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神の女王と解放者  作者: 覚山覚
第二部 盗神と裁定

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二十話 情報交換

 僕は気になっていた事をルピィさんに尋ねる。


「ひとつ確認なんですが、ルピィさんは盗賊・諜報・暗殺といった系統の神持ちで合ってますか?」

「……〔盗神の加護〕を持ってるよ。聞こうと思ってたんだけど、どうしてアイス君はそれをボクに会う前から知ってたの? この街でも、ボクの加護のことを知ってる人は少ないはずなんだけど」


 ルピィさんは少し警戒するように僕を問い詰めた。


「僕は昔から、人を視るだけでその人の保有する魔力量や加護の系統の見当がつくんです。神持ちの人は図抜けた魔力量を保有しているので、まず一目見れば分かります」


 僕自身という例外もあるが、ややこしくなるのでそこは伏せた。

 神持ち以外で僕くらいの魔力量の人間はこれまで視たことがないので、この場で語る必要はない。


「……嘘を吐いてるわけじゃなさそうだけど、聞いたことがない話だね……でも、それなら色々と納得出来るよ」


 ルピィさんが人の嘘を見抜くのが得意そうな、観察眼の鋭い人だったおかげで話が早くて助かる。

 そして僕はそのまま本題に入る。


「その、大変失礼な話なんですが……これから先、領主だったり貴族だったりとかのお屋敷に、盗みに入る予定があったりしませんか?」


 ルピィさんが人には言いづらい、()()()()()()の神持ちであることを看取した僕が、最初に思ったのはそれだ。

 そこには〔盗神の加護持ち〕に対する、僕の偏見意識があったことは否定できないが、なにしろ〔公開処刑〕に遭うというのはただ事ではないのだ。

 ……相応の罪を犯さなければ、それほどの仕打ちを受けるはずがないのだから。


「本当に失礼な話だよ!? 盗神持ちだからって、ボクは泥棒じゃないよ!」


 ルピィさんはぷんぷんと怒っている。

 だがお怒りはごもっともだ。望んで得た加護というわけでもないのに、盗神持ちというだけで泥棒扱いされたのだから。

 ……ちなみにフゥさんはお腹を抱えて爆笑している。


「はい、すみません……一応聞いておく必要があったので。公開処刑に遭うというのは中々あることでは無いですし……」


 僕は素直に非礼を詫びる。


「まったくもう……それにボクは領主様に雇われて仕事をしてるんだよ? 貴族の不正調査とか浮気調査とか、あとは護衛の仕事なんかも時々やってるんだよ」


 なんと、領主から仕事を受託していたとは。

 なるほど。この人の手にかかれば浮気など、あっという間につまびらかになるであろう――浮気をしていなくても、二人くらい愛人が発覚する気がしてしまう。


「そういった仕事の依頼があるということは、ここの領主様は〔盗神の加護〕のことを知ってるんですか?」

「うん、そうだよ。この街でボクが〔盗神持ち〕なのを知ってるのは、お姉ちゃんと、加護を調べた教会の人と、あとは領主様とその側近の人たちくらいだよ」


 ルピィさんが神持ちであることを看破した際に警戒されるわけだ。

 犯罪に直結しそうな加護の所持者は、気にせず喧伝する人も中にはいるが、隠す人も多いのだ――〔盗の加護〕どころか〔盗神の加護〕ともなれば秘匿に気を使うのも道理だ。


「神持ちとなれば、軍からの徴集はなかったんですか?」


 教会での検査で神持ちの事実が発覚すれば、領主もいないような山奥の村は別だが、街の領主には国への報告義務があるはずだ。

 神持ちは一軍に匹敵する戦力であり、一領主が小間使いをさせるには過分な存在である。

〔盗神の加護持ち〕なら、軍国でも諜報系の人間が集まる第五軍団で歓迎されることだろう。

 軍では男尊女卑の傾向があるから、軍団長になれるとまではいかないまでも、優遇されることは間違いない。


 あるいは……僕は交配実験について思考し、頭を振った。

 ……あまり想像したいことではない。

 とにかく、神持ちに対して、国がなんのアクションも起こさないとは考えにくいのだ。


「それが無かったんだよ。ボクも自分で調べてみたんだけど、どうも領主様は国に報告していないみたいだね」


 なるほど、それなら合点がいく。

 領主としては街が魔獣に襲われたり、盗賊団の襲撃を受けたりした時の為に、高い戦力を保持しておきたいというのはごく自然な心理だ。

 軍国から派兵されている兵隊やイージスの面々もいるが、神持ちとは比べるべくもない。


 そうなると、〔神持ち〕であることを、軍国に隠匿したかどで処罰を受けるというのはどうだろうか? 

 可能性はゼロではないが、盗神持ちとはいえ、何の罪も犯していないルピィさんを公開処刑にまでするとは考えづらい。

 第一、それならば隠匿した罪を問われるべきは――この街の領主になるはずだ。


「この街の領主様ってどんな方なんですか? 護衛をしていると言ってましたが、今は張り付いてなくて良いんですか?」

「ボクは普段から護衛しているわけじゃないよ。他の領主様との集まりがある時なんかに、適時護衛として呼ばれる感じだね。とくに領主様は賭け事が好きだから、その時によく呼ばれるんだけど、もう賭場の用心棒みたいなもんだよ」

 

 盗神持ちが賭場の用心棒とは、なんという贅沢な使い方だろうか。

 純粋な戦力としてだけではなく、ルピィさんならイカサマ行為とてすぐに見抜きそうだ。


 しかし、この街の領主とはそれなりに友好的な関係であるようだし、ますます公開処刑になる理由の見当がつかない。

 過去の公開処刑の例を参考にすれば、世間を騒がす重大犯罪者の裁きであったり、権力者への反逆行為に対する見せしめが考えられたが、どちらも現時点では心当たりが無いとなるとお手上げだ――情報がまだ少なすぎる。


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