表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

麗らかな…

手放した秋、手にした春

「まったくなんという事をしでかしたんだ!責任はどう取るつもりだ!博之、自分が何をしたか分かっているのか!?」


 次の瞬間、頰に走る鈍い痛み。口の中に広がる鉄の味。

 怒り狂う父親。

 泣きわめく母親。


「海夏には堕ろしてもらうつもり…。」


 再び頰に走る鈍い痛み。


「そういう訳にいくと思っているのか!?もうあちらのご両親はその気になっているんだぞ!?」


 昔の女が妊娠した。

 幼馴染みで10年程前に付き合っていた女。

 半年前に再開し、お互い割り切って時々遊んだだけ。

 何度かする事はしたが、避妊はしていた。


 マジであり得ない。

 俺には、大切な婚約者がいるのだ。






 ***


 婚約者の八重山 麗(やえやま うらら)とは付き合って9年。

 2年前に俺の転勤が決まったのだが、それまでは1年同棲をしていた。

 恋人としては少し面白味に欠ける相手だったが、結婚相手としては理想的だった。


 美人だし、家事全般得意だったし、結構気が利くし、素直で明るく、束縛もしない。

 今までも、ちょこちょこ女遊びはしてきたが、1度もバレていない。

 何度遊んでも、麗以上に惹かれる女性など居らず、必ず彼女の元へ戻った。

 彼女の居心地の良さにすっかり慣れてしまった俺にとって、彼女以外と結婚するなど考えられなかった。


 元彼女の海夏うみかにしたってそうだ。

 麗という婚約者の存在を明かした上で、身体を重ねるだけの都合の良い女。

 お互いそれで納得していた筈だった。


 なのに、3日前、海夏は俺に妊娠したので責任を取って欲しいと言い出した。

 俺は責任を取って、堕胎の費用を出して、必要があれば慰謝料も払うつもりだった。


 しかし彼女は俺の両親と自分の両親に俺の子を妊娠している事を明かした。


 海夏は親に、俺と結婚をすると言った。麗との事を知らなかった海夏の両親は手放しで喜んだそうだ。

 このご時世、多少順番が逆でも良いらしい。




 しかし、俺の両親はそうではなかった。


 両親、特に母は麗の事を凄く気に入って娘のように扱っていたし、付き合いも長く、結納まで済ませている。

 それだけでなく、麗は俺との結婚のため、仕事も辞め、住んでいた家も次に住む人が決まっているので引き払う準備をしている。


 俺の両親は悩みに悩んだ末、麗との婚約は白紙に戻して、海夏と結婚しろ、そう決断を下した。







 ***


 麗の家に行くと、麗はまさに引越しの準備をしていた。

 散らかっているけれど、と言って俺と両親を家に招き入れた麗。麗が渋るのも仕方ないだろう。

 部屋の隅はダンボールが積まれ、たくさんのゴミ袋には不用品が詰められていた。

 それでも、整然とした印象を受けるのは、やはり麗は家事能力が高いということなのだろう。


 やはり、結婚するなら麗がいい。

 麗じゃなくてはダメだ。


 俺は、泣いてすがってでも麗と結婚するつもりだった。




「博之との結婚の話をなかった事にして欲しい…。」


 土下座をして謝る父親と無理やり同じ姿勢を取らされる俺。


 父親の言葉を聞いた麗の顔がどんどん青ざめ、麗はショックで倒れてしまった。

 麗はすぐに病院へ運ばれた。




 駆けつけた彼女の家族へ、父親が大まかに事情を説明し、謝罪をした。

 俺は麗の父親にも殴られ、もう麗の前に姿を見せない事を約束させられた。


 今後の話し合いは、親同士で進め、俺は麗への弁解の機会も、謝罪する機会も与えられないまま別れさせられた。






 ***


 事の始まりは、麗との結婚を1年前に控えたある秋の日だった。


 何気なく、仕事帰りに1人、フラリと立ち寄った居酒屋で声をかけられた。


「あれ?博之?冬田 博之だよね?」


「…もしかして…海夏?」


 久しぶりに会う元彼女の海夏は面影こそ僅かに残っているものの、当時とはまるで別人だった。

 麗は10年経っても綺麗なまま、いや、寧ろ10年前よりも今の方が美しい。

 ふと、そんな事を考えてしまった。


 お互いの近況について語り、もちろん俺は麗との結婚の事も話した。


「その、彼女さんってどんな人?」


「美人で、結婚するには最高。」


「結婚するにはって事は、遊ぶならつまんないって事?」


「それは否定出来ない。」


