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10. 報告

「突然で驚かれただろうと思います。先ほど、火水風土以外の能力はないのかと聞いたのは、私のような事例があるのかを知りたかったからなんです」


皆、言葉も出ない様子。全員オーラが白になってる。驚きすぎて現実を受け止めきれないと白になるのかしら。


「私の能力は特殊系とも言えるんだけど、人の気分や感情を色として察することができるの。心の中を読むというような精度はないから安心してください。ひとまず、この力を証明するために、皆の気の色を説明しようと思ったんだけど…今は全員驚きすぎて白くなってしまっているから、どうしようかしら。あ、そうだわ。皆の苦手な事、得意な事が分かるわよ。どんよりした色や爽やかな色になるの」


とにかく前代未聞のことを皆に信じてもらおうと、矢継ぎ早に能力について説明する。私の必死さを見て、母が落ち着きを取り戻したよう。


「分かったわ、エミリ。あなたの言うことは本当なのね。皆も、良いわね? エミリの能力を疑う者は申し出なさい」


皆、疑念は全くないと頷いてくれた。能力について信じてくれたみたいで、全員のオーラにうっすらと色が戻ってきた。困惑はしてるみたいだけど。


「それで、なぜ今皆にこのことを報告したかというと、能力の話を聞いて、緊急性を感じたからなの」


「緊急性?」と母。意外なワードが出てきたと感じたのか、オーラが少し揺らめいた。

でも、気を取り直して聞いてくれるみたい。


「ここからは私の仮説なんだけど。恐らく、私と同じように、火水風土以外の能力を持つ人が他にもいる。なぜなら、五歳の儀でのチェック方法はその4つのエレメントについての影響力をみるだけのもので、他の能力を見分けられずに取りこぼすから」


「な、なんと…」


ハワードが愕然とした様子で呟いた。私の言葉を理解して、事の重大性に思い至ってくれたようね。


「だから、もう一度全領民を検査しなおすか、食事量が一般人の倍以上である人を申告させるべきだわ」


母が真剣な顔で頷いた。


「すぐに手を打ちましょう」


「ありがとうございます、お母様。その前に、もう一つ聞いていただきたい仮説があるの」


「続けてちょうだい」


「能力者は必要時以外には力は使わないのよね。ただ、次に力を使う時には消耗は回復している、と。このことから、能力は体力と同じく、時間を置けば自然と回復するものだと考えられる。ここまでは良い?」


全員がコクリと頷く。


「また、高齢になっても能力が下がることはなく、むしろ上がる者がいる。つまり、力は使えば使うほどレベルアップしていく仕組みなんだと思う。」


「レベルが、上がる……? そんなことが……」

「ありえるのかしら……」


皆の目が見開かれた。絵に描いたような目から鱗状態。


「ただ、必要時以外に力を使うことはタブー視されてきた。授けられた大切な力を不要なことに無駄遣いしてはならないという考えなのかしら。でも、先ほど皆同意してくれたとおり、力は絶対量が決まっていて使えば使うほど減っていくという性質のものではなくて、使った後はまた回復する性質のものだと思われる」


皆の理解を測るために一旦言葉を切った。

全員がゴクリと次の言葉を待っている。


「だから、本来はレベルを上げるために、力を常時使って鍛錬を積む必要がある。なのに、現状は必要時以外は使っていない。だから、能力者全員が、残念ながら基礎レベルのままでしかないんだと思う。高齢の能力者の能力が上がっていることがあるのは、たまたまたくさん使う機会のあった人だけがレベルアップしたということなんじゃないかしら」


「な……!」

「なんと……」

「…確かに、その説に論理的な破綻はないわ…。つまり、私たちは今まで、とてつもない間違いをしていた…?」


青ざめる母に、今後の対策について補足しておく。


「あくまで、私が今日聞いた話から立てた仮説ですが。これを立証するには、能力者たちの協力が必要です。ただ、今まで力を無駄に使ってはいけないとされてきたものを、急に存分に使えと言われても、力が減ってしまうんじゃないか、枯渇してしまうんじゃないかと彼らは戸惑い反発すると思います。彼らにこの説の正当性を分かってもらうには、これまでのデータを分析して実証するのが良いかと。多く力を行使した者が、後年能力を向上させているということが数値化できれば、レベルアップしたいと思う者が出てくるのではないでしょうか」


「そうね、そうね、…とにかくすぐに動かなくては。まずは王都のマクセルに連絡しましょう。それから、すぐに役所の職員たちを集めて、これまでの能力者のデータと、災害対策・魔獣駆除の実績とを照合させるわ。ハワード、手配を」


「承知しました」


母とハワードのオーラに赤が混じってきた。やる気ね。

あ、マクセルは父です。この数年王都務めで、私は父の顔を覚えていないの。

本当、この制度って……参勤交代そのものじゃない?! 江戸時代の要素もあるなんて素敵過ぎるわ、この世界。


「さて、エミリ」


落ち着きを取り戻した母が仕切り直して説明してくれる。


「話がそれてしまったけれど、明日あなたが訪問するストーナー家は、知ってのとおり王族家系の伯爵家です。確かな血筋によって強力な能力者が輩出されてきたお家よ。本拠地は王都で、各地の王族直轄地の管理をされているの。今はうちの治めるデヴォンス地区に隣接した別荘地に足をのばされていたのでしょうね。家格は高く、経済力は低くない、政治的影響力も低くない、となかなか手ごわいお家よ。中でもシェラ様は、百年に一人の逸材とされる切れ者だとの噂よ」


確かに、分かります。どおりで頭の回転が早いと思ったわ。他の5歳児はさすがにああじゃないわよね。


「お噂のとおり、もの凄く知的な方でした。明日は、粗相のないように気をつけます」


「……全く引けを取っていらっしゃいませんでしたけれど。むしろ渡り合っていらっしゃいました」


やだ、エマ、オーラがらくだ色。どういう感情なの。

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