連鎖
遠く、蹄が荒れた土を叩く音が響く
木で包まれた鉄筒から、鉛の塊に次いで衝撃と圧と共に煤けた肌を焼くガスが噴き出す。
微小な原子を放熱で焼き尽くしながらゆっくりと前へ進み、傍に立つ人の耳元へ僅かな空気の圧が押し付けられ。辺りへ当てる熱が少なくなると途端に冷たくなり無機物としての役目を果たすため、目標へと一直線に飛んでいく。
計算外、きっちりと目標の頭へ飛び込むはずだった弾丸は突風の影響を受けて一ミリにも及ばない程ずれる。しかし射線は飛距離を増すごとに横へずれていく。やがてそれは目標からは数歩分ずれた鉄骨へ命中、跳弾し、砕けた破片は何も知り得ない一匹の蟻を押しつぶすだけに留まる。
スコープの向こうで銃声に怯える目標
射手は再調整、再びトリガーへ指を掛け
銃声
トリガーにはあと一歩、指が掛けられる寸前で彼の頭を射抜いたパトロールの青年は、生まれて初めて引き金を引いたせいか震えていた。振り向く青年の肩を叩いた中年の男は初めて大役を果たした青年の頭を撫でながら笑っていた。今晩は酒でも飲むのだろう、遠くで怯えるかつて目標であった人物はボディガードになだめられ、後に続いて車へ乗る家族を抱き締めていた。
空、良く晴れた青い空にはすでに落とされた弾頭が花開き、花粉が躍るように多くの爆弾が解き放たれた。パイロット達はボタンを押しただけ、彼らの機体へ迫る迎撃のミサイルは、プログラムに従ったランチャーが機械的に放っただけ。
丘に立つ馬はその尊さに無い首で嘶き、主は馬車の戸を開いた。