 つい、本音が出てしまった。


 その日、随分と酒が入っていた事もあり、海夏と俺は一夜を明かした。




 その後も麗と会えない寂しさや、仕事のストレスを晴らすため、時々海夏と会っていた。完全に都合のいい女。そこに俺の気持ちは無い。


 付き合っていた当時は海夏が好きだった。

 しかし、海夏にフラれ、麗と付き合う様になると、なぜ海夏が好きだったのか理由が分からなかった。

 再会しても、それは同じ。

 俺が愛しているのは麗だけ。




 海夏とは麗が引っ越してくるまでの期限付きで関係を持つ約束だった。

 そして、その期限はすぐそこまで迫っていた。

 俺はきっぱり縁を切るつもりだった。




「博之…今日病院行ったんだ。」


 突然俺の部屋にやってきた海夏は、大切な話があると前置きして、そう言った。

 そして、白黒の写真を俺の目の前に摘んで見せた。


「妊娠してた…。責任取ってくれるよね?」


「ああ。費用は出す。幾らだ?」


「それはどういう意味?」


「堕ろしたいんだろ?まだ結婚する気も子供産む気もないって言ってたじゃん?」


 俺がそう言うと、海夏は逆上した。


「それは…博之に嫌われたくなかったからそう言っただけ!あたし、絶対産むんだから!」


 そのまま海夏は飛び出して行った。

 そして数日後、俺は両親に呼び出され、実家へ帰り、父親に殴られ、麗の元を訪れ、麗が倒れ、互いの両親によって別れさせられた次第である。






 ***


 麗が倒れた3日後、俺は予定通り麗と住む予定だった新築の賃貸マンションへ引っ越した。

 そこへ運びこまれる俺の荷物と、麗と2人で選んで購入した家具や家電。

 もうこのまま一人暮らしも良いかもしれない。

 贅沢さえしなければ、俺の収入だけでも十分暮らせる。


 しかし、周りがそうはさせてはくれなかった。


 すぐに、海夏が転がり込んできた。

 そして、婚姻届を出させられた。

 冬田 海夏……何とも微妙な名前だ。


 俺にこのまま独身を貫く権利は無かったらしい。結局のところ、自分で蒔いた種は自分で刈り取るしかないということなのだろう。

 俺は海夏を受け入れざるを得なかった。






 海夏とはあちらの両親の意向もあり、結納は無しにして、顔合わせの食事会だけをした。


 麗との結婚の話は、海夏の親も知らなかったし、俺の親戚にも秋に結婚する事は伝えていたが、麗の紹介はまだだったため、冬田家サイドではどうにか大騒ぎにならずに済んだ。


 大騒ぎにならずに済んだのはあくまで冬田家サイドの話で、八重山家ではきっと大変な事になっていただろう。

 麗の親戚には何度か会っているし、お姉さん夫婦と姪っ子とは頻繁に食事をしていた。




 そして、共通の友人…高校の時のクラスメイト達からは言うまでもなく非難の嵐だった。


 もともと、麗は高校時代、高嶺の花で男子の憧れだった。麗に惚れている奴なんて山ほどいた。

 付き合いはじめてすぐ、高校のクラスメイト達と集まった飲み会で、俺と麗が付き合っていることを友人達にカミングアウトした。

 その時点で、周りから嫉妬混じりのブーイングが起こったのに、式を半年前に控えて、浮気して婚約破棄した等言ったらどうなるかなんて目に見えていた。


 俺は、なるべく共通の友人に会わぬよう、連絡を取らぬよう、つまり彼らを極力避けて過ごした。


 しかし、麗の親友の貴子によって、あっという間に皆が知るところとなってしまった。

 地元に帰って、街でばったり友人に会えば軽蔑の眼差しで見られ、久しぶりに電話がかかってきたかと思えば責められた挙句に説教され、要件があってメールをすれば本題はスルーされて嫌味が返ってくる、そんな状況だった。


 GWだとか連休の度、飲みや遊びに誘われていたのに、婚約破棄の一件以降、誰も俺を誘ってくれはしなかった。

 当たり前だ。

 分かっていても辛かった。

 俺は麗だけでなく、友人達からも見放されてしまった。






 ***


 俺は海夏と式を挙げるつもりはなかったのだが、両家の両親の意向で挙げざるを得なくなってしまった。

 とは言え、流石に麗と式を挙げる予定だった式場で挙げるのには抵抗があったのでキャンセルをするつもりでいた。

 しかし、そこは人気で、海夏の憧れの式場だったらしく、海夏が「どうしてもそこで式を挙げたい、日取りだって安定期に入って気候も良いから都合がいい、それにその方が合理的だ」と熱心に言うのでキャンセルをせず、そこで挙げる事になった。


