16. 二人目の友人
すれ違おうとしたその時。
「エミリ・ウォールデン様…?」
エメラルドの君から声をかけられた。
「はい、そうです。先日の五歳の儀でご一緒させていただいた…」
「ぼくは、クリストファー・セシルです」
「クリストファー様、失礼いたしました」
エマが如才なく耳打ちしてくれる。セシル家の三男だって。セシル家は王都近くの極小さな領地の伯爵家ね。領地経営というより、代々王都務めをされてきた所謂官僚を輩出するお家。
「今日はご散策ですか?」
「はい、家族でこちらに遊びにきています」
「そうでしたか。王都からは少し離れておりますのでご不便でしょうけれど、ごゆっくりなさってくださいませ」
近くで見ると、本当にめちゃくちゃ可愛いわねー。超美少年!
しゃべり方も年相応で可愛いわ。やっぱりシェラはしっかりしすぎよね。
「はい、ありがとうございます」
「お引き留めして申し訳ありません。それでは失礼いたし…」
「あ、あの!」
お別れの挨拶をしようとしたら、必死な雰囲気で遮られた。
「はい、何でしょうか?」
「あ、あの…」
もじもじしてる…。可愛すぎる!
何か言い出しにくいことなのね? いくらでも待ってあげます。
「もしよろしければ、今からクリストファー様の行かれるところにご一緒いたしましょうか?」
「え…?」
「私は特に何も用事はなくて、ただ街を散歩していただけですので。お邪魔にならないように途中でお別れしても良いですし。少しご一緒させていただく間に、お話をうかがいますよ」
「あ…ありがとうございます」
恥ずかし嬉しそう~! はにかんでる!
可愛すぎるわ、クリストファー様。エメラルドのオーラも明るさを増した。なんて素直なの。
「では参りましょう」
元来た方向に踵を返し、クリストファー様の隣に並んだ。
「エミリ様は優しいですね」
「暇なだけですわ。お気になさらないでくださいね。それで、お話しなさりたかったことは何でしょう?」
「あの…ぼく、同じ年のお友だちがいなくて…。もし、エミリ様がお嫌じゃなければ、友だちになってくれませんか?」
え? 試されてるのは私の理性なの?
さらって帰っちゃう?
「もちろんですわ! とても嬉しいです! 私も友達と呼べる方はあまりいませんので、仲良くしてくださいませ」
あまりいないっていうか、シェラだけだわね。
王都ではもっと子ども同士が交流してるものなのかしら?
「良かった! 恥ずかしかったけど、勇気を出して言ってみて良かったです。あの、エミリちゃんと呼んでも良いですか?」
「お好きなようにお呼びください。子ども同士ですから、言葉遣いも気にしないでお話しましょう? 私もクリス君と呼んで良い?」
「うん!」
いけない、満面の笑みを至近距離で見てしまった。
目が潰れそうなほどの美しさ、そしてピュアさ。
オーラが最高明度です。相変わらずキラキラだし。外見の美しさはもちろんだけど、オーラの美しさも希少価値が高いわ。
「クリス君はいつまでこっちにいるの? もし時間があったら今度うちに遊びにいらっしゃらない? せっかく友達になれたんだもの」
「良いの? 行きたい!」
クリス君が許可を求めるように後ろの従者を振り返った。
年若い男性の従者は安心させるように微笑んで頷いている。
「それじゃ、すぐにお手紙を送るわね。クリス君が暇な時に来てね。私はいつでも大丈夫よ」
「わかった! ぼくもすぐにお返事を書くね」
クリス君の手紙、もらったら宝物にしよう。
その後すぐにクリス君の目的のお店に着いたので、名残を惜しみながら別れた。
そして当初の予定どおり、エマと一緒に例の喫茶店に入って、しっかりと珈琲をいただきました。エマはまたらくだ色のオーラで微笑んでいた。どういう感情なのかしら。
今日はとーっても有意義な一日だったわ。
今日の出会いに感謝。




