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2. 落胆

 ウォールデン家の執事、ハワード・ストリートは意外な驚きに片眉をピクリと上げた。

 これまでどんなことにも動じない鋼の心臓を持つ幼児とお見受けしていたウォールデン家の令嬢が、心底落ち込んでいるのである。エミリ・ウォールデンは、再起不能ではないか? と思われるほどに意気消沈していた。そんなに落ち込まないで、と声をかけることも躊躇われる沈みようである。


「……エミリ様、少しおやすみになられては……?」


 ハワードほどの年長の執事が、少女相手に小声になっている。屋敷内の空気は異常な重苦しさであった。

 ハワードの声が聞こえているのかいないのか、エミリ・ウォールデンは微動だにしない。どこか虚空の一点を見つめている。

 ハワードの声が届いていないとなれば、いよいよ他の者は動くことさえできない有り様である。

 この場面で、唯一声を出すことができたのはウォールデン家の主人、エミリの母親であった。


「…エミリ、一緒に部屋に戻りましょう」


 母の声にも何の反応もしないエミリであったが、母はエミリの小さな手をすくい上げるように繋ぐと、ゆっくりと手を引いて部屋に連れて行った。心ここにあらずのエミリの動作は緩慢で、普段の倍以上の時間をかけて部屋に戻っていった。

 エミリが立ち去った玄関ホールでは、彼女の足音が聞こえなくなると、居合わせた使用人全員がつめていた息を吐いた。長い溜め息の重奏の後、使用人たちはそれぞれの持ち場に散っていった。



ーーーーーーーー



嘘よ……信じられない。

私に能力が無かったなんて……。


何の反応もない検査器。能力無しの判定。

四つの検査を順に受けていって、最後の土属性の検査には祈るような気持ちで臨んだ。

大学受験で不合格が出るのと同じくらいのショックだと思う…。

精神的には大人な方だというつもりだったけど、5歳児の身体に心が引っ張られているのか、涙がとまらない…。

滂沱の涙ととめどない嗚咽で息も絶え絶えです。

あ、なんか呼吸が苦しくなって、意識が遠のいてきた…。



ーーーーーーーー



もう朝か。

夕食も摂らずにそのまま朝まで寝てしまったのね。

食事を抜いたことなんて今までなかったわ…。衝撃が過ぎたのね。


眠り過ぎたせいか、頭がぼんやりしてるわ。

とりあえず、着替えて朝食にしよう。さすがに空腹を感じる。


「いただきます」


ただ咀嚼しては飲み込むを繰り返してるけど。

気持ちがついてこなくて自分がロボットにでもなったみたい。

何を食べても空気を食べてるような感じ。

まだ昨日の判定を受け入れられていないんだわ。

一晩寝たらちょっと落ち着いたけど。


なんで能力無しなのに、私はこんなに食べるのかしら?

今だって、朝ご飯に、厚切りトースト3枚とベーコン5枚、目玉焼き5個、フルーツかご盛り、サラダをボール1杯……いや、この量おかしくない?

この世界でだって、どう考えたって大食らいよ。5歳なのよ?

痩せの大食いでもないの。普通体型だけど、排便が多すぎるわけでもないし。

私の摂取したエネルギーはどこに消えてるの?って話よ。

これで能力無しなんて、穀潰しよね私…。

なんか、ご飯食べながら涙が出てくるわ…。

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