 不本意だったが、式場を探す手間も省けるし、キャンセル料もかからないし、合理的で良いじゃないかと必死で自分に言い聞かせた。


 事情を説明しに行くと、表面上は何事も無かったかの様に接してくれた担当のプランナーさんだったが、その後の打ち合わせでも、幾度となく冷ややかな視線を感じる。

 自分の身から出た錆だとは言え、辛かった。


 俺だって麗と結婚したい。

 これは不本意な結婚なんだ。

 俺に結婚相手を選ぶ権利などなかったのだ。




 そうこうしているうちにも、海夏の腹はどんどん大きくなり、胎児が腹の中で動いているのが触っても感じられる様になってきた。暇さえあれば、海夏は俺の手を取り、自身の腹部に押し付ける。

 俺の手に伝わる不思議な感覚。


「ほら、見て。博之に似てるよ?」


 胎児の顔の4D写真というものを見せられ、海夏はそれが俺に似ているのだという。


 俺の子供。

 俺は父親になる。


 正直なところ、嬉しくもなんともなかった。


 相手が麗だったら、そんな事は思わなかっただろう。

 毎日、我が子に話しかけ、子どもの名前をあーでもない、こーでもないと考えて、男の子だったら、一緒にキャッチボールしたいだの、女の子だったら、産まれる前から嫁にやりたくないだの言っていたんじゃないのだろうか。


 そんなことばかり考えていた。


 しかし、産むのは海夏。


 子供に罪はない。

 罪を犯したのは俺だ。


 もう、現状を受け入れるしかない。


 俺の妻は、麗ではなく、海夏なのだ…産まれてくるのも、俺と海夏の子供なのだ…。

 必死で自分に言い聞かせた。






 そんなある日、仕事から帰ると、海夏が嬉しそうな顔で小さな箱を持っていた。


「これ、見つけちゃった。」


 それを見た途端、俺は全身から血の気が引いていくのを感じた。


「これ、 "H to U"って、『博之から海夏へ』って事だよね?」


 海夏の意味ありげな笑顔がただただ恐ろしく、俺は何も言えなかった。


「すごく綺麗。それにサイズもあたしにぴったりだもん。あたしの為にあるんだよね?」


「海夏…今度の休みに…指輪…選びに行こう…」


「嫌。これがいいの。」


「でも、それは……」




 それは、麗の為に作ったもので、"U"は麗の"U"、海夏の"U"じゃない。

 触れられるのも嫌だった。

 受け取ってから、ずっと隠していたのに。


 麗の気配のない家で、それは唯一、麗を感じられるモノだった。

 麗との思い出の品はほとんど残っていない。


 ここに住む前、一人暮らしの部屋は、仮住まいという認識だったので、必要最低限の物しか置いていなかった。

 麗との思い出の品は、すべて麗の家。週末の度に麗の元へ帰っていたので仮住まいに置く必要がなかったのだ。

 PCさえあればそれで良かった。麗との写真が山ほどデータで保存されていたのだから。


 麗の家に置いていたものは、俺の両親が引き取り、いつの間にか処分されていた。


 PCに保存していた写真のデータも、知らないうちに海夏に消されていた。


 唯一、麗との結婚の形跡を色濃く残し、俺の手元に残るのは婚約指輪と結婚指輪。麗が指にはめる事はなかったが、思い出や思い入れが詰まっている。

 麗と俺がこだわって、色々なジュエリーショップを探し回った結果、オーダーメイドで作ってもらう事にして、やっと出来上がった。

 しかし出来上がった時、俺の隣に麗はいなかった。


 俺はその指輪を取り出しては、麗の事を考え、感傷に浸っていた。

 思い出されるのは、幸せそうな顔ばかり。




「でも、それは…って何?」


 恐ろしげな笑顔を崩す事なく海夏は俺に詰め寄る。


「それは…麗が…」


「だから、何?今更彼女にプレゼントするつもり?」


「いや…そういうわけじゃ…」


「じゃあしまっておくの?それじゃあ指輪が可哀想だよ。あたしが気に入ったんだからいいでしょ?"U"は海夏の"U"。別に後付けでも構わない。サイズだってぴったりなんだから…。それに、ここにまだあるって事は、あたしの為にあるようなものでしょう?」


「売るなり、処分して…新しい物を…」


「婚約指輪とか、結婚指輪なんて、売ったところで買った値段の10分の1の価値にしかならないんだよ?勿体無いよ。あたしはどうしても『これ』がいいの。……それとも、何?あたしがはめていたら何か不都合でもあるの?」


「………別にそういうわけでは…」


「じゃあ、いいじゃない。イニシャルだって、サイズだってぴったりなんだから、合理的でしょ?何よりあたしが気に入っているの。それで何も問題無いはずよ。……ねぇ、だから…婚約指輪はめて?」


