桜蝶の初陣 ・・・ side:蝶華 桜夜
はじめに、
この物語のはじめのお話になるので、途中にこの『ハコニワ』の専門用語の説明が出ます。
ちょっと、見づらいかもしれませんが、ご了承ください。
「・・・今、なんて言いました?」
「何度も言わせないでください・・・もう『表』に出てもいいかと思いまして・・・。
今のあなたなら、出来ると思ったのですが・・・。
春イベントの目玉、『スプリングフラワーフェスティバル』のメインダンサーを頼みたいんです。
・・・『箱庭十八神』の『蟲神』さん♪」
-桜蝶の初陣-
「・・・というわけなんです。どうしましょう。」
ハァ・・・とため息をつきつつ机に伏せているこの少女。
彼女が本日の主人公、『蝶華 桜夜』
「・・・仕方ないじゃない。主の考えることはいつも分からないんだからさ。」
「うぅ・・・華蓮姉さぁ~ん。」
よしよしと桜夜の頭をなでながら、
(さて・・・主は何を考えているのやら・・・)
と悩むこの少女。
『草羅 華蓮』・・・桜夜とは同い年であり、同じチームである。
「・・・経験者であるオレや爽莱さんならともかく、一度もステージに上がった事もない桜夜をメインにするなんて・・・。」
そう、彼女にとってはこのステージが初舞台。
なのに、いきなりのメインダンサー。
(・・・これは、何か裏があるな・・・!)
「・・・踊りはオレが教えるからさ、頑張ってみようよ。」
「・・・うん。でも大丈夫かな?メインイベントだよ?」
彼女が今回踊ることになっているショー、『スプリングフラワーフェスティバル』は、パークの春イベントの中で最も盛り上がるショーのひとつ。
「春の訪れ」を祝い、たくさんの花々が舞う中、共に舞い踊る妖精たちの宴・・・というストーリーになっている。
「・・・ストーリーからしたら、メインはオレか爽莱さんなんだけどなぁ・・・。」
「そうですよね!」バンッ!
「うわ!!いきなり、立ち上がるな!!」
そう、本来ならば華蓮か爽莱・・・『草神』か『妖神』のどちらかである。
・・・おっと、その前にひとつ説明しよう。
先ほどから出てくる、『蟲神』『草神』『妖神』。
これらは、『箱庭十八神』と呼ばれるキャストたちの通り名である。
全18人で構成される十八神は、キャストの中で飛びぬけて能力が高く、キャストとしても・・・そして『種族』としても上位の者たちのことである。
まぁ、『種族』の話はのちのちするとして・・・。
その『種族』ごとに最も能力の高い者・・・例えば『蟲神』は蟲の一族の中で最も能力を持つものが選ばれる・・・という感じで決められている。
なお、『神』を決めるのも主であり、ある日突然指名されたり、降ろされたりする・・・らしい。
ちなみに、桜夜は『十八神』加入が比較的新しいほうに分類される。
まぁ、『表』に出なかったのは、ほかにも理由があるのだが・・・。
「・・・というわけです。」
「なるほど・・・って誰に言ってるのwww」
ふふwwwと笑いつつも、どうしたらいいかと悩む桜夜。
彼女に全く知識がないわけではない。
インパ(キャストとしてではなく、お客さんとしてパークに入ること)の時にパレードやショーは何度か見ている。もちろん、『スプリングフラワーフェスティバル』も・・・。
・・・一応一通りの踊りは知っている。
でも、彼女の不安は『そこ』ではなかった。
・・・問題は、彼女の『髪色』にある。
「・・・それは仕方ないでしょ?『色髪』なんてわんさかいるし・・・パーク内だけどwww」
じっと、自分の髪を見つめる桜夜に華蓮が言う。
