表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/69

SS・5月23日は「チョコチップクッキーの日」


 次々と材料を並べてくれたコックのミセス・ターナーに見守られながら、エイミはボウルに入れたバターや砂糖、卵を木べらで練っていく。

 ふるった粉と、最後にチョコチップをさっくり混ぜれば、生地の出来上がり。

 手でコロコロと丸めて、天板の上でぎゅっと平たく押しつぶしたら、オーブンへ。


「へえ、『チョコチップクッキーの日』ですか。お嬢様は物知りですねえ」

「私も知らなかったけど、今日の新聞のミセス・アキツキの記事にあったのよ」

「おや。その方は、奥様とお嬢様が楽しみにしている連載小説を書いてる人じゃなかったですか」

「うん! 今日はお話のほかに、そんなおしゃべりも載っていたの」


 お茶を飲みつつそんなことを話して待っていると、オーブンからはバターとチョコレートの甘い香りが漂い始める。

 焼きあがったチョコチップクッキーがようやく触れるほどの熱さになったところで、エイミはミセス・ターナーに礼を言うと皿に盛ったクッキーとともにキッチンを後にした。


「お母さん! じゃーん。チョコチップクッキー♪」

「……猫型ロボットの登場かと思ったわ」


 ティガーを撫でながらくつろいでいたイサベルは、手元の本をパタリと閉じると娘に笑顔を向けた。


「珍しくお母さんにティガーを預けて、何をしているのかと思ったら」

「いや、あの記事読んだら焼きたくなっちゃって」


 ソファーから降りてエイミのほうにととん、と寄ったティガーもテーブルの上のクッキーが気になるようだ。ほかほかと湯気の上がるそれを興味深そうに覗き込んでくるが、さすがに猫にクッキーはあげられない。

 お皿を遠ざけられて見るからにしょんぼりする背中はやっぱり丸い。見事な猫背だと思いながら、エイミはティガーの正面に座ると腕を回して抱きついた。


「はあぁ、今日も安定のもっふもふ……ごめんね、ティガーはダメなの」

「悲しそうな顔してるわねえ」

「でもダメ。あ、そうだ」


 首周りの厚い毛に埋めていた顔を上げると、エイミはティガーの鼻先に、ちゅ、と軽くキスをする。


「5月23日は『チョコチップクッキーの日』だけど、『キスの日』でもあるんだって」

「あらあら、ふふ」


 ちょっとご機嫌のなおったティガーに猫用のオヤツをあげながら、伯爵家の母娘は焼きたてでまだふにゃりと柔らかいチョコチップクッキーを食べたのだった。





初出:2018.5.23 活動報告より微修正

秋月 忍様(https://mypage.syosetu.com/411932/)から「チョコチップクッキーの日」というのがあると教えていただいて書いたSSでした!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英語と日本語で書籍化しています!
(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)
そん猫英語版①書影 そん猫日本語①書影
英語版 Cross Infinite World(イラスト:茶乃ひなの先生)
日本語版 アマゾナイトノベルズ(イラスト:小澤ゆいな先生)
Web site

X (Twitter)


マシュマロ

↑ご感想はマシュマロでどうぞ!↑
(お返事はX (Twitter)上になります)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