今日だけは…恋より、友情を。
「あ…」
車両の内と外。
お互い、何かを言いかけた気がした。
本気とも、冗談ともとれないようなこの微妙な空気。
そのまま、無慈悲なドアは私の目の前で音をたててしまっていったのだった。
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「あー、もう。」
私って、先輩なんだよね…
先輩、なのかな…
先輩っていっても、いいの、かな…
私って…
『謝る 方法 後輩』
とりあえず検索画面を開く。
もう完全にスマホ世代となった私は、何かある度ネットに頼る癖がもう、染み付いてしまっている。
無数のサイトを網羅して頭を抱えていた頃、ちょうど玄関の方でノックの音がした。
別にチャイムがあるからそれを押せばいい、とも思ったが、その低く重く響くノックの音は、私の心に対する皮肉のようにも感じられて、なんだか腹が立った。
「…あ、で、誰なんだろ…はーい!空いてますけどー!…あ、空いてたら駄目か…はは…」
もうキャラが崩壊しかけてボケているんだかツッコミをしているんだかよくわからなくなってきている私だが、頑張っていつもの顔を作りドアを開ける。
「て、へ?あ、え?」
唐突に目の前にあった顔に反射でドアを閉める。
「えーと、まずは?」
もう一度ドアを開けてみる。
変わらず眩しい笑顔がそこにあった。
「あ、ごめん夜に…まぁドア閉められてもしょうがないって思ってたし、気にしてないから。」
「あ、ぅ…」
「そうそう、それで、今度の予定話し合うためにみんなで連絡先交換したんだけど、そん時お前いなかったからさ…明日学校ないから早めに交換しないとと思って…
って、それでもこんな時間はないか!」
私が言葉を挟む隙もない程彼は早口で事情を説明した。
どうやら、こんな時間に来たことで私が怒っているとでも勘違いをしているようだ。
…と、それより…彼はなんて…?
『連絡先交換…』…!?
「あ、うんスマホとって来るね!ちょっと待っててね!ごめんね!」
赤くなり始めた頬を見られないように、そそくさとスマホを取りに部屋に戻った私だった。
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「はい。」
「…はい。できました。」
微妙な空気感のまま連絡先を交換して、試しにメールを送ってみた。
『届いてますか』
彼から送られてきたのはあまりに簡潔な文章。
いや、別に目の前にいるんだからそれはそうか。
「…あ、じゃぁ、ごめんね!夜に!じゃあまた!」
「…また、ね。」
パタン、とドアが閉じられて。
やっちゃったな、とその場にへたり込む。
何回か声が裏返っちゃったし
最初は一回ドア閉めちゃったし
完全に…いつもの私じゃなかったし。
「あぁあ」
2つの悩みに押しつぶされそうになる。
今日の、帰り。
今日の、夜。
起きてると、いてもたってもいられなくなってしまうので、
『おやすみ』
と一言送って、布団にもぐった。
次は恋愛方面に戻ります!
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