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神の女王と解放者  作者: 覚山覚
第六部 終焉への始まり

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八六話 信頼獲得への約束

「――ちょっとナスルさんにご報告があって戻りました。……いえ、大した事じゃないんですよ。ただ、この先の街で一人ばかり殺してしまいまして。いえいえ、暴力をふるわれたので反撃した結果、残念なことになったというだけです――そう、正当防衛なんですよ!」


 僕らは一時的に進軍中のナスルさんたちに合流して、事のあらましを語った。

 なにせナスルさんがデマを耳にしたら、僕らが誤解されてしまうのだ。

 事前にちゃんと説明しておかなければならない。


「そうかね……」


 ナスルさんは疲れた声で応えた。

 ナスル軍は現在の段階で二万人を超えている。きっと心労も多いのだろう。 

 護衛として横に立っているレットは、なぜか僕を疑うような目で見ている。

 僕は嘘なんか吐いていないのに、まったく失礼な男である。


「アイス君、頼むから、味方の兵士は殺さないようにしてくれたまえよ……。

 君たちに兵士が殺されたと噂が広まれば、動揺は避けられないからね」

「いやだなぁ、ナスルさん。僕らは生粋の平和主義者ですよ? ……それに先ほどの件は、死体こそ真っ二つになりましたが、傷口は焼いてあるので店内は汚してないんですよ。むしろ死体が二つに分かれているので、持ち運びもしやすく片付けも簡単なんですから!」


 殺害した男が入軍を希望していた事については言わなかった。

 もうあの男は死んでしまったのだ。生前の希望を伝えても詮無きことである。

 その代わりに、店側にも配慮されているフェニィの功績をアピールだ……!


「どこが平和主義なんだよ……」


 無粋にもレットがケチをつける。

 僕らが穏便に会話で解決しようとしたことを伝えたというのに。

 ……フェニィの進歩は驚嘆に値すると言えるだろう。

 このまま成長していけば『お止めなさい、暴力は何も生み出しません』とか言い出すかもしれない――フェニィ聖女計画だ……!


 それから僕らは、ナスル軍に合流したついでに指無しさんのところにも顔を出すことにした。

 現在指無しさんは、外部からの入軍希望者をまとめている立場にいるらしい。

 さすがは指無しさんだ。


 ――指無しさんがいる天幕に入って驚いた。

 指無しさんとニトさんが、怪我をしている……!


「ど、どうしたんですか、指無しさん! 顔にそんな青アザを作って……」


 すぐに二人に駆け寄り治療をする。

 明らかにこれは殴られた跡じゃないか。

 指無しさんに暴力を振るうなんて……許せない!


「いや、こいつはお恥ずかしい。治してもらってありがとうごぜぇます。

 ……ちょいと新米に跳ねっ返りがいただけなんで、気にしないで下せぇ」

「俺が付いていながら……面目次第もないっス!」


 新米……入軍希望者か。

 血の気が多い、荒っぽい人間も多そうな気がする。

〔武の加護持ち〕とはいえ、ニトさん一人では厳しかったのかもしれない。


「気にしないなんて出来る訳がないですよ。……どんな人にやられたんですか?

 僕の方からガツンと言ってあげようと思います!」

「い、いや、アイスさんや団長が出るまでもないでさぁ。はい、殺すほどの事じゃないんですよ」


 なぜ僕とセレンが関わると殺すことに繋がるのだろう……?


「ナスルさんといい指無しさんといい、発想が物騒でいけませんね。大丈夫ですよ、ガツンと言うだけです――ガツンと殺しなんかしませんよ!」


 僕のシャレの利いた説得に、なぜか不安が増したような様子の指無しさん。


「そいつらは二人組なんですが、二人とも戦闘系の加護持ちなんでさぁ。なんで、殺すには惜しいんですよ……このままじゃ示しがつかねぇのは確かなんで、あとでロブさんかレットさんに出張ってもらおうと思いやす」


 戦闘系の加護持ちが二人なら、ニトさん一人では手に余るのも仕方がない。

 というか、僕は話し合いをするだけのつもりなのに、なぜ〔殺人狂〕のように思われているのか……。

 ロブさんやレットへの信頼を、僕にも分けてほしいものだ。


「ナスルさんにも言いましたけど、僕らが仲間である兵士さんを殺すわけがないじゃないですか。まぁここは、ドーンと任せちゃって下さい!」

「そうですかい……ならお願いしやす、アイスさん」


 僕に引く気が無いのを悟ったのだろう……どこか諦めたように僕へと頼む指無しさんだった。

 信用されていないのは悲しい事だが、結果で信用を勝ち取ってみせようではないか……!


明日も夜に投稿予定。

次回、八七話〔死人に口無し〕

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