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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
最終章 彼の願いは

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一難去ってまた一難

 サイファを倒した俺は喜びに飛び跳ねそうにあなったが床が崩れ始めてしまい、勝利の余韻に浸る事も出来ない。



「まさか、落ちてる?」


「まさかじゃねえんだよ! 落ちてるんだよ!」



 今まで浮いていた床は崩れて落下を始めていた。このままここにいれば地上へと叩きつけられてしまう。慌てて俺たちは逃げる準備を行うがタカシ君が救いの手を述べてくれた。



「エレノアの空間転移で逃げるぞ。全員掴まれ」



 全員の手が繋がれた瞬間、世界が暗転するとイスカンテを取り囲む防壁の上に俺たちは立っていた。やはり、空間属性の魔法は便利だ。出来る事なら俺も覚えたい。



 などど考えていると、防壁の周りを囲んでいたブラックリミナーレが消えていく。どうやら、サイファが死んだことでブラックリミナーレも消滅したのだろう。



 こうして世界は救われた。あまりにも犠牲が多く、悲しみもまた同様に。決して癒える事の無い傷跡を残した。



 クラスメイトが全員集合する。それはこの世界に来た初めの頃以来だった。中心には度重なる激闘で服が破れている俺と桐谷とタカシ君がいる。



 まさか、俺がクラスの中心になる日が来るとは思いもしなかった。悪い気はしないが些か居心地が悪い。何故ならば、クラスメイトたちが俺に向かって頭を下げているからだ。



 理由は俺を疑い殺しかけたことだ。勿論、俺は既に気にしてはいない。ただ、簡単に許すつもりもない。なので、男連中はタカシ君を除いた面々を一発ずつぶん殴った。女子の場合はビンタで済ました。



 まあ、俺の力なので全員大ダメージだったが。



 文句を言う奴がいたので――



「なら、俺が受けた痛みを味わうか?」



 ――と軽く脅したら土下座で謝罪してきた。



 一件落着とまでは行かないが蟠りはなくなった。サイファという脅威もいなくなり、ブラックリミナーレという忌々しい存在も消えて俺達は勝鬨を上げる。



 俺たちの勝利と言う報告はすぐさまイスカンテ内部の人間にまで伝わり、地響きが起こったように人々の歓声が聞こえてくる。クラスメイトも何人かは泣きながら手を上げて勝利に喜んでいる。



 しかし、これでめでたしめでたしとはいかない。結局、今回も前回と同じ結末と言わざるを得ない。勿論、世界を見て回ったわけではないが、無事なのはイスカンテくらいだろう。



 生き残れた事を素直に喜べずにいられなかった。そんな俺を気にして委員長が話しかけてくる。



「どうしたの? まだ具合が悪い?」


「いや……喜べばいいのかわからなくて。失ったものが多すぎて……」


「そうだね。でも、これだけは言える。貴方のおかげで世界は救われたの。だから、そんな悲しそうな顔をしないで」


「……そう……だな。ああ、そうだ。悪い、少し考えすぎてた」


「うん。今はこの喜びに身を任せましょう」



 お祭り騒ぎのようになっているクラスメイト達に混ざり、深夜まで騒ぎ続けた。疲れ果てたクラスメイト達が眠りに就く中、俺は一人イスカンテの防壁の上を歩いていた。



 全部終わった。


 これから復旧作業で忙しくなるだろうな。


 その前に宴とかな?


 まあ、なんにせよ終わったんだ。


 これでようやく彼女を作って楽しく暮らせるんだ!!!



 思わず踊りだしそうになった時、不意に声が聞こえてくる。



「おめでとう。君は選ばれた」


「はい?」



 突然、変な声が聞こえてきたので周囲をぐるりと見回してみるが誰もいない。一体どこから声が聞こえてきたのだろうかと首を傾げていると、もう一度声が聞こえてくる。



「数多の試練を乗り越えし勇者よ。君には私に会う資格がある」


「誰だ!? どこにいる!」


「故に招待しよう。我が領域へと」



 すると、夜だったのに世界は真っ白に染まった。どうやら、声の主が俺をここに転移させたのだろう。俺は真っ白な世界を歩き回ると、扉が目の前に現れた。



「これは……」



 入れってことだよな。



 躊躇うことなく扉を開けて中に進むと、円卓があり椅子に腰掛けている男にも女にも見える美形の青年がいた。



「ようこそ。勇者よ。さあ、君も掛け給え」



 青年の真正面に座るように促されて席に着くと、目の前の青年がにっこりと笑い話しかけてくる。



「まずは自己紹介としようか。私は――この世界の神だ」



 神だと名乗った瞬間、魔力を解放して円卓を蹴り上げ青年を殴り飛ばそうとするが青年には手が届かなかった。目には見えない壁のような者が存在して俺と青年を分け隔てている。



「いきなりな挨拶だね」


「ふざけんなよ! てめえが本当に神だって言うんならこの狂った世界で何がしたいんだよ!」


「ふむ。そうだな。君には知る権利がある。全て話そうか」



 ようやく、ようやくだ。今まで知りたかったこの世界の謎が全て分かる時が来た。



「この世界はとある目的の為に作られた箱庭のようなものだ。もっと正確に言えば実験場と言うのが相応しいか。

 そのとある目的と言うのが神の尖兵を作ることだ。異世界から呼び寄せ、この世界で試練を与える。そして、試練を見事に突破した者は晴れて私に会う資格を得る。

 神の尖兵になれば私に出来る事ならば何でも叶える。例えば、死者の復活とかね」



 スケールが大きすぎてまるで理解できない。



「神の尖兵ってのは使徒のことか?」


「いいや。アレは違う。試練の一つに過ぎない。神の尖兵とはこことは違う別世界に送り込む者のことだ」


「どういうことだ。どうして別世界に送り込む必要がある?」


「この世界の創造主様のためだ」


「創造主? お前が神じゃないのか?」


「私はこの世界の神という役割を与えられた管理人という立場のようなものだ」


「じゃあ、その創造主の目的は?」


「答えることは出来ない。君が神の尖兵になれば話は別だがね」


「もういい。十分だ」



 俺は話を聞いて目の前の青年は倒さねばならない敵だと判断して全ての力を解放する。神と名乗っているが全能と言うわけでもないだろうと見えない壁を打ち壊して青年に拳を振り下ろした。



「私は神だと言ったが?」



 俺が纏っていた全ての力が霧散する。この世界に来る前の俺に戻った。青年に拳は届かず、気がついたら俺と青年は離れていた。



「君に宿っていた力は全て消させて貰った。今の君はこの世界に来る前の無力な人間だ。それでも挑むかい?」


「それ以外の選択肢があるのか!」


「あるとも。神の尖兵になる事を誓えば君が持っていた力を返そう」


「断ったら?」


「非常に残念だが死んでもらう」



 くそ……


 ガチでやばいじゃんか。


 マジで魔力も気もない。


 どうしようもないじゃないか!

不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとうございます

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