リスタート
焼き鳥を頬張りながら談笑をしていると、ふとサードが気になる事を告げた。
「そう言えば、時間を戻した弊害でお前が倒した魔物が蘇ってるぞ」
「へ?」
アインスに頼んでいたサイドメニューの出汁巻き卵を受け取った俺はサードの言葉に思考が止まった。
「だから、お前が倒した魔物が復活してるんだよ。俺様たちは世界の危機にしか動けないから、どうする事も出来ない。そういうわけだから、お前どうするんだ?」
「いや、どうするって、え? どういうこと!?」
「だからな、お前が倒した伝説の魔獣や巨人に真竜が蘇ってるんだって。今は封印されてるけど、誰かが封印を解くかもしれないだろ?」
「それは使徒が――」
「前回は俺様たち使徒が解放したが今回は俺様たちは関与していない。つまり、お前の旅は終わってないんだ」
「え……」
サードに散々説明されても上手く考えが纏まらない。だから、一旦俺はアインスが作ってくれた出汁巻き卵を口にする。出来たての熱々だからはふはふと口を動かして食べていく。
「美味い……」
「そうか。おかわりはいるか?」
「いや、お前呑気にしてんじゃねえよ!」
「おい、アインス。俺様に魚を使った飯をくれ!」
「喜んで」
出汁巻き卵を食べ終わり、物思いに耽る。テーブルに肘を着き、ぼんやりとアインスが料理する姿を見詰める。鉢巻を巻いたアインスがテキパキと手を動かして、クロの注文通りに魚料理を作り上げる。一仕事終えたアインスは微かに口角を上げた。
「へい、お待ち」
「おう!」
どういうキャラなのかはわからないけど面白いので良しとする。クロが出された魚料理をがっついているのを見つつ、サードに俺の答えを述べる。
「復活したら倒すよ。そうじゃなきゃ関わらない」
「そうか。お前がそう言うんなら俺様もこれ以上は何も言わねえ」
まだ、確定したとは限らない。もしかしたら、俺が寿命で死ぬまで蘇ることもないかもしれない。あくまでも、かもしれないだ。
少し、暗い気持ちになってきたので酒を飲むことにした。アインスに頼んで酒を用意してもらい、サードと日が明けるまで飲み続けた。
「言わなくて良かったのか?」
「何が?」
「この国に封印されている伝説の魔獣を解き放とうとする輩がいることをだ」
「大丈夫だろうよ。なんだかんだ言ってショウは巻き込まれるさ。それにここの付けを払う為に、明日くらい早速ギルドへ行く羽目になるしな」
「ふ、そうか」
まどろみの中、最後に聞こえたのはアインスとサードが穏やかに話し合う声だった。その声が子守唄代わりになった俺は深く眠りに就いた。
翌朝、目が覚めると知らない天井が視界に映った。いつのまにやら、ベットに寝かされていたようだ。運んだのはアインスかサードかのどちらかだろう。
礼を言わねばならないなと、起き上がりベットから降りる。部屋のドアを開けて、廊下を歩いて階段を見つける。アインスの店は二階建てのようだ。
下に降りるとアインスとサードがいた。アインスの方は仕込みでもしているのか忙しなく動いている。対して、サードの方は寝起きのようで欠伸をかいている。
「よう。昨日はよく眠れたか?」
「ああ。おかげさまで。どっちが運んでくれたんだ?」
「俺様だよ。アインスは片づけで忙しかったからな」
「そうか。ありがとさん」
「気にすんな。それより、今日はどうするんだ?」
「とりあえず、付けを払う為に金を稼ぐ必要があるからギルドにでも行こうと思う」
「ん、そうか。俺様たちは基本的にここにいるから、暇だったら遊びに来いよ。てか、俺様がお前にリベンジしに行くけどな!」
「わかった。でも、リベンジの件については俺が暇でどうしようもない時だけな!」
「それでいい」
その後、アインスに朝食を作ってもらい、食べた後は解散した。アインスとサードはしばらく、ここで店を出しているから、いつでも来いとの事だ。
俺は二人と別れた後、姿が見当たらないクロを探したが見つからなかったので放っておくことにした。多分、どこかに散歩でも行ってメスを引っ掛けてるのだろう。
一人で大通りまで歩いて、ギルドへと向かう。久しぶりにオルランドのギルドに来た。懐かしい。初めて来た頃を思い出す。
最初はギルドの場所が分からなくて困ったな~
そこをマルコに助けられたんだよな。
「ははっ。懐かしいな」
ポツリと呟いた俺はギルドへと入る。多くの冒険者達が中にはいて、依頼を受けるため受付の所に殺到している。その中でも、一番の人気はやはり彼女だ。
「セラさん……」
向こうは俺のことなど覚えていないだろう。それは少しだけ寂しい。でも、またやり直せばいい話なだけ。
今は冒険者の登録を済ませるべきだ。俺は比較的冒険者が少ない所へ向かい、冒険者登録を済ませる。前回、説明を聞いているので大した手間は掛からなかった。
早速、適当な依頼を受けて街の外へと出て行く。また、あの胸躍る楽しい冒険者生活が始まるのだ。




