ボス戦でも我が道を進む
≪東の森・奥地≫
森の奥にどんどん進んでいく。すると、とてつもなく大きな木の壁が道をふさいでいた。よく見ると階段が壁に彫られている。登れってことかな?
数十メートルあるだろう壁を登り終えると、壁に見えた木は実は超巨大な切り株のほんの一部分だったことがわかった。私が今立っているのは、直径が何キロメートルあるかわからない切り株の端の端。そして、切り株は内側が円形にきれいにくりぬかれていて、大きな闘技場になっていた。
闘技場に飛び降りると、頭上の森から咆哮とともに巨人が落ちてきた。巨人には、観察を使わなくても名前とHPゲージが表示されていた。巨人の頭の上に、
≪The Pioneer of weapons≫
の文字と1本の赤いゲージ。
巨人はどこからか一振りの大剣を出すと、急速に距離を詰めてくる。こっちも距離を詰めて、巨人の一撃を避けて足に槍で攻撃する。しかし筋肉の塊の足から返ってくる手ごたえは金属のそれだった。右手にしびれを覚えながら、巨人の間合いから離脱する。
どのくらいダメージを与えたか確認すると、ほとんど全く削れていなかった。
「うっそ。これ勝てるの?」
巨人の攻撃を回避しながら、動きをしっかりと見て覚える。光が見えるからパリィもできるんだろう。ただ普通にパリィしたら絶対に失敗して、叩き斬られるだろうな。できる限りの補助をしても確実にできる保証はないけど、やるしかないよね。
思考を避けることからパリィを狙うことに切り替えて、全速力で闘技場を駆け回る。そして槍をしまい、特大剣を両手で握り巨人の攻撃に備える。巨人が攻撃のモーションをとった瞬間に肉薄し渾身の力を振り絞って特大剣を大剣にぶつける。大木のような剣と針のような剣が交差し、一瞬拮抗する。しかし全力の加速で上乗せされた力は均衡を崩し巨人を押し倒す。
倒れた巨人の頭に走り寄りながら、特大剣をしまい、槍と刀を装備する。巨人の剣は手から離れ切り株に刺さっているのを確認してから、顔めがけて槍と刀で攻撃する。それぞれ十数回程振るうと巨人が動き出そうとするので最後の一撃を繰り出す。
パキィィィィン
その一撃とともに両手の武器が折れて砕け散る。
そんな!槍ならまだしも刀なんて今初めて使ったのに折れるなんて!だめ、動揺するのは後。今は状況の確認をしなきゃ。
巨人は既に体勢を立て直し大剣を抜こうとしている。HPは1割以上減っている。このまま順調に事を運べればあと10回程パリィをすれば確実に倒せる。再度特大剣を装備し、巨人が距離を詰めるまでに残りの考えをまとめる。
初めて使った武器が簡単に壊れた。巨人に攻撃すると武器の耐久値が激減する?あの金属みたいな硬さが原因?残りの武器でHPを削り切れる?弓まで使えばギリギリか?だとするなら無駄に耐久値を減らすのは下策だ。パリィ直後以外の攻撃は控えるべき、か。
考えはまとまった。よし。反撃開始―――
「な、そんな!」
咄嗟に右に跳んで攻撃を回避する。しかし、避けきれず脇腹を深くえぐるように大剣がかすめて飛んでいく。巨人との距離はまだかなりある。
巨人は自分の武器である大剣を私に向かって投げつけたのだ。剣が飛んでくるなど想像もしてなかった。慌てて上質なポーションを飲みながら巨人の動きに注意していると、今度は刀をどこかから出し装備した。そして大剣の時とは移動だけを見ても全く違うモーションをしていた。
「まさか、HP減ると武器も動きも変わるの?また覚えなおさなきゃいけないの?。え、えぐい。」