 そう言って、指輪と左手を差し出した海夏。

 俺は、言われるがまま、左手の薬指に指輪をはめた。

 海夏は、ニヤリと満足気に笑う。


「結婚式で、指輪の交換するのも楽しみ。これ、重ねづけする前提で作られたデザインだよね?」




 今まで、仕事柄、様々な婚約指輪や結婚指輪を見てきた麗がこだわった指輪。

 白くて長くて美しい指に俺がはめてやる筈だった指輪。

 そう思うと、胸が痛んだ。


 でもこれでいいんだ。

 海夏の言う通り、こうするのが一番合理的なのだから。

 指輪の内側に刻まれたイニシャルは海夏の"U"。

 もう、今となっては麗の"U"であってはいけない。

 俺は再び、必死で自分に言い聞かせた。






 ***


 そして迎えた結婚式の日。

 料理から引き出物、演出に至るまで、海夏のやりたいようにしてもらって、俺は一切口を出さなかった。

 式の最中の記憶はほとんど残っていない。


 ひたすら愛想笑いを振りまいて、グラスに注がれるがまま酒を飲み、ネットから拾ってきたテキスト通りの挨拶文を読み上げ、おめでとうと言われるたび、頭を下げる。

 苦痛でしかなかった。


 披露宴中、何度も無意識で麗のドレス姿を思い浮かべてしまった。

 実際に俺の隣にいる海夏とはとても比べ物にはならない美しさ。


 麗が着るはずだったオーダーメイドのドレスは、代金の半額程を払ってキャンセルした。

 そのドレスは一体どうなってしまったのだろうか…。




 参列者の中に、俺の高校時代の友人は1人もいなかった。とても参列して祝ってくれなど言えなかった。

 参列してくれたのは大学時代の友人と、会社の同期や同僚。

 職場であまり恋愛関係の話をする事がなかったので、幸いにも、麗との事を知っているのは、特に仲の良かった同期の竹内だけだった。


 竹内は、転勤前、同じ職場の同じ部署で働く唯一の同期だった。仕事終わりや休日にはよく一緒に遊んでいた。

 結構図々しい奴で、麗と同棲していた頃、何度も飯を食いにやってきていたし、飲みすぎて泊まることもしばしば。麗ともすっかり仲良くなっていた。


 そんな竹内に、今回の事を隠せる筈もなく、根掘り葉掘り聞かれた俺は、言わなくていい事まですっかり洗いざらい喋ってしまっていた。

 それまで、愚痴や本音を話せる相手が俺にはいなかったのだ…。

 図々しくも、竹内は海夏と暮らす家にも1度遊びに来て、飯を食って行った。流石に飲みすぎてそのまま泊まることは無かったが、図々しさは相変わらずだった。




 挙式の数日後、海夏は実家へ帰って行った。

 里帰り出産というやつだ。

 仕事を理由に、俺は会いに行かなかった。出産には立ち会って欲しいと言われたので、間に合えば、とだけ返した。


 海夏がいない間、竹内が2度ほど来て泊まっていった。

 そこで、彼なりの海夏の評価を語られたわけだが、散々だった。


「まず、何より飯が不味い。なんでカレーなのに不味いの?カレールー使ってるのに不味いとか理解できないんだけど?」


 海夏の料理は食えない程では無いものの、お世辞にも美味しいとはとても言えなかった。


「麗ちゃんだったら、ビールのグラスはキンキンに冷やしててくれるじゃん?しかも美味しく注いでくれるし。料理の品数も多いし、彩りも綺麗だし、何より美味いんだよね。あーあ、麗ちゃんの料理が食べたいなぁ…。」


 要するに、麗が基準になっているので余計そう感じるらしい。


「博之の嫁、麗ちゃんより良いところってどこ?巨乳なとこ?それと夜の生活?麗ちゃんは淡白でつまらないって昔博之言ってたよな?まぁ、俺的には巨乳よりも麗ちゃんくらいの方がバランス取れてて好きだけど。」


 どう頑張っても、それ以外思いつかなかった。

 いや、むしろ今となってはそれすら麗よりも良い点だとは到底思えない俺がいた。

 妊婦を抱く気にはなれないのに、安定期だから平気だと強請られるのは苦痛だった。


「だいたいさ、麗ちゃんみたいな彼女…っていうか婚約者がいるのに浮気するとかあり得ないよね。麗ちゃん以上の美人だったらまぁ分からなくもないけどさ、どう考えてもそうじゃないし。飯は不味いし…気は利かないし…。結局のところ麗ちゃんと別れさせられたのは自業自得だろ?まぁ、父親になるんだし、麗ちゃんの事は諦めて、カエルちゃんと産まれてくる息子を愛してあげろよ?」


 酒が回ってくると、竹内は言いたい放題だった。

 海夏がカエルに似ているとカエルちゃん呼ばわりだ。確かに似ているが、流石にそれは失礼だろう。


 分かりきったことを他人の口から聞くのは不快だった。

 しかし、それは事実。

 俺は息子を愛せるのだろうか?






