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13. 訪問2

「素敵なお部屋ですね」


いや本当に。お世辞でなく。

良い趣味ねー、この人。


「お褒めいただき光栄です。ゆっくりくつろいでくださいね。打ち解けた話もしたいですし」


「ありがとうございます」


今日のシェラ様は、シンプルな装い。ハイネックの白い薄手のセーターに黒のボトム。この人、子どもながらにハンサムだから、惚れ惚れする出で立ちなの。

そして何故かオーラはキラキラしているのよね。カリスマ性か何かをあらわしているのかしら。


「ところで、子ども同士ということもありますし、同年齢ですので、エミリ様さえ良ければ敬語無しでお話できればと思うのですが、いかがですか?」


「ええ、それはもちろん! 是非そうしましょう」


そうよね! やっぱり不自然なのよ、私の感覚では。


「良かった。じゃ、2人のときは気安くやろう。ところで、エミリは能力者?」


「いいえ、違うわ。シェラはそうなの?」


「ああ、僕は風の能力ありだった。成人したら魔獣駆除の務めが待ってる」


「風の能力だと災害対策はあまりしないの?」


「そうだな。このあたりは台風や竜巻の発生は少ないから。多い地域だとその相殺要員で風の能力者が重宝されるけど」


なるほど、力はなるべく浪費させたくないっていう考え方からすれば、災害対策の負荷が少ない風の能力者を魔獣駆除にあたらせることになるわね。

それからしばらく、能力について詳しくない私のために、シェラが災害対策や魔獣駆除の基本的な説明をしてくれた。あと、過去の能力者たちのエピソードも聞かせてくれた。シェラの説明って理路整然としていてめちゃくちゃ分かりやすい。さすが稀代の天才少年。


「ありがとう、凄く良く分かったわ。ところで、シェラは、もし魔獣駆除の回数が減ったら、将来何かなりたい職業はある?」


少し驚きながらも、うーん…と考えてくれるシェラ。


「そうだな…、それなりに大きな組織を動かしてみたいな。国や地域を見ていて、こういうふうにしたらどんな影響があるか、今のやり方を改善したらどれくらい便利になるかって考えるのが面白いんだ」


へー、マネージメントがしたいんだ。


「向いてそうね、そういうの。組織のトップで指揮をとるところ、イメージできるわ」


冷静だし切れ者っぽいしカリスマ性もあるから、ベンチャー企業の社長でもできそう。

素直な感想を言ったら、シェラが笑顔になった。

表情がほとんど変わらないクールな少年が、クスっとでも笑うとものすごーーく可愛い。シェラってこの年でファンがいそう。


「ハハ、エミリは面白いな。こんな話は初めてしたよ。確かに、経営者を目指すのも面白そうだな」


シェラの場合、外見的にも人気が出そうだから、前世でいうと芸能人やモデルを目指せそうだけどね。

話をしているうちにシェラのオーラが綺麗な水色になってきた。キラキラはずっとしてるけど。私といるのが楽しいと思ってくれてるみたい。嬉しい。


「もちろん、能力者の貴族の方々が、力を使って街の守備にあたってくださるのは有り難いし必要なことだと思う。ただ、子どものうちからその役割が決まってしまって、そこに向かって一直線になるのはもったいないって思うの。街の守備以外にも、将来の夢を何か一つは持てるのが理想かなって。だから今より守備にかかる労力が減れば良いなぁと考えているの」


「へえ…。何か具体的に思い描いているような雰囲気だな…。だとしたら驚きなんてもんじゃないけど」


「具体的にはまだ何もないのよ。ただ私の理想っていうか、夢かな。能力者と一般人のバランスの良い共存がね」


「そうか。とても興味深い考えだ」


「本当? 現実離れしてるから、誰ものってくれない話かと思ってた。興味深いと言ってもらって嬉しいわ」



ーーーーーーーー



 シェラ・ストーナーは満たされた気持ちで、紅茶を一口飲んだ。つい先ほど、本日の招待客であるエミリ・ウォールデンが帰って行った。

 エミリについては、少し変わっているらしいと風の噂で聞いていた。この地区は王都から離れているが、生産力が高く文化的にも発展した有力地区であるため、王都の貴族や王族たちが常に意識している土地なのだ。ストーナー家は運良くこの地区の目と鼻の先に別荘を持ち、隣接した王族直轄地があるため、定期的な観察も兼ねてここに月単位で滞在している。

 先日たまたま街を散策していたときに喫茶店でエミリを見かけ、滅多にない機会を逃すまいと多少強引だったが自宅に招待した。エミリは喜んで来てくれたようだった。

 話をした印象では、確かに変わっている。随分突飛な発想をする子だ。常識的に見れば、エミリは荒唐無稽なことを思い描くただの子どもだ。ただ、話してみて感じたのは、エミリの隠しがたい賢明さである。理知的な雰囲気があった。

 それは、シェラがまさに物足りなく思っていたものであった。他の子どもと話す機会はそれなりにあったが、同年齢の子との会話はシェラにとって満足のいかないものだった。ひどい場合は紋切り型の挨拶を暗記しているのみでまともな言葉の応酬ができず、最もマシな場合でもただよく躾られた子息子女といった具合で親の言に盲目的に従うばかりで己の意志などないかのような子ばかりであった。

 それが普通であって、自分が少しイレギュラーな存在なのだと思うことで、物足りなさを受け入れてきた。そんな時、五歳の儀でエミリを見かけて、そう言えば彼女が変わり者だと噂されていたことを思い出した。どんな子なのか少し話してみたいと興味を持っていたところ、喫茶店で再会したのである。


「大変楽しまれたご様子ですね」


 いつになく機嫌の良いシェラに、老齢の執事が給仕の合間に声をかけた。


「ああ。初めて会話を楽しいと思えた」


「それはそれは! ようございましたな」


 シェラの隠された悩みを理解している執事は、驚くとともにエミリに感謝の念を抱くほど嬉しく思った。

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