桜夜の髪は名の通り『桜色』をしている。
この世界で『色髪』は「憧れ」であり、「脅威」であり・・・とにかく珍しいのである。
パーク内・・・キャストの中には彼女以外にも『色髪』はわんさかいるのだが・・・
人によっては「呪われている」といって『色髪』を嫌う者もいる。
なお、華蓮と、先ほどから出てきている爽莱は茶髪。『色髪』ではない。
「・・・でも・・・。」
自身の髪をなでながらうつむく桜夜。
「・・・だからこそなのかな?」
華蓮が彼女の頭をなでながら言う。
「ほら、春といえばやっぱり桜じゃない?だからこそ『桜髪』の桜夜を選んだんじゃない?」
花々と共に舞う『桜髪』の少女。
それを主は見たいんじゃないか?そう華蓮は思ったのだ。
「・・・そう・・・なのかな?」
「きっとそうだよ!だから・・・頑張ろう?」
「・・・!!うん!!」
桜夜の目に、先ほどの迷いはなかった。
その後、ダンサーたちも協力して練習が始まった。
なにせ見ただけですぐには踊れない。
それに、ショーは団体で踊る。
みんなと息を合わせることが大切だ。
「・・・桜夜・・・早いなぁ・・・。」
桜夜は今回が、初ダンサー・・・のはずなのに飲み込みが早い。
もう、周りのダンサーたちについていくことが出来ている。
「生まれかな?・・・確か彼女・・・。」
練習が終わり、休憩している桜夜。そこへ・・・
「お疲れ様、桜夜お姉ちゃん!」
「うわ!真依さん!」
いきなり駆け寄ってきて、飛びついてきたこの少女。
彼女は『雪白 真依』・・・華蓮の後輩であり、桜夜のことを「お姉ちゃん」と呼び、とっても慕ってくれている女の子。
今回のダンサーの一人でもある。
ちなみに、飛びつくのはいつもの癖なので気にしないでほしい。
「・・・疲れてない、大丈夫?主役決まってからすぐ本番でしょ?」
そう、本番は明日。
初ステージだというのにひどい話である。
「大丈夫だよ?真依さんこそ疲れてない?」
「大丈夫!この通り!」
と言いつつ、その場をくるくると回り始めた。
ステージ用の水色のワンピースがひらひらと舞う。
「ふふwwwそれならよかった。」
桜夜も負けてられないなと思った。
なにせ、主役なのだ。
不安もいっぱいあるけれど、やると決めたんだ。
それならば、『最高のパフォーマンス』をしなければ・・・。
「・・・あ。そうだ!」
桜夜は何か思いついたようで、真依の肩をトントンとたたいて言った。
「真依さん・・・。お願いがあるんですけど・・・。」
そして、ショー当日。
ステージであるパークの中心の大きな城、「ドリームキャッスル』前のステージには、たくさんの人がショーを見るために集まっていた。
「・・・人が・・・いっぱいだよぉ・・・。」
初めてステージ裏から見る観客におどおどする桜夜。
「・・・何?緊張してるの?」
「だってぇ・・・魅妖さん・・・。」
彼女は『闇夜 魅妖』・・・『箱庭十八神』の一人、『悪神』の通り名を持つ無口な女性。でも、優しい人。
今の言葉も、淡白に聞こえるが、本気で心配しているらしい。
・・・本来ならば『悪神』は『スプリングフラワーフェスティバル』には出演しない。
むしろ、彼女の専門は別分野で、舞台に立つことすら珍しい。
ただし、今回は・・・
「大丈夫大丈夫!私たちがついてるんだしさ!気楽に行こう!」
「茜音さんwww」
魅妖に加え、『闘神』の『討狐 茜音』・・・見ての通りムードメーカーの彼女を加え、『箱庭十八神』女子組総揃いのステージとなる。
なにせ、今回初舞台の桜夜がメインダンサーなのだ。
これくらいサポートがついていないと不安だろう?