 ***


 海夏の陣痛は、予定日の3日後に始まった。

 連絡をもらったのは仕事中。

 急ぎの仕事だけ仕上げ、残りは同僚にお願いして定時に上がらせてもらい、新幹線へ乗って病院へ向かった。


 初産は時間がかかるらしく、俺が病院に着いてもまだすぐには産まれる気配はないそうだった。

 痛みに苦しむ姿を見るのは気分の良いものでは無かった。こんな事なら、仕事を全て仕上げてからでも良かったのではないかと後悔もした。


 日付が変わる頃、事態が急変した。

 海夏は、喚き、叫び、苦しみがピークに達した様だった。

 どうする事も出来ない俺は、ただ突っ立っているだけ。


 そして、ついに産まれた。


 小さくて、真っ赤な顔で、元気に泣く姿に心を打たれた。


 俺の息子。


 産まれた子どもは、「(しゅう)」と名付けた。

 12月産まれだからと言う、安直すぎる理由だが、柊という植物が魔除けや厄除け、そんな意味を持つことから、健やかに育って欲しいという願いを込めた。


 海夏は、2人の名前から1文字ずつ取って「博海ひろみ」が良いと言い張っていたが、名前に込めた願いを話すと納得してくれたようだった。




 海夏を愛す自信はまだ無いが、柊は守りたい、心からそう思った。

 小さな小さな手で、俺の指を握る姿は本当に可愛かった。






 ***


 産まれた翌日から俺はまた仕事へ行った。

 毎日、送られてくる柊の写真が楽しみだった。

 柊が産まれてから、麗の事を考える時間は今までの半分以下になった。

 休みの度、俺は息子に会いに地元へ帰った。




 年末年始は、実家で過ごした。

 俺の両親も、柊をとても可愛がっていた。

 とは言え、やはり麗が気になっているらしい。

 夜中、両親がこっそり話しているところを見てしまった。

 母親は泣いていた。


「柊ちゃんが麗ちゃんの産んだ子だったら…なんて思ったらいけないのよね…。」


 それは俺だって考えたことが無かった訳ではない。

 しかし、柊を産むまでに、苦しみもがく海夏の姿を見てしまった俺がそんな事を考えてはいけない、そう言い聞かせて考えないようにしていた。




 仕事初めの前日、初めて親子3人で買い物へ出かけた。

 なるべく近場と言うことで、実家から車で10分ほどの大型のショッピングモールへ出かけた。

 ここであれば、柊に必要なものも揃うし、海夏の気晴らしにも事足りる。




 30分ほど歩いて回った頃、海夏が前方から歩いてくる2人組に気付いた。


 麗だった。

 一緒にいるのは貴子だ。


「ねぇ、ご挨拶しないの?」


 正直耳を疑った。

 ああ、つまり、海夏を妻として紹介しろということなのだろう、そう気付いた時、海夏ならあり得る、そう冷ややかに思ってしまった。




「あ…久しぶり。」

「うん。久しぶり。」


 久しぶりに会う麗は相変わらず綺麗だった。

 以前よりも少し痩せ、ロングで落ち着いたブラウンだった髪はダークブラウンのセミロングになっていた。


 俺が話しかけても、動揺する事なく、普通に返してきて少し拍子抜けしてしまった。


 俺は麗に動揺して欲しかったのだろうか…。


 海夏が俺の腕を突く。

 自分を紹介しろということらしい。


「あの、これ、嫁の海夏とこないだ産まれた息子。柊って書いてシュウって言うんだ。」


 海夏は勝ち誇ったようなドヤ顔だった。それを見た俺は、正直引いてしまった。

 貴子は顔が引きつっている。


「産まれたんだね。おめでとう。…ご挨拶が遅れました。海夏さん、初めまして。冬田くんと高校で同じクラスだった八重山です。」


