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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
後日談

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いろいろな再会

 俺が冒険者になって一週間が経過した。これといって大きなイベントもなく、依頼を淡々とこなしてアインスへ付けを払っただけだ。



 ギルドの受付嬢であるセラさんと進展があったかと聞かれると、特にない。何度か依頼を受ける時に話したから、顔見知り程度の仲にはなったとは思う。



 そして、ついでに手に入れた情報では俺と同じくこの異世界に残った勇者達が学園に入学したという。



 挨拶だけでもしておこうかと思ったけど、この国にいるならいつでも会えるだろうと、会いに行くのをやめた。



 だから、今もこうして依頼を受けてゴブリンを狩っている。テンプレなゴブリンなので繁殖が早く厄介なので討伐依頼は常設されている。今更、ゴブリンに苦戦する事はないので、作業のようにゴブリンを狩っている。



「ふう……これだけ倒せばいいか」



 一仕事終えた様に額の汗を拭う。実際に汗は掻いていないけど、雰囲気が大事なのだ。後ろを振り返ると、ゴブリンの死体が大量に転がっている。数えるのも面倒なので、討伐証明である耳を剥ぎ取ってギルドへと戻る。



 討伐証明の耳を三十個、ギルドに提出する。換金してもらい、ゴブリンの死体を放置している場所を報告して、本日の仕事は終わりである。



 ギルドを出て、フラフラと街を歩く。何か面白い事でもあればと散策を続けるが、そういった場面には出くわさない。



 だから、休憩がてらに喫茶店へと赴く。



 昼過ぎだから、客も多くはない。おかげで頼んだ商品がすぐに来た。



「チョコレートパフェになります」


「どうも」



 チョコパフェを満面の笑みで食べ進めていく。こんな昼間から男一人でチョコパフェをニコニコしながら食べている光景は他の人から見たら、少し気味が悪いだろう。だが、俺は気にしない。



 好きな物を食べて何が悪いのか。



 チョコパフェを食べ終わり、コーヒーを注文する。しばらく、ゆっくりしていたら喫茶店に見知った客が来店してきた。



「げ……!」


「あっ! 山本!!」



 大きな声で俺の名前を呼んだのは、桐谷大輝だ。そして、相変わらず桐谷ハーレムを形成している。後ろにいるのは、清水沙羅に神田留美に緋村楓だ。しかも、クリス王女までいる。恐らく、学園か王城で出会ったのだろう。嫉妬でぶん殴ってしまいそうだ。



 桐谷は嬉れしそうにこちらへと駆け寄ってくる。何も言っていないのに、勝手に対面の席へ座り話しかけてくる。



「今まで何してたんだ? どこにもいなくて心配してたんだ」


「ああ。あの戦いが終わった後、俺は森の中で倒れててな。近くの村に住んでた人が保護してくれてたんだよ」


「そうだったのか……そういえば女神様も山本は無事だって言ってたな」


「女神様? アテナの事か?」


「ん? 違うよ。世界の意思って言ってたけど、女神様みたいな姿をしてたからそう呼んでるんだ」


「ふーん。ところで、学園に入学したって聞いたけど、何人こっちに残ってるんだ?」


「十五人だ。あっ、でも、山本と福田を含めたら十七人だった」


「結構、残ったな。今は全員学園か?」


「ああ。山本と福田以外はね」


「そうか。学園の方はどんな感じだ?」


「特に変わらないさ。ただ、やっぱり誰も俺達の事を覚えてなかったくらいだよ」


「そうなんだな。俺はもう行く。一応、しばらくはこの街に滞在してるから」


「わかった。他のクラスメイトにも山本がいることを教えていいか?」


「好きにしたらいい。じゃあな」


「ああ、またな!」



 軽く手を振って桐谷と別れる。後ろにいた四人が何か言いたげそうな顔をしていたが、話したくないので無視した。代金を払い終わった俺は、再び街を散策することにした。



 夕暮れ時、街に灯りが点きはじめる。もうそろそろ、晩飯なので宿へと戻ることにした。



「腹減った。飯くれ」


「座って待っていろ」



 俺が寝泊りしているのはアインスの店だ。本当は宿など経営していないが、頼み込んだら宿泊を許可してくれた。ただ、割と宿代は高いが飯が美味いので良しとする。



「サードは?」


「どこかで鍛錬をしているはずだ」


「そっか」



 これといった話題もないので会話も打ち切り、アインスが料理を作るまで黙っておく事にした。だが、沈黙を世界は許してくれなかった。



「アインス~。頼まれてたもの届けに来たわよ」


「助かる。ツヴァイ」


「ツヴァイだとぉ!!??」



 勢い良く椅子から立ち上がり、店の入り口にいるツヴァイへ顔を向ける。ツヴァイも驚きのあまり目を大きく見開いて俺を凝視している。



「な、ななななんでショウがここに!?」


「言ってなかったか? ショウはうちの常連だ」


「聞いてないわよ~!!!」



 ツヴァイは酷く動揺して震えながらアインスに問い質していた。アインスとツヴァイの間で盛大な勘違いが起きているが、俺には関係ない。



「ここであったが百年目じゃ……ツヴァイ。覚えてるよな~?」


「ち、違うのよ! アレは操られてたから私の意思じゃなくて……アインス、貴方からも何か言って!」


「ショウ。ツヴァイの言ってる事は本当だ。俺たちの存在は歪められていたという事は説明しただろう」


「む……」


「そう! そうなの! だから、ね?」


「何が、ね? じゃ、ボケえ! お前が俺にしたこと許すと思うたか!!!」


「ショウ。暴れるなら店の外でやってくれ」


「ちょ! ちょっと、助けてよ!」


「おう、任せろ! 安心しろ、ツヴァイ。殺しはしない」


「か、か弱い乙女に乱暴な真似はよくないわよ!?」


「例え、見た目がどストライクなお前でも許せぬ事はある」


「じゃあ、許してくれるならなんだってするわ! 彼女にだってなるわ! イチャイチャしたいんでしょ!? なら、私が全部叶えてあげるから!」


「その性根を叩き直してくれるわ!」


「いやあああああああああああああ!!!」



 俺は逃げ出そうとしたツヴァイの首根っこを掴んで店の外へと連れ出す。



 ただ、存在を歪められていたというので多少の手心を加えてお仕置きする事にした。合法的にセクハラが出来る尻叩き百回でツヴァイの件をチャラにしてあげた。



「う、うぅ……お嫁にいけない」


「使徒って結婚できるのか?」


「出来るが子は授かれない。俺達使徒は世界の意思によって生み出されたものだから、人間とは作りが違う。もし、ツヴァイと結婚するなら性行為は可能だと言っておこう」


「へ~」



 アインスの料理を食べながら、使徒について軽く話を聞いた。ちなみに、ツヴァイは俺が百回も尻を叩いたので、椅子に座れずフワフワと宙に浮かんでべそを掻いている。



「よう! 帰ったぜ!」


「おう、おかえり」


「戻ったか」


「あん? なんでツヴァイは泣いてんだ?」


「ああ。それは――」



 今日も穏やかに終わっていく。しばらくは、こうやって気楽に過ごせたらいいな。

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