といって、一緒にステージに立ってくれることになったのだ。
まぁ、それはそれで緊張するのだが・・・。
「・・・花?」
ふと、桜夜の周りに桃色の花びらが舞う。
「・・・少しは落ち着きましたか?」
「「「爽莱さん!!」」」
花びらの正体は、本来主役であったはずの人、『妖風 爽莱』・・・『妖神』でとても心優しい女性。
この花びらは爽莱の『種族』である妖精が使う『魔法』のひとつ、『癒しの風』
名の通り、心を癒す香りを花びらと共に風に乗せ、人を癒す『魔法』である。
「・・・大丈夫です!ありがとうございます。」
「よかった!」
お客さんを癒すことで有名な優しい笑顔が場を和ます。
「・・・では、行きましょうか?」
爽莱の合図で全員が立ち上がる。
「・・・皆さん、いろいろ大変かと思いますが、お願いします。」
桜夜が深々と頭を下げる。
「ほれ!主役がそんなことしない!」
そんな彼女の背中を軽くバシッとたたく華蓮。
彼女もダンサーとして一緒に踊るのだ。
「・・・後悔はないんでしょ?」
「・・・うん!」
さぁ、ついに・・・始まる・・・彼らの『舞台』が・・・。
ところ変わってここは、舞台である『ドリームキャッスル』前ステージの観客席。
「姉さん・・・まだかな?」
わくわくしながらステージを見つめる白いフードの少年。
彼は『地擁 狗隠』・・・『地神』の通り名を持つ癒し系少年。桜夜・華蓮のチームメンバーである。
本来ならば、こんなところにいるはずはないのだが・・・なぜ、こんなところにいるのかというと?
「おいおい、はしゃぐなよ、くぅ。目立つだろ?」
「ごめぇん、愛流くん。楽しみで楽しみで・・・。」
彼、相棒で幼馴染の『陽光 愛流』と共に休暇をもらい、わざわざお客さんとして見に来たのである。
ちなみに、白フードなのは、彼もまた、『黄緑色』の髪・・・『色髪』だからである。
もっと言うと、相棒の愛流もまた、『藍色』の『色髪』で、黒いフードをかぶっている。
はたから見たら不審者であるwww
しかし、フードをかぶっているお客さんは意外にも多く、怪しまれないのである。
そして、狗隠の手には一台のビデオカメラ(しかもお高めのやつ)。
これは、今日どうしても仕事が入ってしまったほかのメンバーに
「狗隠さん、お願いします!」
「お母さん(華蓮)とお姉さん(桜夜)の踊り撮ってきて!」
・・・とほぼ強制的に持たされたものである。
「・・・僕、カメラの技術とかないんだけど・・・。」
うんうん悩んでいると横から手が・・・
「・・・俺が撮ろうか?」
愛流の専門分野は『撮影』。
PVやパーク内の映像、さらにはアトラクションの映像も担当したことがあるほどの実力者である。
「愛流くん・・・お願いしやぁ~す!」
スッとカメラを差し出す狗隠。
「おいおい、ほんとに撮るきなかったのかよwww」
「だって・・・愛流くんの方がうまいし・・・。」
「うぅ・・・そこまで言うなら撮ってやってもいいけど・・・。」
自慢げに言う愛流。
(これだから、愛流くんは扱いやすいんだよなぁwww)
そんな会話(という茶番劇)を繰り広げていると・・・。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。まもなく、『スプリングフラワーフェスティバル』が開始します。その前に、注意点があります。・・・」
「・・・。始まるね!」
「おう、カメラ構えとこう。」
アナウンスが終わり、あとはショーが始まるのを待つだけ。
例年通りであれば、この後花びらが舞い、ステージからダンサーたちが出てきて踊るはず。
・・・しかし、降って来たものは花びらではなかった。
「・・・雪?」
そう、春には程遠い、雪である。
「なんだ。故障か?」
「おい!どうなってるんだ!」
他の観客もざわざわしている。
挙句の果てに、文句を言い出すお客さんまで出てきた。
「なんだ!今回のステージは!」
でも、狗隠と愛流は動じなかった。
「・・・くぅ。これって・・・。」
「・・・ふふwww姉さんだねwww」
そう、分かっていたのだ。
これは『仕組まれたことである』と。
おそらく、観客の反応も予想通りだろう。
それを知ってて、わざわざ『雪』にしたのだ。
「さすがだなぁ・・・姉さんは。」
そうつぶやいた時であった。
ブワッっという突風が吹いてきた。
これも、知っている。『あの人』のだ。
そして、その風に乗る雪と共に舞うのは、
「青色の・・・『蝶』?」
青、水色、白。これまた『冬』を連想させるような寒色の『蝶』たちが空へと飛び立つ。
雪をまといながら、太陽に向かって、上へ、上へと上っていく。
そして!