 麗の対応は冷静だった。穏やかな表情で、柔らかな声。通常であれば相手に好印象を与えるであろう挨拶だったが、俺は違和感を覚えた。


 そこに感情は無い。瞳には光がない…まるで死んだ魚のような目。


 急に、麗が心配になった。


 麗の視線が一瞬動いた。

 その視線の先にあったのは、海夏の左手だった。


「ごめんなさい。待ち合わせの時間があるから…失礼します。」


 微笑んだ麗には、やはり感情が感じられなかった。


 海夏は、全く動揺しなかった麗の様子が面白くなかったようで、しばらく機嫌が悪かった。




 そんな海夏に影響されたのか、柊の機嫌も悪くなり、海夏は柊に授乳をするため授乳室へ行った。

 授乳室へ男性が立ち入ることは出来なかったので、俺はその間フラフラして過ごした。


 海夏と分かれて5分も経たないうちに、俺の目に飛び込んできたのは沈んだ顔の麗だった。

 放って置けず声をかける。




「麗…少し良いか?」

 麗が頷いたので、近くのコーヒーショップで少し話す事にした。


「元気…だった訳ないよな…。最近どう?」

「ううん、元気だよ。今、一応正社員としてリストランテでサービスの仕事してる。」


 やっぱりウェディングプランナーの仕事は出来る訳無いよな。分かりきっていた事だが、改めて現状を知ると胸が痛んだ。


 それから、今までしたくても出来なかった謝罪をした。言い訳がましくなってしまったが、ひたすら謝った。


「そんなに謝らないで。これで良かったんだから…。」


 相変わらず麗の顔には感情が感じられない。


「初めは、海夏には子供を堕ろさせて、麗とは結婚するつもりでいたんだ…。

 今はそうしなくて本当に良かったと思っている。柊は可愛いし。本当に守ってあげたいと思っているし。

 でも、やっぱり麗の事は忘れられない…。今もつい考えてしまうんだ。もし、麗と結婚していたら…とか…。」


 俺は何を言っているのだろう。

 話しながら後悔していた。後悔しながらも話し続けていた。


 麗は無表情だった。

 酷く冷めた顔をしていた。


「私は、これで良かったと思っているから。やっぱりこうなるのがベストなんだよ。私はもう大丈夫。私には、支えてくれる家族も、友人もいるからさみしくないし。悪いけど、博之への気持ちはもう無いの。

 柊くんも、海夏さんも大切にしてあげてね。私みたいに泣かせたらダメだよ…。」


 麗は無理をしている。未だ心の傷は癒えてはいないのだろう。しかし、もう俺にその傷を癒す資格なんて無い。

 それどころか、俺は更に麗を傷付けてしまったのだと、麗の最後の言葉で悟った。


「あの指輪、有効活用してもらえて本当に嬉しいよ。」






 ***


 それから麗に会うことは無かった。


 俺に麗の心の傷を癒す資格がない事くらい分かっていたが、明らかに無理をしている様子の麗の姿が頭から離れず、毎日麗の事を考えてしまっていた。


 もう、幸せそうだったあの頃の麗の姿を思い出すことが出来なかった。

 思い浮かぶのは、無表情で感情が感じられない麗の姿ばかり。


 その度に、苦しくて、どうしようもないもどかしさに苛まれていた。


 そんな俺を癒してくれるのは柊だった。

 柊を見ていると、麗の事を忘れることが出来た。

 柊を抱いていると、穏やかな気持ちになれた。


 しかし、海夏の指にはめられた指輪と、彼女の時々見せるドヤ顔を見ると、また麗の事を思い出してしまう。


 石のはまった指輪は、柊の肌を傷つけてしまうから、指輪と指の間がきちんと洗えなくて衛生的ではないからと、何度も指輪を外して生活…せめて、柊の世話をする間だけでもそうして欲しいと再三頼むも、海夏は聞いてはくれなかった。


