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神の女王と解放者  作者: 覚山覚
第四部 刻の支配者

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五五話 明かすべき真実

 僕らがナスル城に滞在を始めて数日が経った。

 僕はその間に、セレンを呼び寄せる為に手紙を送り、レットの動向を探る手筈を整えていた。

 ナスルさんが、軍を編成したり下準備をするのに三カ月は掛かると言っていたので、丁度いいことだろう。


「――呪神の女はレット君が毛嫌いするタイプだったよね」


 レットの事をそれとなく調べてもらうように、ルピィにお願いしていた時だ。

 呪神の侍女のことが僕らの話題となった。


「うん、僕もそう思った。あの場にレットがいなくてよかったよ……」


 普段は常識的な人間のレットだが〔正義を騙り悪を為す〕ような人間が大嫌いなのだ。

 以前……ルピィと、時々レットも合流するような形で旅をしていた頃、正義面した外道な男に――レットが激怒して本気で殴ってしまった事がある。

 神持ちのレットが本気で殴った訳なので、当然のようにその男は即死した。

 問題はその男が、〔教国〕の要人であり、衆目の中での殺人だった事だ。

 ……おかげで、一緒にいた僕がその後の対応に苦慮したのだ。


「レット君なら絶対あの侍女を殺っちゃってたよ。普段はそうは見えないのに、キレると大胆だよね~」

「まぁ、レットは加護のことで()()()()()()()()()()ようなところがあるからね。余計に許せない気持ちがあるんじゃないかな?」


 僕はレットを擁護した。

 レットが激怒したのを見たのは後にも先にもそれだけだったので、よほど腹に据えかねたのだと思う。


「たしかにアイツは、レット君に殺されて当然のヤツだったけどね。……呪神の女は取り調べ中らしいけど――まだジーレちゃんには、あの女のことを伝えてないらしいよ」


 ――ちなみに連絡役の男〔カナリア〕は、既にナスルさんに伝えて捕縛してもらっている。

 それどころか軍国の連絡人も、ルピィの協力によりあっさり拘束済みである。


「そっか……じゃあ、ジーレに会う時も話題に出さない方が良いのかな……」


 今日はジーレの体調が快復してきたという事で、面会の予定がある。

 ジーレの体調を悪化させるかもしれないし、刺激するような事は控えた方が良いのかもしれない――

 ――だが、それは逃げているだけなのではないのか? 

 ジーレの傷つく顔を見るのが怖くて、安易な選択をしているだけではないのか?

 僕の迷いを見透かしたように、黙って話を聞いていたフェニィが口を開く。


「……あの娘は知るべきだ」


 ――頭を殴られたような思いだ。

 そうだ、まったくもってフェニィの言う通りだ。

 ジーレは自分を苦しめていた元凶を知るべきだし、知る権利があるのだ。

 当の本人だけが何も知らないまま、今もあの侍女を慕っているなんて事は決してあってはならない。


「――そうだね、フェニィの言う通りだ。僕から伝えようと思うよ」


 ジーレの長い夢を終わらせたのが僕であるなら――僕が告げるべきだ。


「別にアイス君が伝える必要は無いんじゃないの? ナスル王にでも任せちゃいなよ」


 ルピィが僕の事を心配してくれているのが伝わってきた。


「一度関わった以上、最後まで僕がやるよ……心配してくれてありがとう」

「べ、別に……アイス君がまた号泣するんじゃないか、って思っただけだよ」


 ……僕は号泣まではしていない、はずだ。


「――――オウ、アイス。イマカラ、ダイジョブカ?」

「……はい。行きましょうか、ロブさん」


 ジーレに会いに行く為に、ロブさんとナスルさんが僕らを呼びにきた。

 ――ロブさんの目をまっすぐ見て話すことが出来ない……あの日以降、ロブさんはずっと片言のままだ。

 性格も人が変わったように丸くなっている……。

 ナスルさんも当然気が付いているはずだが、一言もロブさんの変貌について言及することは無かった……いっそのこと責めてほしい。


 軍国との争いに片が付いたら、ロブさんを教国の聖女に診てもらうように手配しよう。

〔治癒神持ち〕の彼女なら、あの日のロブさんに戻せるかもしれない。……僕は過去の色々で聖女に嫌われているので、レットに紹介状を書いてもらうのが良いだろう。

 聖女はレットの事がお気に入りなので、二つ返事で引き受けてくれるはずだ。

 ……ロブさんの将来に光明を見出した僕は、少しだけ元気になった。


「ナスルさん、ジーレのことなんですが――僕の方から呪神持ちのことについて話そうと思います」

「君が……?」


 ナスルさんは難色を示したが…………僕の不退転の説得によって、最終的には理解を得られる事に成功した。


「すまん……アイス君に全てを押し付けることになる」


 ナスルさんは歯痒そうではあるが、僕から話すことには心情面以外でも意味があるのだ。

 なんといってもジーレはまだ幼い。

 姉と慕っている人間の悪意を信じられずに、侍女を助ける為に暴れる可能性だってある。

 そうなると、神持ちのジーレを止められるのは――僕たちだけなのだ。


「――オガモトツオケラ……!」


 くっ……何を言っているのか分からない!

 ロブさんは興奮すると早口になり、僕には聞き取れなくなるのだ……!

 かと言って、「聞き取れなかったので、もう一度言ってもらえます?」なんてことは言えない――言えるわけがない!


明日も夜に投稿予定。

次回、五六話〔発散〕

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