監視役の少女
コンコン
「どうぞ」
案内された部屋で本を読んでいると部屋をノックされた。
「失礼します」
入ってきたのは先ほどアイリスと一緒にいた魔法士の一人だ。声からして女性だろう。
「私はシスティーナと言います。システィとお呼びください」
システィは被っていたフードを外し自己紹介をした。フードを外すと綺麗な長い銀髪がふわりと広がった。切れ目の目が大人の女性をイメージさせる。
確か彼女はあそこにいた魔法士の中で一番魔力量が多かったのでかなりの実力者なのだろう。
「じゃあ、俺のことはユウでいいぞ。よろしくな、システィ」
「はい、よろしくお願いします、ユウ様」
「それで俺に何か用か?」
「実はユウ様にお願いしたいことが・・・」
そして、システィは監視のことを俺に説明した。
「なるほど別に構わない。お前たちからしたら俺は危険な存在だからなそれも納得できる」
まあ、さすがに魔王以上の力があるかもしれないやつがいるのだから監視は必要だろう。逆にすぐ始末しないだけましなのだろう。
「ありがとうございます。では、監視するものをお呼びします。入ってきてください」
システィは部屋の外に待機させていたのであろう人物に声をかけた。
「・・・」
入ってきたのは目を布で目隠しした小さい女の子だった。
「彼女はレイ。この国で一番の実力のある暗殺者です。この子ならユウ様の行動を邪魔することなく監視にすることができるでしょう」
「ほう、こんな小さい子が・・・」
こんな小さな子が一番の暗殺者と聞いて驚きじっと彼女を見つめるとレイの方も俺を見つめていた。
「まあ、よろしく頼む」
そう言って頭を撫でる。目隠ししているので表情は分かりにくいが雰囲気からレイが喜んでいるのが何となくわかった。
すると撫でられていたレイは抱き着いてきた。身長的にお腹のあたりに顔をうずめている。
「おっと」
抱き着かれ少し驚いたがレイの反応に俺は頬が緩みそのまま頭を撫で続ける。
「・・・あのレイが」
システィは驚きの表情でレイを見ている。
それから少しして満足したのかレイは俺から離れた。レイを見ると少し口角が上がっているので嬉しかったのだろう。
「・・・レイが、あのレイが笑った」
やはりシスティは愕然とした表情をしてレイを見ている。
「それで監視役はレイということでいいんだな」
「・・・っは!はい、そうです。レイくれぐれもユウ様の邪魔をしないよう」
レイはコクリっと頷くとすぅっと消えていった。
「ほぉ、すごいな」
レイの隠形に感嘆する。あまりにも自然に気配を消し、俺でも魔術を使わなければ分からないほど巧妙に気配を消している。
「だが、レイでてこい」
俺がレイを呼ぶと消えたときと同じようにすぅっと姿を現した。呼ばれたレイは首をこてんっと傾け不思議そうにする。
「レイそのまま姿を出した状態で俺の傍にいろ」
レイは少し考えシスティの方を見た。
「ユウ様がよいとおっしゃるなら」
「ああ、問題ない。俺はレイのことを気に入ったからな。一緒に行動してほしい」
俺の言葉を聞いたレイは嬉しそうに俺の傍に来た。
「では、レイよろしくお願いします」
そして、システィは部屋を出て行った。
「さて、俺は読書の続きをするがレイはどうする」
俺がそう聞くとレイはトコトコっとベットのほうに歩いていくとベットをぽんぽんっと叩いた。
「そこに座ればいいのか?」
レイはコクリっと頷く。それに従い俺はベットに腰を下ろす。そして、レイは俺の膝の上に座ってきた。
「・・・♪」
どことなく満足気なレイを見て俺は軽く頭を撫で読書を再開する。