復讐者の1日
現在、タカシは商業国アルツェイルにいる。当面はここを拠点にするため。ここは商人達がよく街を出たり入ったりするおかげで情報が豊富なのだ。
それに商業国と言うだけあって商人達も競争しているので物は豊富にあるし物価もそれなりに安い。
だが一番の稼ぎは奴隷商人達だった。奴隷の多くは借金の肩代わりが多い。もしくは捨てられたり、捕まったりと色々だ。
かくいうタカシも奴隷商人に世話になったが目の前で喰われて死んだ。その奴隷商人の商品、奴隷達は逃がしたのだが一人だけ残った。
空間属性を持つエルフの女だ。
名前はエレノアと言う。その顔はまるで二次元のアニメキャラような美しさでエメラルドのような輝きを放つ翠色の髪をしている。
スタイルも悪くない。むしろ良いほうだ。ただし胸はあまり大きくない。普通の基準は分からないが多分良くてCカップだろう。
タカシは元の世界ではオタクだったのでこういう例えしか出来ない。
それにあまり女性とは関わらなかったから。関わろうとしたけど、タカシはどうせキモいと言われるのが目に見えていたので避けていた。
高校に上がってオタク仲間は増えるかと思ったが数人程度だった。それでも高校生活は充実していたが、ある日俺は不良グループに目を付けられてから全てが変わった。
「タカシ様?」
急に声を掛けられる。眠りに就いていたタカシはその声で目を覚ます。
「なんだ?」
「いえ、そろそろお金が……」
そう、タカシたちは街に来て宿に泊まってからはまだ何もしていないのだ。そのため金ばかりが減っていく。
「あとどれくらいだ?」
「今月持つかどうかと……」
「そうか……」
「あのタカシ様?」
「ん?」
「ギルドへ行かれてはどうでしょうか?」
確かに良い案ではあるが、タカシのステータスがチートすぎる為、気乗りしないのだ。
タカシのステータスというと――
◆◆◆◆
福田隆史 男 17歳[称号]異世界人,復讐者
Level 15
体力:45000/45000
魔力:42000/42000
知力:25000
筋力:38000
俊敏:29000
器用:30000
耐久力:50000
運:700
【スキル】
《黄泉還り》1日に一度だけ死から蘇る。
《復讐の焰》憎悪によりステータス強化
《歪んだ心》精神的負担が無くなる。
《終わりなき絶望》自分に敵意あるもの全ての魔力を減らし続ける。任意型
《無慈悲なる暴虐》自分が敵と認めたもの全てのステータス値を半減させる。任意型
《秩序なき消滅》相手のスキルを消す。任意型
◆◆◆◆
とまあこんな形で色々とぶっ飛んでいる。もしこれを見られたら確実に騒ぎになる。
どうするかと思案するタカシにエレノアが話しかける。
「あの、タカシ様!」
「うわっ!! いつの間に部屋に入って来たんだよ!」
「ノックしても出なかったじゃないですか! それで入ってみたらタカシ様はボーッとしていたので」
「そ、そうか」
「それとステータスを気にしてましたが、ギルドは簡易ステータスしか見ませんよ?」
「簡易ステータス? なんだそれは?」
「簡易ステータスとは名前と性別、年齢、称号だけを見せるステータスです。誰にでも見られたくないステータスとかありますからね」
エレノアの話を聞いてタカシは、自身の出鱈目なステータスが露見する事はないと安心する。そうと決まれば早速登録に向かおうとタカシは立ち上がる。
「エレノア。ギルドへ行くぞ」
「はい!」
タカシとエレノアはギルドに登録するため宿を出る。ちなみにエレノアの格好は何故かメイド服だ。
別に着ろとタカシは命令してはいない。ただ何故かエレノアはメイド服を着たがった。タカシは正直言うとはメイドは大好物だ。
「どうしたんですかタカシ様?」
「ギルドはどこにあるんだ?」
エレノアが笑う。仕方ないだろう。タカシはあまり外出をしないし、したとしても食料など買い出しだけだからこの街は詳しくない。
「私が案内しますよ」
「すまん」
「ふふっ。私はタカシ様の奴隷なんですから謝る必要はありませんよ」
「いや、それでもだ」
「お優しいんですね」
「好きに言え」
「はい」
エレノアはそう言うと振り返り、ギルドがある方へと歩いていく。
ギルドに辿り着き早速中に入る。だいたいこういう所は美少女連れてたら絡まれるのがテンプレだ。
タカシは絡まれないことを祈りながら進むがその祈りは神に届くことはなかった。
「よう! エルフの姉ちゃん可愛い格好してるねぇ!」
「そんなご主人より俺たちに尽くさねえか?」
「給金もそいつより払ってやるぜ~!」
今にも殴り飛ばしたいところだがここで騒いではマズイと思い、タカシは心を落ち着かせるがエレノアが下衆共を挑発してしまった。
「お生憎様ですが、私のご主人様はタカシ様ただ一人ですのでお帰りください。むしろ私の視界に入らないでください。ウザったいです」
(エレノアはこんなに口悪かったのか?)
そんな事をタカシが思っていたら文句を言われた男達がキレたようで、何故かタカシへと怒りの矛先を向けてくる。
「ご主人様覚悟しろよ?」
「恨むならてめぇの奴隷を恨めよ!」
「安心しなぁ! 奴隷の方も後でたっぷり可愛がってやるよ!」
「オラァ!!」
「くたばれやあ!」
「しゃあっ!」
三人がタカシへと襲い掛かる。タカシは面倒そうに顔を顰めたが、内心は力を見せ付ける絶好の機会だと喜んでいた。
「しっ!!!」
タカシは一瞬で三人の鳩尾に拳を叩き込む。男達はそのまま倒れて意識を失った。
「さすがタカシ様です!!」
「お前が余計な事を言わなかったら、こうならなかったんだがな……」
「申し訳ありません」
タカシに叱られてエレノアはシュンとしたように耳が垂れ下がっている。
「別に怒ってないから気にするな」
「た、タカシ様」
さっきまで落ち込んでいたのが嘘かのようにパーっと表情が明るくなる。
(本当分かり易い奴だよお前は……)
そのあとタカシとエレノアはギルドの登録を済ました。最初はFランクからなので適当にDランクの依頼を受けて達成した。
報告が終わったら宿へ帰りその日を終えた。
改訂済み




