本音
「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!!」
「アッハハハ!!」
「ふふっ……ぷっ……くっくく……」
「ショウ様っ!?」
現在、俺は廊下の真ん中で痺れている。俺の踏んでる足元には魔法陣が刻まれていた。
この魔法陣は侵入者用のトラップとソニアさんに教えてもらっていた。本来なら屋敷にいる俺には効かないのだが、ソニアさんが少し弄って俺だけ発動するようにしている。
「どどどどべべべべでででで!!!」
必死に止めてとジェスチャーを加えながら、話すが舌が上手く回らない。ソニアさんとララちゃんは先程からずっと笑っていて助けてくれそうにない。
チルさんだけは、なんとかしようとオロオロしているが止め方が分からないのでパニックになっている。
癒されるなぁ~
こんな状況でなければだかな!
そのあと数十分に渡って俺は痺れていた。ソニアさんには困ったものだ。最近は、危ない薬も平気で飲ましてくる。激辛だったり酸っぱかったり痺れたりなどなど。
「いやぁ、こうも簡単に引っかかるなんて君はバカだね」
「ソニアさんが屋敷にいる者には発動しないって言うから歩いたんすよ! そしたら、いきなり魔法陣が光って痺れ始めたんすよ!! 笑い事じゃないっすからね!」
「ショウ。面白かったよ」
「見てるララちゃんはね!! 俺はずっと痺れてたから!」
「まあ、良いじゃないか。これで侵入者用のトラップは成功と言うわけだ」
「俺で試さないでくださいよ!!」
「仕方ないだろう? 君が一番強いのだから」
「出来れば事前に説明しておいて欲しかったっす!」
「それじゃあトラップにならないじゃないか」
「ならなくて良いわ!!」
「つまらないなぁ」
ソニアさんはつまんなと言うが俺としては二度とこんな目に会いたくない。
「それより、今日の実験は何するんすか?」
「そういえば考えてなかったな。君は何が良い?」
「何が良いってソニアさんの実験はまともなのないじゃないっすか」
「心外だな君は。これでも私は新しい魔法の構成や新しい魔法薬の開発にだって成功しているんだぞ?」
「知ってますよ! それ全部俺が実験台ですからね!?」
「そうだったか?」
「俺も本気で怒っちゃいますよ!?」
「君は何度もそう言うが怒った事などないじゃないか?」
「ぐっ……それは……」
俺はソニアさんに口では勝てることは無い。いつもいつも言い負かされている。あと、単純にソニアさんが美人だから怒りにくい。
それより今日は本当に何をするかだ。
「それなら今日はピクニックでどうですか?」
いきなりチルさんがそんな事を提案してきた。確かに、ここのところずっと実験と研究ばかりで動いてないから良いかもしれない。
「それいい!」
ララちゃんも賛成してることだし、ちょうどいいかな。
「俺も賛成っす。ソニアさんは?」
「君が居なければ実験は出来ないな。よし、私も賛成にしよう」
これで今日はピクニックに決まった。ピクニックに行くのはいいが、目的地はどうするのだろうか?
そんな事を考えてたが、ピクニックの場所は屋敷の裏にある森を抜けた所にあった湖だった。
こんなところに湖なんてあったんだな…
「どうだ? いい場所だろう?」
「ソニアさんにしてはいいセンスですね」
「ショウ。君はちっとも私を褒めないね」
「これでも褒めてるつもりっすよ」
「そう言うことにしておこう」
俺とソニアさんがそんな会話をしている頃、ララちゃんは湖の方へと走って行った。それをチルさんが追いかけている。なんとも微笑ましい光景である。
欲を言えば皆には水着になって欲しいです!!
美少女、美女の水着姿ですよ?
大興奮するに決まっている!!
「何を真剣に考えているんだ?」
俺が腕を組み眉間に皺を寄せ下を向きながれ、くだらない事を考えているとソニアさんが覗き込んできた。
「うわっ! 驚かせないでくださいよ」
「君が勝手に驚いたんだろ」
それもそうかと納得。湖の方に目を向けるとララちゃんがはしゃいでいる。
釣りしたくなったな……
竿でも創るか!!!
釣りがしたくなった俺は武具創造で釣竿を創りだす。
「むっ? それは釣竿をかい?」
「そうっすよ。湖を見てたら釣りしたくなったっす」
「そうか。それなら人数分創ってくれ。私もしてみたい」
「了解っす」
言われたとおり俺は人数分の釣竿を創る。四本創るとララちゃん達がいる方へと歩いていく。
「ララちゃん、チルさん! 釣りしませんか?」
「釣り?」
「釣りですか?」
「そう、釣りです! どうっすか?」
「やる!!」
「面白そうですね。やりましょうか!」
二人ともやる気満々だ。でも、これくらいやる気じゃないとつまらない。すると、後ろからソニアさんが賭けをしようと言ってくる。
「ただやるだけではつまらないから、賭けをしよう。一番大物を釣った者が好きな人に何でもしてもらえると言うのはどうだ?」
その言葉を聞いたチルさんとララちゃんの目が俺に振り向く。なんで俺なのかと思うが、二人の目が輝いていて聞くのが怖い。
「絶対やる!」
「是非ともやりましょう!」
先程よりいい返事をする二人。ソニアさんの方を見てみると笑っていた。どうやらこれが目的みたいだっらしい。
「さて、それでは始めようか!!」
ソニアさんが大きな声で合図を出す。俺達は各々別の所に立ち一斉に竿を振り上げる。
さてと……
ぐへへへへへへ!!!
