奇人との出会い
ララちゃん誘拐事件から一週間経った。あれから城の警備は一層強化された。当然と言えば当然の結果だ。
さらに、何故かララちゃんは俺といることになりました。理由は城内に協力者がいるかもしれないからだ。何故、俺の所かと言うのはララちゃんの指名だそう。
うはっ!
なんか嬉しい。
しかもチルさんも一緒です!!
もうね犬耳を触りたい。
ナデナデしたい……
それと、ある噂が街で流行っている。それは黒髪の英雄がオルランドに封印されていたという伝説の魔獣を倒したことだ。
もちろん、俺が疑われると思ったがガストンさんが流した張本人であった為、少し中身が違った。
伝説の魔獣を倒したのは異世界より召喚された勇者達ということになっている。
今もオルランドにいるとのことで俺は人違いということになった。
あんな冴えない顔じゃ無理だな。と言われた時は魔獣戦で使った全武器乱射をしてやろうかと思った。
確かに冴えない顔だけど!!
俺は伝説の魔獣に勝ったんだぞ!
言っても信じてもらえなさそうだけど……
泣きたい……
「ララちゃん、俺ギルドに行ってくる」
「私も行く」
「またー?」
「ダメなの?」
「いや、ダメじゃ無いけど……チルさーん!」
ララちゃんが上目遣いと涙目で見て来る為、断りにくい。なので、チルさんに助けを求める。
「すいません、ショウ様。私が言った所でララ様は着いて行きますよ?」
ぐっ……それはわかってるんだよ!
もうちょっと粘ろうよ!
「はぁ~わかったよ。危なくなったら逃げる。それでいいね?」
「うん!」
結局、俺が折れるのだった。許可を出すと満面の笑みで頷くララちゃんに俺は何も言えなかった。
ギルドへと向かう。チルさんは騎士の仕事があるので途中で別れる。
「それでは、私はここで」
「了解っす」
「チル。またね」
挨拶をしてチルさんは城の方へと歩いて行った。
ちなみにララちゃんには帽子とメガネを渡してある。王女だとばれないようにする為だ。
チルさんと別れた後、ギルドに着くと掲示板を見てみる。掲示板に張られている依頼書を見て、一人変顔をしている。それをララちゃんに見られる。
「……」
やめて!!
そんな目で見ないで!!
ん?
この依頼がいいかな。
早速、俺はその依頼を受ける為に受付へ行く。
「あの、この依頼を受けたいんですけど」
「こちらの依頼ですね。はい。承りました。それではお気を付けて」
依頼の承認を行い、ギルドを出て行く。
「どんな依頼?」
「んー、なんかよく分からんけどゴーレムの退治だって」
「よく分からない?」
「えっと、なんか依頼者の所まで行ってゴーレムの所まで案内してくれるんだって」
「ふーん」
あらら、興味無いのね…
まぁいいか。
とりあえず指定された場所まで行こう。地図に従って街を歩いていく。指定された場所に着いた。目の前には大きな屋敷がある。
「ここ?」
「ここらしいんだけど」
二人で大きな屋敷を見上げていたら、屋敷から誰かが出てくる。
「君達が依頼を受けた冒険者か?」
現れたのはメガネをかけたエルフの女性。所々髪の毛がピンピンはねている。寝癖なのだろうか気になるが、それよりも汚い格好が目立つ。
白衣を羽織っているのだが、白衣にいろんな色の液体が染み付いていた。
しかし、そんな事はどうでもよくなる。だって、エルフの美人さんだから。内心、テンション上げまくりである。
これでやる気百倍だぜ!
「……それにしても」
「ん?」
「幸薄そうだ。君は?」
「あはは」
「それに冴えない顔だ。ブサイクとは言わないけど普通かな。そこらへんを探したらいそうな雰囲気をしている」
初対面で何故ここまで言われなければならないのか。俺が貴方に何か酷い事でもしましたかと小一時間くらい問い詰めたい。
「あなた、少し失礼!」
目の前のエルフの発言にララちゃんが怒ってくれた。自分の代わりに怒ってくれる人がいるのは嬉しい。
「ショウはあんまりカッコ良くはないけど、やる時はやるんだから!」
トドメを刺してくるのね……
「おいおい、トドメを刺したのは君じゃないか。あんまり気にしないほうがいいぞ?」
貴方がそれを言うか!?
フォローになってねぇんだよ!