 俺は麗の事を忘れられないまま、柊を可愛がり、海夏を愛せないまま時間だけが過ぎていった。






 ***


 柊も1歳の誕生日を迎え、ヨチヨチ歩くようになった。

 俺を父親として認識しているようで、俺が帰ると笑いかけてくれる。

 以前にも増して可愛くて仕方がない。


 しかしながら、未だ、海夏に対して俺の態度は余所余所しいものだった。

 それに対して海夏は不満を抱いているのを知っていたが、どうする事も出来なかった。

 海夏が、1年前、麗に取った態度が、勝ち誇ったようなドヤ顔が、未だ許せずにいたのだから。


 麗にもう一度会いたいと思ってはいたものの、行動には起こさなかった。


 麗は俺を拒絶した。

 気持ちは無いとはっきりと言い放ったのだから。

 指輪の事もある。


 きっと柊という存在が無かったら、おそらく麗に会いに行っていただろう。

 柊という存在があるからこそ、俺は今も海夏と暮らし、真面目に働き、人間らしい生活が送れているのだ。


 そうでなければ、間違いなく、酒に溺れ、女に溺れ、まともな生活なんてとても送れていなかっただろう。


 柊という存在が俺にとってこんなに大きなものになるとは思わなかった。






 ***


 今年も、年末年始は地元へ帰省した。

 海夏とは、昼間は一緒に過ごすが、夜はそれぞれの実家に泊まった。

 柊は海夏と一緒だ。

 夜、俺は自由だったので、中学校の時の友人や、竹内、大学時代の友人と飲んだりしていた。

 やはり、高校時代の友人から誘われることは無かった。




 竹内とは、2度ほど飲んだ。

 年末に飲んだ時は、俺がひたすら柊が可愛くて仕方がない、そんな話をメインにしていた様に思う。

 後半はかなり酔っており、どんな話をしたのかさっぱり覚えていないが、間違いなく、麗の話はしているだろう。

 俺が麗の事を話せるのは、竹内だけなのだから…。




 年明け、竹内から再び飲まないかと誘われた。

 特に予定が無かったので、OKする。


 指定された時間に、指定された店に行くと、そこには竹内と、見覚えのある男がいた。


「博之、高校の卒業式以来か?久しぶり。」

「春太郎?マジで?すげぇ久しぶり!」


 浅井 春太郎は、高校の時のクラスメイト。

 高校卒業してすぐ、カナダへ2年留学して、帰国後も地元から離れた大学へ編入、就職してからも地元を離れていたり、海外赴任しているらしい、という噂を聞いてはいたが、実際会うのは高校の卒業式以来だ。


 顔もそこそこ良いし、明るくて、裏表がなくてすごくいい奴なんだが、裏表とデリカシーがなさ過ぎるというか、空気が読めないのか読まないのかは謎だが、ちょっと変わった奴。

 上級生や下級生からはやたらモテたが、同学年、特にクラスメイトとなると、「自由すぎてついていけない」とか「いい奴なんだけどデリカシーなさ過ぎで無理」とかで恋愛対象として見られない残念な奴。