勝ったらどうしようかな……
チルさんに尻尾を触らせてもらうか?
いやいや、ソニアさんに普段の仕返しを?
うーん、悩むな。
俺が下衆な事を考えていたら竿に反応があった。
「来た!!」
浮きが完全に沈み一気に竿を振り上げる。糸の先にいたのは約30cmの魚だった。これならと、他の三人を見てみるとチルさんは60cmはあると思われる魚を手にしていた。
ソニアさんはまだ当たりがなくて渋っていたが問題はララちゃんだった。何故かバケツが三つある。しかも、よく見るとどれも溢れかえっている。
いや、確かに大物狙いだけどさ…
釣りすぎじゃね??
俺が釣った魚やチルさんが釣った魚と同じくらいの大きさの魚は余裕で釣っている。ララちゃんは釣りの才能があるだろうか。
しばらく、俺達は釣りをしていた。俺はいい加減釣れなくなって来たので一旦止めて休憩することにした。
現在ソニアさんだけが釣れていない。だが、どこかその顔は楽しそうだった。近付いて話しかけてみることにした。
「楽しそうっすね?」
「そう見えるか?」
「そりゃあ、はい」
「ふふっ。そうか。実を言うとな私は今とても幸せなんだよ」
「……」
「君も知っているとおり私は奇人と呼ばれ、あまり他人とは交流が無いんだ。あったのは使用人とお偉い方々だけだった。それがどうだ? 今は君達がいるじゃないか。毎日研究と実験だけの灰色の日々に君達が色をくれたんだ」
俺は静かにソニアさんの話を聞く。
「今ではね毎日が幸せなんだ。君がいて、ララがいてチルがいる。実験の日々なのは変わらないが、そこには君がいていつも私は笑っている。それがどうしようもなく幸せなんだよ」
一呼吸置いて、ソニアさんは言葉を続ける。
「だけどね、君達がもし居なくなってしまったらって考えると、とても怖いんだ。私はエルフで君達とは寿命が違う。私は何度も今生の別れをしてきた。もちろん悲しかったし、辛かった。でも、今私は君達を失うのがとても怖いんだ」
「ソニアさん……」
「ふふっ……情けないだろう」
何も言えない。なんて言えばいいのかわからない。俺はいずれここを出て行くし、ララちゃんもチルさんもずっとここにはいられない。返答に困ってしまう。
「すまないな。困らせることを言って。気にしないでくれ」
そう言って笑ったソニアさんの笑顔はとても儚くて今にも消えてしまいそうなほど綺麗だった。
「おっ!?」
その時ソニアさんの竿に反応があった。どうやら魚がヒットしたようだ。
「初の当たりだな!」
ソニアさんが竿を引っ張り釣り上げようとしたら、魚が抵抗する。だが、尋常では無い力で逆にソニアさんを湖に引っ張り込もうとしている。
「むっっ!! これは湖の主じゃないのか?」
「何を悠長に言ってるんすか!? 竿を離して!」
「いや、ここでこいつを釣れば私の大逆転だ!」
そう言って踏ん張るソニアさんだが、魚の方が力が強く徐々に引っ張られる。流石にやばそうなのでソニアさんに手を貸す。
「ショ、ショウ!? どこを触っている!!」
「どこって竿じゃないっすか!」
俺はソニアさんを後ろから抱き締めるようにして竿を握る。恥ずかしいなんて思ってる場合では無い。
「とにかくこいつを釣り上げましょう!」
「わかった!!」
俺とソニアさんは協力して魚を釣り上げる。しかし、魚もそう簡単に釣られまいと必死に抵抗する。俺は身体強化を施し一気に力を入れて釣り上げた。
どうやら本当にここの主みたいだったらしく体長は3mを超えていた。サメ並に大きいと思ったがそんなことは些細な事だった。
「おお!! これは私が一番だな!! ショウ!」
はしゃいでるソニアさんは俺に笑いかけてくる。
ああ……やっぱりこの人はこうやって笑ってる方が良いや……
こうして、俺達の釣り勝負はソニアさんの大逆転勝利で幕を閉じた。ちなみにソニアさんは俺に新しい魔法薬を何十本と飲ませてきた。
無論、副作用で死にかけたけどね!
改訂済み




