1. 転生先は異世界
ついに手を出してしまった異世界モノ。
舞台設定はライトです。明治時代あたりの日本のイメージ。
元日本人の有能女子が、日本人の感覚やスキルを生かして世界を改革していきます。
男前エリートや超美少年を知らず知らず落としていくサバサバ系女子。
幼少期からスタートするので、しばらくは領地経営や成長過程の描写が続きます。恋愛モノらしくなるのは中盤以降の予定。
エミリ、5歳、女の子。
前世の記憶があります。
魔法のような非科学的なエネルギーが存在するこの世界に、辺境伯の三女として生まれました。
前世は日本人。女子高生だったみたい。詳細な記憶はないから、何歳まで生きたのかは分からないけど。
性格や性質なんかは前世にそれほど影響されてないんじゃないかと思う。
とりあえずこの五年間の人生で、前世の知識が直接的に役立ったことはまだない。こちらでの一年は前世換算でおそらく1.2倍の440日くらい。だから、日本人的にはちょうど6歳になったところね。1日の長さは多分それほど変わらない気がする。はっきりとは分からないけど。
日本人の感覚だけはわりと強く残っていて、家族や使用人からは大分変わった子だと思われているよう。
疎まれてはいないけど、持て余されてるっていうか。
若干放置気味。ある意味気楽だけどね。
この世界は私を受け入れることに戸惑っているようだけど、私はこの世界が大好きなの。
街の様子が、明治時代の日本っぽいのよ! 和の要素じゃなく洋の要素だけなんだけど。
前世の私は近代日本がすごく好きだったようで、その感覚を受け継いでいる今世でもこの世界観がとても気に入っているの。私にとっては街全体が博物館みたいなもの。(前世でも家の近くに近代の建物を移築したテーマパークがあって、何度も行った記憶があるの。その記憶だけ割と鮮明なのよね。)
街の散策なんてしたらいつまででも楽しんでいられる自信があるわ。5歳だから自由に街を歩いたことはないけど。
さて、今日は5歳児のための儀式があるの。どの世界にもあるように、子どもの成長を祝う七五三的イベントね。
実は、ひそかにこれを楽しみにしてたの。
この式典で非科学的な力が解禁されるの! 15人に1人が能力者だっていうから全体の6%ね。
可能性は低いけど、是非とも能力者になりたいところ。
一応、希望はあるの。能力者は大食らいという特徴があるんだけど、私もかなり食べる方なの。どう考えても普通の5歳児の食事量じゃないから。
魔法が使えるのって日本人的には涎ものじゃない? できたら空を飛んでみたいわ。
「エミリ様、お支度が整いました」
お祝いの衣装を着せられて、今日のために伸ばした髪もクルクル巻かれて纏められてます。
この世界は、スタイルも近代日本のイメージに近いの。和装はないんだけど、豪華なドレスや夜会巻きっぽい髪型なんかがね。それだけでもテンションが上がるわ。
能力者と判明すれば各地区の公的機関に登録され、管理されることになっているの。
式は解放されているから、子どもの家族や親戚が見にきたりご近所さんが見物に来たりするので、それなりに賑わうんだそう。
この世界には保育園や幼稚園のような施設がなくて、子どもたちは10歳(ここでの10歳は日本での12歳ね。)まで家庭教育されるから、よその子と会うのも滅多にない機会。
流石に、自分の精神年齢的に気の合う子がいるとは思わないけど…とはいえ少し楽しみ。
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式典会場は華美な衣装の子どもたちと保護者たちでいっぱい。
本当に賑やかだわ。規模でいうと、七五三より入学式みたいな感じね。
主役の子どもだけで、…ざっと見たところ五百人はいるわね。入学式というより成人式みたい。大きな会場が満杯。
この式典は三地区合同で(そのうち二地区がうちの領内よ)やってるから地方でやってる中では大規模な方。
豪華な衣装に身を包んだ五百人の子どもたち…結構壮観よ。これを見るだけでも価値のある式典だわ。
子どもの群れに紛れて見回してみると、…おぉー、子どもながらに美形がいるわ。
5歳にもなれば、個性もあるし、なかなか見応えがあるわ。
目に付いたのは、遠巻きにされてる賢そうな男の子、ちょっと見かけないくらい可愛らしい子(衣装からすると多分男の子)、周りに興味なさそうなしれっとした女の子。この3人くらいかな。
日本の6歳児と違って、ほとんどの子が積極的に交流しようとしないのね。
気安く話しかけたらとんでもない家柄の子だったってこともあるからか、親が言い聞かせているのかもね。おかげで私も浮かないですむわ。
ちなみに私は親から何の注意も受けていないわ。私が他の子どもと交流するはずないって折り込み済みなのかしら。まぁ悪くない読みね。
さ! いよいよ待ちに待った能力チェックよ!
期待で鼻息も荒くなるわ。