太陽に集まった『それ』は一斉に弾けた。
そして、さっきまで雪だった『それ』は花びらへと変わる。
そして、太陽を背に一人の『妖精』が飛んでいた。
「・・・桜の『妖精』?」
「いや、違うよ。」
つぶやいた観客の一人に、狗隠が言った。
「あれは・・・『蝶』だよ。」
そう、飛んでいたのは『蝶』。
(あぁ、やっぱり綺麗だな。僕らの『姉さん』は・・・。)
桃色の蝶の羽を生やし、鮮やかに飛ぶ、桜夜の姿だった。
そして、その背後から、次々と『妖精』が・・・いや、
背に『蝶』をつけたダンサーたちが観客の上空を飛んでいく。
流れるショーの曲に合わせて、花びらをまとわせながらくるくると舞う。
それだけではない。
先ほどまで寒色だった蝶たちが、ピンク、赤、黄色などの春色に変わり、共に飛んでいるのだ。
その姿はまさに、ストーリーにある、『妖精たちの宴』そのものであった。
そして、曲の終盤になると次々とダンサーたちがステージに降り立っていく。
「・・・すごい・・・。」
「なんだ、このステージ・・・。」
さっきまで、文句を言っていた観客も驚いている。
それもそのはず、今までダンサーがステージ以外で踊るということがなかったのだ。
そして、空を飛ぶということも。
「・・・思ってたクオリティのはるか上を行ったなwww」
「・・・もう、さすがとしか言えないwww」
「ただ、花びらを舞わせるだけじゃつまんないと思うんですよ?」
練習中、ふと桜夜がつぶやいた。
「・・・というと?」
「まず、雪を降らせて、『冬』にする。」
そこから、『雪』を『花』に変え、『春の訪れ』を表現するというのだ。
「・・・でも、どうやって?」
「まず、真依さんが『雪』をステージに降らせる。その後、僕が蝶を飛ばしてその雪を上に上げる。その後、ちょうど太陽のあるところで・・・。」
「・・・あーあ、また始まったwww」
笑いながら後ろで見守る華蓮。
「またって?」
「ん?あの子、『発想力』と『想像力』、おまけに『好奇心』がすごくてね、こういうのやりたい!って思ったらすぐやろうとするの。」
まさか、こんな形で出るとはね、と笑いながら言う華蓮。
その後、ダンサー総勢、さらに『裏キャスト』も加えての『新体制』の踊りの練習が行われた。
大勢の『キャスト』を巻き込んでの『新しい』舞台。
この、新しい『舞台』を作ったのは・・・彼女なのである。
「すごいね!桜夜お姉ちゃんは!」
ステージに舞台を変え、踊りの一部で両手をつなぎ、くるくると回りながら真依は言う。
「ふふwwwこれくらいやらないとなって思いましてwww」
桜夜は妙に誇らしげだった。
初舞台・・・だからこそ成功させたい。
でも、普通に『シナリオ』通りやるのはつまらない。
だからこそ、自分だから出来るアレンジを加えたのだ。
ダンサーたちを飛ばしていた『蝶』
実は、すべて桜夜が使役する蝶たちなのである。
『蝶一族』は他にもいるが、あれだけのたくさんの蝶を一斉に使役することが出来るのは、『蟲神』である桜夜くらいなのである。
つまり、観客の上を飛び回るという業が出来たのは、
桜夜がいなければ実現できなかったのである。
「さぁ、フィナーレといきましょうか?」
突然、桜夜がステージ前へと走っていく。
「ちょっと!桜夜!?」
これは、練習の時なかった動作。
つまり、彼女はこの期に置いてまたなにかやらかす気である。
それはまずいと思い、手を伸ばす華蓮。
しかし、彼女はその手を止めた。
「・・・桜?」
桜夜と共に、桜が舞っていたのである。
そして、それをまとうかのように、くるくると踊りだす。
そして、彼女は口を開いた。
「・・・もぅ、いつ練習したのwww」
口から出たのは『歌』。本来ならば、このショーでは歌わないのであるが、この曲には『歌詞』が存在する。
本来、それを知っているのはそれを歌う『歌い手』のみであるはず。
それを今、彼女が歌っているのだ。
そして、その歌声もまた、どこで身に付けてきたのだろうか?