「春太郎、今も海外なのか?」


「いや、去年…もう一昨年か、9月にこっちに帰ってきた。やっぱり地元はいいよな。」


「あぁ…そう…だな。」


 春太郎の、「地元はいいよな」という言葉に、言い淀んでしまった。

 複雑だった。

 確かに地元は好きだ。

 麗もいる。

 いい思い出もたくさんあるが、友人もたくさん失った。


「ところで、お前ら知り合いだったのか?」


 竹内と、春太郎の接点がわからなかった。


「ああ、留学仲間。知り合いっていうか、戦友みたいな感じ?一緒だったのは1年も無かったけど、すげぇ濃い時間だったもんな。」


「そうだよな。こんな奴でも同郷ってだけで心強かったもんな。」


 そういえば、この2人、結構タイプが似ている気がする。空気を読まないところとか、言いたいことはっきり言うところとか。


「博之、結婚して子どもいるんだよな。」


 春太郎が俺に尋ねた。きっと竹内にでも聞いたのだろう。


「ああ。子供は可愛いぞ。子供はな…。」


 特に意識した訳ではなく、口を突いて出たのはそんな言葉だった。

 そんな俺に、竹内は冷たく言い放った。


「お前、相変わらずだな…。嫁も愛してやれよ…。」


「……無理だよ。やっぱり俺は…麗が…。」


 麗が、今でも忘れられない。

 麗以上の女はいない。

 妻と子がいるのに、そんな事口にすべきじゃない事は分かっている。


「博之、その事で話があって、今日竹内にお前を…悪い、来たみたいだ。ちょっと行ってくる。」


 春太郎は、何かを言いかけたが、着信に気づくと席を外した。

 竹内は、複雑な顔で俺を見ている。


「博之、もういい加減にしろよ。お前には家庭があるんだろう?そろそろ嫁と…真面目に向き合ってやれよ…麗ちゃんにお前はもう必要ないんだから……。」


 竹内の言うことはもっともだ。もっともなのだが…


「必要かどうかなんて本人しか分からないだろう?」


「お前、自惚れるのも大概にしろよ?ちゃんと現実を見ろ。」


 竹内は珍しく険しい顔で声を荒げて言った。







 ***


 竹内の言った本当の意味を知るのに、そう時間はかからなかった。


「お待たせ。」


「竹内くん、久しぶり。それから博之も。」


 戻ってきた春太郎は1人では無かった。

 一緒に現れたのは、麗だった。


 仕事後そのまま来たのかきっちりまとめられた髪は夜会巻きと言うのだろうか?上品なメイクに、綺麗目な服装は、俺と同棲していた頃の通勤スタイルと変わらない。


 相変わらず…いや、かつて付き合っていた頃よりも更に美しいと感じた。


 去年会った時とは違い、表情も豊かで、少しふっくらした顔は幸せそうだ。

 昔に比べても、笑顔がより柔らかくなったというか、以前に増して穏やかな顔だった。


「麗…元気そうで良かったよ…。元気な姿を見られて嬉しい。」


 心の底からそう思った。


「私は元気だよ。今、すごく充実してる。転職も考えているし…。」


 その時、運ばれてきたカクテルを受け取る麗の指には大きなダイヤの指輪が輝いていることに俺は気付いた。


 ショックだった。

 俺がショックを受けること自体筋違いなのは分かっている。

 分かっているのだが…。




「実は、元旦に籍入れたんだ。挙式は3月、麗の誕生日。」


 そう言ったのは春太郎だった。


「えっと、浅井 麗です。」


 そう言うと、恥ずかしそうに春太郎を見つめる麗。


「そういう訳で、博之は例の件に関して罪悪感持つ必要無いし、麗の心配だってする必要ないから。麗は俺が責任持って幸せにするから。」


 そう言って麗を抱きしめる春太郎。


「ちょっと春ちゃん、ここは日本だよ?人前でそういうのは恥ずかしいからやめてよぉ。」


 麗は口ではそう言うものの、すごく嬉しそうだった。

 そんな2人を見ているのは胸が張り裂けそうだった。


「もう私には春ちゃんがいるから、いつも支えてくれるから大丈夫。すごく幸せ。博之は、奥さんと子どもを大切にしてあげて下さい。」


「I love you so much!」


「だからここは日本だって…。」


 春太郎にキスされ、真っ赤になった麗。2人の仲睦まじい姿に、突きつけられた現実に、俺はただショックを受けていた。




「麗ちゃん、前から聞きたかったんだけどさ、春太郎(こんな奴)のどこがいいの?」


 竹内が麗に尋ねた。


「うーん、デリカシーの無いところ?それと、空気を読まないところとか、自由すぎるところかな?」


「麗ちゃん…それって褒めてるの?貶してるの?」


「俺にとっては最高の褒め言葉!」


「一応褒めてるの。そういうところにたくさん救われたもの。それから、天真爛漫で裏表がなくて、優しくて、ちょっと強引だけど引っ張って行ってくれるところとか、一緒に居たら笑顔で居られるし、ずっと一緒に居たいって思えるところ。そして何より、私だけを見て、私だけを愛してくれるところ。」


「はいはい、ごちそーさま。もうお腹いっぱい。」






 ***


 春太郎と麗と別れた後、俺は竹内と2人で飲み直した。


「麗ちゃんが春太郎と付き合うきっかけ、実は俺とお前なんだよ。」


 竹内の言っている意味がわからなかった。


「去年…もう一昨年か。こっちに戻ったあいつと年末に飲んだ時、俺が話したの。博之の子どもの事とか、婚約破棄した事とか、指輪の事とか。そしたら、博之の婚約破棄した相手が麗ちゃんだって知らない春太郎が、年明けに友達と集まった席で本人を前にしてベラベラ喋っちゃったらしいんだよね。翌日、それが麗ちゃんだって友達に説教されて、麗ちゃんに謝ったのがきっかけで会うようになったって。」


「だから春太郎と麗は別れ際、あんな事言ったんだ。」




『今の俺たちがあるのは、お前らのお陰だよ。ありがとう。』




 そして、春太郎は結婚式の二次会に俺を誘った。


「二次会誘ったの、春太郎なりにお前に気を使ってるんだと思うぜ?お前、高校の時の友達から総スカン食らってるんだろ?麗ちゃんの件で。仲直りさせたいんだよ。お前とそいつら。全くあいつらしいよ。」


 返事は保留にした。

 まだ麗への気持ちが整理できていなかったからだ。






 ***


 結局、竹内に引きずられるような形で二次会に出席した。


 初めはぎこちなかったものの、友人達とはまぁ和解する事が出来た。


 春太郎と麗の、本当に幸せそうな姿を見て、俺はやっと麗を諦めることが出来そうな気がした。

 そして、海夏と向き合う決心がついた。






 結婚して1年半を過ぎる頃。

 やっと俺と海夏は家族になれたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かった! みんな魅力的! [一言] 勝手な話しですが過去に付き合ってきた人は今でも自分の女のように思うときがあります  博之が今に集中できないのもなんかわかるなあ
[良い点] 前作から読んで 博之ヒデェ奴だな→博之が少し可哀想になって来た→と思ったけどそうでもなかった といい意味で感情が揺さぶられました。 [一言] 麗さんが幸せそうなので良かったです。 他視点も…
[気になる点]  海夏より男性陣。特に竹中に嫌悪感が募りました。平気な顔で他人の住居にあがりこみ他人の彼女の料理を批評して『元カノの方が美味しかったからそっち食べたい』と言う男は何様かと思いました。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