それより依頼だ。とっと早く終わらせて帰りたい。誰も俺を傷つけない世界に。
「あの依頼のゴーレムは?」
「おお! 忘れていた。説明するから中に入ってくれ。そっちのちびっ子も」
「むっ、チビじゃない! ララって名前がある!」
「そうか。悪かったな、ララ」
そう言ってエルフの女性は俺たちを屋敷の中へと案内してくれる。中に案内してくれたはいいが、少々匂う。
「臭い……」
俺は我慢していたが、ララちゃんには耐え切れなかったようだ。素直な感想を言っている。
「おっ、そうか?」
「臭い。こんな所で生活してるの?」
「そうだが?」
「信じられない」
ララちゃんの目は汚物を見るような目だった。出来れば、俺には向けて欲しくない目だ。向けられたら、死ぬかもしれない。
「慣れれば平気だ。こっちに客間がある」
扉を開けると、普通にソファーがありテーブルがあった。入った時は心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。三人それぞれがソファーに腰を掛ける。
「さて、本題に入る前に自己紹介をしておこう。私の名はソニア。よろしく」
「ソニアってあの奇人ソニア?」
「そのソニアで間違いない」
「奇人??」
「なんだ? ララは知っているのに君は知らないのか?」
「いや、この街に来てあんまり経ってないんすよ」
「そうなのか?」
「うん。ショウは旅をしてる冒険者だから」
「それなら仕方ないか。私が奇人と呼ばれている理由は単純明快だ。研究ばかりしてるからさ。あんまり他人と関わらないようにしているからそう呼ばれている」
だから、白衣を着ているのか。道理で見た目に無頓着なはずだ。研究者のイメージそのままである。
「どうした?」
「ああ。いや、あの、その白衣の汚れは?」
「これか? 薬品とかも扱っているからな。私が研究しているのは魔法薬と新しい魔法の開発だ。それで薬品の液が散ったりして汚れたりするんだ」
「この屋敷には一人なの?」
「ああ。ただ、週に一度は屋敷を掃除してもらうから雇っている使用人はいるぞ」
だから、この客間は綺麗だったのか。恐らく、ソニアさん一人だったなら、この客間は埃だらけだったに違いない。
「さて、今度はそちらの自己紹介をしてもらおうか」
俺は構わないんだけどララちゃんは大丈夫なのかね?
俺はチラッとララちゃんを見る。俺と目があったララちゃんは意味が分かったかのように頷くと立ち上がる。
「私の名前はララ・ヴァーミリアン。ゼオン・ヴァーミリアンの娘です」
ドヤ顔で言っているが、俺としては言葉が出ない。なぜ、正体を隠していたのにわざわざ明かしてしまったのか。俺にはさっぱりわからないが、ララちゃんには何か考えがあるのだろう。
「ほう、君があのゼオン陛下の愛娘ララ姫だったとはね」
自国の王女が目の前にいるのに、大して驚かないソニアに俺は驚いた。普通なら、奇声でも上げるはずなのに。
「どうした? まるで私が驚かないのがおかしいように見て来て?」
「いや、だってララちゃんはこの国の王女っすよ? 少しは驚くのが普通じゃあないんすか?」
「私はそういうことに興味は無い。だから奇人と呼ばれてるんだ」
「そ、そうっすか……」
「それより、君の名前はショウだろ?」
「えっ? 俺まだなんも言ってないっすよ?」
「ララ姫がショウと呼んでいただろう? よほどの馬鹿じゃない限り忘れはしないさ」
言われてみると、俺は初対面の時にララちゃんが俺の名前を呼んでいた。それを聞いてれば、自己紹介など聞かなくてもわかっているのは当然か。
「じゃあ、自己紹介が終わったことなので本題に入ろう」
「うっす」
「ゴーレムの事なんだが、今は私の魔法で動きは止めている。しかし、止めているだけだ。どうにかしてゴーレムを破壊して欲しい」
「止める事が出来るなら、破壊くらい余裕じゃないんすか?」
「それが私が開発したゴーレムなんだが、ちと制御に問題があってな……しかも最悪なことに全属性耐性を付与したんだよ」
「てことは魔法じゃ歯が立たないと?」
「ああ。だから止める事しか出来なかった」
マジかよ!!
この人なにやってんだよ!?
でも、全属性耐性を付与したってかなりの天才の所業に思える。俺はまだこの世界について詳しく分からないが、全属性に耐性を持つものを聞いたことがない。
奇人であり天才って……
「物理的に破壊する以外方法は無いと?」
「そうなる」
「ショウ?」
「ん?」
「大丈夫?」
「まぁやって見なきゃなんとも」
ララちゃん心配してくれんのかぁ。やっぱりこういう所は天使なんだけどなぁ
「ショウ。無理なら無理で構わない」
「いえ、一度受けた依頼っすからね。やってみますよ」
「そうか! そう言ってくれると有難い! それではこれからゴーレムのとこに案内するよ!」
何よりこんな美人の依頼を断れませんからね!
改訂済み