その歌声は、まるで風のようで。
それに合わせて桜が・・・そして、桃色の蝶が飛び回る。
その中を舞う桜夜の姿は華やかで、綺麗だった。
「・・・綺麗な歌声・・・。」
観客もうっとりしている。
「あれが・・・新しい『蟲神』・・・とんでもないのが来たな。」
誰かがぼそりと呟いた。
最後は他のダンサーたちも加わり、ショーは終わりを迎えた。
(・・・どう・・・かな?)
心配そうに観客を見つめる桜夜。
それに気づいた狗隠と愛流が拍手しようとした時、
「ブラボォー!」
その声と共に沸きあがるほどの拍手。
さらに・・・
「あの・・・もう一曲踊っていただけたりとかは・・・。」
「・・・え?」
アンコールの要望まで来るほどの大盛況。
※パーク内ではステージショーのみ、一回だけアンコールを受け付けることが出来るという規定がある。
(どうしよう・・・アンコールまでもらえるなんて・・・。)
予想外・・・いや、予想以上の反響に戸惑う桜夜。
アンコールをもらえるとは予想していなかったため、何も用意していない。
観客は「アンコール」コールでいっぱいだ。
(どうしよう・・・。)
そう思っていた時だった。
「・・・羽?」
空から羽が・・・『紅い』羽が落ちてきたのである。
このパーク内で、『紅い翼』を持っているのは数少ない。
ましてや、ショー中に乱入してくる勇者なんて一人しか知らない。
「・・・焔螺さん?」
上を眺めながら、桜夜が言った。
「やぁ、困っているみたいだね?手を貸そうか?」
『炎舞 焔螺』・・・『炎神』であり、十八神のリーダー。
そして、主と同等の力を持つ存在・・・といえばそうだし、そうでもない。
ちょっぴり腹黒な頼れるお兄さんである。
「・・・さてさて、それじゃあ・・・久々に『皆』で踊っちゃう?」
「「「「「え!?」」」」」
彼の言う『皆』というのは『箱庭十八神』全員のことである。
「え?マジかよ・・・。」
観客も突然の乱入にざわざわしている。
それもそのはず。
舞台に『箱庭十八神』全員がそろうことは極めて稀で、
年に一回あるかないかで、
見れた人は幸せになれるという迷信があるほど、珍しいことなのである。
・・・理由としては、ダンサーの少なさ。
『箱庭十八神』内でもダンサーは半数以下であり、ほとんどが『裏キャスト』と呼ばれる、舞台裏でいろいろ動く人たちばかりなのである。
「・・・だって、『皆』いるし?」
おーいっといって手を振る焔螺。
その目線の先にいたのは・・・。
「・・・弟たち?」
今日は別のところで仕事しているはずのほかのメンバーの姿が・・・。
そして、
「もぉー!人使い荒いなぁ・・・うちのリーダーは。」
焔螺のチームのメンバーも・・・。
あっ、ココで補足入りまぁす!
