりの実働期間が2.5日間、それを過去50年分洗い出しました。延べ約930回、一回あたり約240名対応、実人数200,218名分です。出動順位で並べたところ、最も出動回数が多かったのは水能力6名と土能力4名、次いで水能力3名と土能力5名、三位タイが水能力4名、土能力4名、火能力2名、風能力3名。この上位三位までの計31名の後年の能力について追跡したところ…」


「やはり、…明らかに出動数と熟練度が比例している。年齢と熟練度が相関関係にあると思っていたのは、完全な思い込みだったな。中年の能力者でも出動数が上位の者は高齢の能力者より強力な実力者だ」


 ハワードは感心したように呟いた。


「こうやって並べられると、上位者は有名人ばかりだな。しかも平均寿命より長生きされた方々が多い。私が実務を担当していた時にお世話になった方々もいらっしゃる…。よく覚えている、亡くなられた方はみな110歳近くまで生きた方ばかりだ。上位者は、実質80人程度で魔獣に対応できているな。実際には若い能力者も入れて220名編成のチームだったようだが」


「対照用に下位43名分を追跡したものがこちらの資料です」


「若年者が多いな。というか、この数年でデビューした若手の方々だ。たまたま若手が半数以上のチームで河川氾濫対応したデータがあるな…対応期間が四日か。かなり時間がかかっていたのは覚えている。下位者の中で老年の方が数名いるが……報告書では彼らの能力の高低ははっきりと分からないが、主力部隊でないことから高くないと考えられるな。これも出動数と熟練度の比例を裏付けていると言えるだろうな。データを拾わなければ分からなかったことだ」


 ハワードは、数字や表にまとめられた資料をつぶさにチェックした。ランキングは一位から最下位まで漏らさず目を通した。

 驚きながらも取り乱した様子のないハワードに、リストはこの結果が予想の範囲内だったことを知る。確かに、ウォールデン夫人の激励の中でも、驚くべき結論になるだろうと言及されていた。ウォールデン家ではこの結論を見据えて、今後の対策まで講じられているのではないか。

 リストは祈るような気持ちで資料を読み込むハワードを見守った。しばらくして、資料から顔を上げたハワードは落ち着いた様子でこう言った。


「よくここまでまとめてくれたな。当初の予定より早いが、今日を結果報告の日としよう」


 リストはハッとしてハワードの顔を見た。


「ジェーン様にお入りいただく」


 リストがゴクリと息をのんだ。



ーーーーーーーー



「お待たせしたわね」


 ジェーン・ウォールデンが執務室に入ってきた。

 リストは緊張でカラカラに乾いた喉を鳴らした。ジェーンの姿を目にすると、今手元にある緊急の要件など吹っ飛んでしまう。リストは魅入られたように動けなくなった。


「予想より早い仕事だったわ。本当によくやってくれたわね、ありがとう」


 そう言ったジェーンは先日の職員たちへの激励の姿が幻だったかのように、最初の印象どおりの優美な雰囲気であった。むしろ可憐と形容しても差し支えないほどだ。


「分析してくれて、驚いたでしょう? 私も、結果を目の当たりにして、ここまではっきりと数字に表れたのには驚いたわ」


 ジェーンと目が合うと、リストは頬があつくなるような気がした。


「あなたたちの調査によって、能力の使用頻度と熟練度の比例関係が明らかになった。つまり、能力は温存すべきものではなく、日々鍛練すべきものだということ。今後は、これまでとは真逆の方針でやっていかなければならない」


 リストは返事もままならずに、ただコクコクと頷いた。


「これから、あなたには、その……とっても意外に思われると思うんだけれど、会ってほしい人がいるの」


 会ってほしい人とは…?

 歯切れの悪いジェーンの言い回しに、リストは内心首をかしげた。

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