それぞれのコイバナ
ワイワイと賑やかな声が聞こえる。
今日は弦楽部の友達で集まって、みんなで一晩泊まりで遊ぶ、というとても楽しみにしていた日だ。
…日だった、はずなのだが。
「「それで!みうは〜?」」
「えっ?っうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
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こんな事態になったのは、さかのぼること1時間前。
「コイバナはやっぱりお泊りの定番だよねっ!」
「「だっよねだよね〜!」」
怪しい笑顔をしたみんながこちらを振り返る。
満面の笑みを崩さないまま膝立ちで歩み寄ってきて、強制的に布団の上に座らされた。
「もう10時だし、電気消しちゃうよーっ!」
いつもはみんなと比べると少しおとなしい子も、今日は人一倍テンションが高かったりする。
お泊まり会はそういうものだ。
「じゃぁ…まぁ、まずはお楽しみはあとに、時計まわりで順番に聞いてこー!」
「私!?…わかったよぅ…」
「あー、次かー!」
「「はい!なるみ、話してー!」」
みんなの言葉でこの部屋。この空間に華が咲く。
「じゃぁ…私ね。
私は、うーん。まずはタイプかな…?
お人好しで、優しくてちょっとMな人。」
「で、好きなのは?」
「………………………え、これ言わなきゃ駄…」
「「駄目だよ!」」
「………なつめくんだよっ!!」
「「「「おぉー」」」
「じゃあ次いっちゃおー!」
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この1時間を経て、今に至る。
何段にも積まれた枕の上に座らされ、マイクに見立てられたテレビのリモコンを突きつけられ、5人の友達から好奇の視線を向けられている。
「っえ、いや私ないからそーゆーの!ね?ほらみんなのきこうよ!」
「いやぁ…その焦りようってぇ…ほんとぉぅにぃ?」
「ちょいお前声いやらし〜!」
ひとまず話は逸れたようなので、さりげなくトイレを借りようとする。
「あ!逃げちゃダメだよ主役さん!」
「そうだよ今日はその話を聞くためにー!」
……駄目だった。そりゃそうか。
最近壊れかけている自分の心の声がもう嫌になる。
そんな時、特徴的な着信音が鳴り出した。
「…あ、私の…」
「おおっ?」
今日はなんてタイミングが悪いのだろう。こんな時になった携帯の画面に表示された名前は「あつき」
ーーー着信拒否をしてやりたいが、電話に出ないのはもっと嫌。
「ほらでて!」
あやが言ったのとほぼ同時に、私は電話をとっていた。