『箱庭十八神』以外にも『チーム』というものが存在しており、
十八神はそのうちの2チームで構成されております。
これは、十八神の世代交代前に組んでいたチームメンバーが運よく『神』に選ばれたため起きた『奇跡』である。
現在も、パーク内ではチームごとに動いていることが多い。
ちなみに、通称『年下組』と呼ばれる『白月光』のリーダーが桜夜。通称『年上組』と呼ばれる『紅陽光』のリーダーが焔螺である。
さらに、桜夜は華蓮以外のメンバーのことをまとめて呼ぶ時は『弟たち』と呼んでいます。(これは、男子メンバー全員が年下であるためである。)
補足、終わり!
ということで、なぜか全員集合してしまっていたという『奇跡』が・・・。
「あぁ・・・。そういうことかぁ・・・。」
すっと裏から大きい影が近づいてきた。
「・・・みたいですよ?翠ちゃん。」
翠ちゃんこと『呼鳥 翠都』がどおりで・・・という顔で表に出る。
彼は、『飛神』であり、チームとしては『紅陽光』に所属している。
ショー中に突風を起こしたのは彼である。
実はその時、一応チームメンバーなので力を貸してもらってもいいかと焔螺さんに頼んだ時に、
「いいよいいよ!ついでに心配だろうから女子組に一緒に踊ってもらうように頼んでおこうか?」
と快諾されたのだ。
そして、その時に彼はぼそりと
「どうせ、皆集まる羽目になるしさwww手間が省けるwww」
と言っていたのだ。
(こういうことかぁwww)
見事に策略にはまったわけだwww
まぁ、でも・・・。
(・・・『箱庭十八神』全員の舞台!)
年に一度あるかないかの夢の共演の瞬間に、自分がいるということ。
そして、
「まさか!こんなレアなものが見られるなんて・・・。」
「あぁ・・・生きててよかった。」
「カメラカメラ・・・。」
観客さんも大はしゃぎである。
「さぁさぁ、皆、集合ー!」
どんどん舞台に上がる十八神たち。
「・・・行ってくるわ。愛流くん。」
「頑張ってこい!」
もちろん、観客にまぎれてた狗隠も舞台へ上がる。
「はい、皆さん、改めまして・・・アンコールは『箱庭十八神』全員で踊りまぁす!」
楽しそうに話す焔螺。くるっとメンバーの方を向く。
「・・・皆、『課題曲』練習してきた?」
「「「「「「「「「「「「「「「「「あ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」
皆、思い当たることがあった。
実は、3日前・・・。
「これ、主から。踊りマスターしておいてね・・・3日以内にお願いね♪だと。」
と、とある曲のふりつけを渡されていたのだ。
・・・つまり、桜夜が初舞台でメインダンサーになったのも、
焔螺がメンバーの力を借りることを快諾したのも、
ステージの周りに十八神全員が揃っていたのも・・・
「・・・すべては、主と焔螺さんの計画だったってことですかwww」
「ふふwwwそのおかげで、大舞台ができるけどね!」
楽しそうに話す焔螺。
普通なら怒るところだが、焔螺は常習犯、皆文句は言わない。
むしろ、悪いことでなければ大歓迎である。
「・・・さぁ、踊ろう!桜夜!」
「・・・!はい!」
全員が定位置につく。
そして、それを待っていたかのように曲が流れる。
この曲は『箱庭十八神』の伝統曲であり、知る人も少ない隠れた名曲。
そして、十八神の中でも完璧に踊れる者は数少ない。
・・・そのせいか、はたまた3日しか練習できていないせいか、ちょっとぎこちなかったけど、
息はぴったりな『神々の舞』が、ステージで繰り広げられる。
それぞれの能力をフルに生かした最高の舞台が、
ココに誕生し、
そして、幕を閉じた。
こうして、『スプリングフラワーフェスティバル』が終わった。
「うぅ~・・・焔螺さんのばかぁ。」
ショーの後、十八神全員は十八神のみが入れるとされている『ドリームキャッスル』内にある部屋、
『神の間』に集まっていた。
