閑話 レイという暗殺者
レイは暗殺者だ。
生まれたときから国で暗殺者として育てられたレイは初めからその才能を遺憾なく発揮した。
隠形をやらせれば常人以上、戦闘をやらせれば常人以上、暗殺をやらせても常人以上、暗殺者としての訓練すべてで常人以上の成果を始めからだした。
そして、その才能は訓練を重ねるごとに異常な速度で育った。
そんな彼女はある任務で目を負傷してしまった。それにより失明してしまった。けれど、それは彼女のミスではない。一緒に行動を行っていた同僚の暗殺者によるものだった。
その同僚は暗殺者としてあるまじき嫉妬という感情を彼女に覚えてしまったのだ。
しかし、レイは負傷してすぐその同僚を殺し任務を遂行した。
彼女は感情というものがなかった。なので、同僚を殺すことなどためらいもなかった。
喜怒哀楽を表すことのない彼女にとって他人とはその辺に転がる石ころと変わらない。
目が見えなくなったからといって行動できなくなるほど彼女は弱くはなかった。目が見えなくとも気配でそして、魔力で世界を見ることができた。
それにより失明する前と全く変わらない生活を送ることができた。
ある日、勇者召喚の日システィに呼ばれある人物を監視する任務を任された。その人物は今まで暗殺をしてきたどの人物より危険なので細心の注意を払うように言われた。
――一体どのような人物なのだろう?
そう思いつつ監視対象に会った。
――なんて温かい魔力
レイは裕に会ったとき今までに見たこと、感じたことのない魔力そして、始めての何かに戸惑った。
そして、裕に頭を撫でられたときその何かか分かった。
――そっか、これが感情
レイはそう理解すると裕に抱き着いていた。なぜ自分がそうしたのかわからない。分からないが体が勝手に動いたのだ。
裕に抱き着いて最初に感じたのは安心感だった。
――この人といたい
これがレイにとって裕という奇跡との出会いだった。