桜夜は・・・また机に伏せていた。
・・・まさか、初舞台があんなにハードで(ハードにしたのは本人だがwww)・・・
しかも、アンコールまであって、その曲もかなり激しい踊りだとは思っても見なかった。
「・・・初舞台で2曲・・・しかも両方ハードな踊りのやつ・・・。」
「ないわぁ・・・。」
女子組は全員2曲踊っているのでへとへとである。
「「「「全部、焔螺さんのせいだぁ!」」」」
「・・・焔螺・・・殺す・・・。」
魅妖が自身の剣を抜く。
「うわぁ!魅妖!?剣を抜くな!振り回すな!こっち来るなぁ!」
魅妖が焔螺を追っかけている。(追っかける体力は残っているようである。)
ちなみに、いつものことなので気にしないでほしいwww
「む、無理・・・吐きそう・・・。」
「仁羅さぁ~ん!」
『鉄帯 仁羅』・・・『鋼神』の彼をはじめ、年下組は全滅。
なにせ、『表』に出たことがほとんどない子が多いのである。
なのにあんなハードなのを踊ったら死にますわwww
「ゲホッ・・・ゴボッ!」
「藍玖さぁ~ん!」
身体の弱い彼・・・『龍神』の『渓鱗 藍玖』に関しては吐血しだしている始末・・・。
観客を楽しませるためとはいえ、大惨事である。
「・・・焔螺・・・。」
「悪かった!悪かったって!」
魅妖は無言で焔螺を壁に追い詰めていた。(もはや壁ドン間近www)
「よぉし!焔螺さん、歯ぁ食いしばれぇ!」
「うわぁ!厚弘さぁ~ん!」
『雷神』の『雷伽 厚弘』が、電気片手に焔螺に迫る。
「や、やめ・・・ぎゃぁぁぁぁぁ!」
この後、焔螺さんを見たものは・・・あっ、次の日笑顔で現れたのですが・・・。
そして、他の十八神たちには一週間の休暇が与えられたそうです。
その話は、今度暇な時にでも話しましょうか?
ということで、『スプリングフラワーフェスティバル』は波乱でしたが、大成功で終わりましたとさ。
チャンチャン♪
End
~おまけ~
-数日後-
「くぅ、こないだ撮ったやつどうする?」
「あっ!忘れてた!見よう見よう!」
「よし、じゃあ、再生・・・あ、撮れてない。」
「え?」
「録画ボタン、押し忘れてたwww」
「愛流くぅ~ん!」
「てへぺろ♪」
本当に、おしまい。
・・・えっとぉ、何を書いたらいいんでしょうか?
初めまして、『蟲神』の蝶華 桜夜です。
初陣でこんなことになってしまって・・・申し訳ありませんでした。
まさか、焔螺さんがあんなこと仕掛けていたとは・・・。
・・・実は知ってたんですけどねwww
今、「え?」って思いました?
皆で何かするって楽しいじゃありませんか?僕だけかな?
これから、どんどんショーとかパレードに出ると思いますが、
応援してくれると嬉しいです。
もちろん、他の子たちも・・・ですよ?
以上、桜夜でした。
どーも、作者です。
『ハコニワ』いかがでしたでしょうか?
ホームビデオ風な感じを目指してみました。日常風景的な感じで。
今回、『箱庭十八神』が出てきましたが、全員の名前はまだ出てきていません。
のちのち物語の中で明かされていくのでお楽しみに!
さらに、十八神以外の子も出てきました。
この『ハコニワ』にはたくさんの登場人物がいます。こちらも続々と出てくる予定なので楽しみに待っていてください。
最後に、まだ1話しか出していませんが、「この子のこんな話が見たい!」と言うのがあれば、コメントしてくれると嬉しいです。どんな話でもいいです。頑張って書きますwww
他にも、意見・要望・感想なども受け付けております。
長々となってしまいましたが、こんな駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
楽しんでいただけたなら幸いです。
これからもマイペースに投稿していきますが、次回も見ていただけると嬉しいです。
ページをめくっていただき、ありがとうございました。
ぺぽぺぽ




