表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
最終章 彼の願いは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

662/684

限界突破

「限界突破。これが俺の新しいスキルだ」



 溢れ出てくる力の源はなんなのかは分からない。一重に俺が乞い願ったからだろうか。それとも、別の要因だろうか。考えても仕方がない。やるべき事は分かってる。



「てめえ、ぶっ倒す!」



 殴り飛ばしたサイファは既に起き上がりこちらへと歩いて来ていた。俺も同じようにサイファの元へと歩み寄る。



「また特有の大口か。一体どれだけホラを拭けばその口は塞がるのだ?」


「さあな。聞きたくなけりゃ耳でもとってろ」


「やれやれ、新たなスキルを手に入れて調子に乗っているようだ、なっ!!!」



 サイファが俺の言葉に頭痛でも覚えたかのような素振りを見せた後、殴り掛かってくる。だが、その拳は空を切ることになる。たかが一発のパンチを避けただけだがサイファにとっても俺にとっても一大事なのだ。



「……っ!?」


「行くぞ!!」



 そこから怒涛のラッシュをサイファに叩き込む。覚醒を使っていた時以上の、いや、数倍数十倍もの速度で打ち出される拳の数々はサイファを確実に捉える。



「ぐぅおわあああああああああ!!!」



 初めてサイファの悲鳴を聞いた気がする。そのおかげでわかった。今の俺の力はサイファにも通用する事が。この奇跡のような力がいつまで続くかは分からない。だから、出し惜しみなどしない。



 ここで勝負を着ける!!!



「るぅあああああああああああ!!!」



 咆哮をあげながら狂ったように拳を蹴りをサイファに叩き込む。しかし、サイファも簡単には勝たせてくれない。両腕を掴まれて倒されると、殴りつけてくる。



 今まで受けた拳の中で一番の威力だった。床が陥没して突き抜ける。地面を突き抜けて出た場所は空の上だった。



 そりゃそうだ。


 天空の城で戦ってたんだから。



 空中に投げ出された俺とサイファはもみくちゃになりながら地上へと落ちていく。落下している途中で一旦離れて体勢を整え直して空中でぶつかる。目にも止まらぬ超スピードバトルを展開する俺とサイファはやがて地面に足が付いた。



「はあっ!」


「ぬぅん!」



 地面に足が付いた瞬間、両者互いに大地を踏み砕き全力の拳打を繰り出す。とてつもない力で俺とサイファの拳がぶつかった瞬間、周囲の地面が吹き飛ぶ。足元の地面が無くなり宙に浮きながら俺とサイファは戦いを続ける。



 俺とサイファの戦いで生まれた衝撃波がブラックリミナーレを破壊していく。もしかしたら、クラスメイトも巻き込んでるかもしれないけど、今だけは許して欲しい。



 サイファの攻撃を潜り抜けて空に向かって蹴り上げる。天高く打ちあがったサイファを追い掛けて行き魔法を放つ。俺が放った魔法はサイファが放つ魔法によって相殺される。爆炎が広がり空を照らす。



 爆炎のなかを突き抜けるとサイファも同じく爆炎のなかを突き進んでいた。再び、拳と蹴りを交えて激しくぶつかり合う。



 顔面を殴られ、鳩尾を殴り、脇腹を蹴られ、側頭部を蹴り、と応酬が続く。度重なる攻撃でサイファは満身創痍となっている。勿論、俺も言わずもがなだ。



 大空で戦っていた俺達は移動しながら戦いを続けて最終的には天空の城へと戻ってきた。瓦礫の山と化した場所で戦い続ける。



「ぜやあああああああ!!!」


「おおおおおおおおお!!!」



 荒れ狂う暴風が如く俺は拳を突き出し、蹴りをいれ、魔法を放つ。それは俺だけに限った話ではなくサイファも同様だ。瓦礫の山と化していた天空の城は最早跡形すら残っていない。幸いな事にタカシ君と桐谷は俺たちの戦いに巻き込まれない様に逃げている。おかげで気にせず戦える。



 お互いに距離を取り合い魔法の撃ちあいに変わる。互いの魔法は互角で相殺されては爆炎が広がり花火のように周囲を照らす。このままじゃ勝負がつきそうにないので魔法を止めてサイファへと駆ける。



 しかし、サイファの方はしつこく魔法を連射してきて近づけまいとする。吹雪のように魔法が降り注ぐが回避して、時には弾き飛ばしながらサイファへと距離を詰める。



 そして、俺とサイファの距離が零距離になり肉弾戦へと切り替わる。既に酷使し続けた身体は悲鳴を上げている。殴る度に激痛が走り、瞬時に治す。蹴りを決めるたびに骨が砕けて、即座に再生させる。肉体も強化してきたがここまで酷使した事は一度も無い。されど、ここで弱音を吐くわけにはいかないのだ。



「うおおおおおおっ!!!」


「かぁあああああっ!!!」



 言葉などはなく狂戦士のように雄叫びを上げながら戦う。両者の力は拮抗しており、どちらが勝ってもおかしくはない。



 ここまでやったんだ。


 負けても許して貰えるよな……


 なんて、弱気になれるかよ!


 俺が勝たなきゃいけねえんだ!


 勝って、彼女とイチャコラするんだよ!



 一撃二撃とサイファよりも多く攻撃を食らわせていき、やがて終わりの時がやってくる。俺の放った渾身の一撃が決まりサイファが勢い良く吹き飛んで行く。まだ、残っていた城の壁に激突した後、突き抜けてゴロゴロと転がりゆっくりと止まる。



 サイファは立ち上がろうとしたが足に力が入らず片膝を着く。



「ぐ、くく……馬鹿な……!」



 悔しそうに顔を歪めて、最後の止めを刺そうとしている俺を見上げる。



「長かった。俺の戦いもこれで終わる」


「おのれ……っ!」



 抵抗する素振りも見せないサイファに俺は止めの一撃を放つため手を翳す。魔力が手の平に集まっていくのをサイファは歯軋りしながら見ていたが、やがてがっくりと頭を垂れる。



「これでおわ――」



 ドクンと鼓動が鳴り渡る。次の瞬間、全身から血が吹き出して激痛が襲う。



「うわああああああ!!! いぎゃああああああああああああ!!!」



 堪らず悲鳴を上げてその場に倒れ伏す。頭を垂れていたサイファは何が起きたか分からなかったが、俺が倒れた事で勝利を確信して笑みを浮かべながら俺に手の平を向ける。



「はははっ! スキルの代償か知らんが、どうやら勝利の女神は私に微笑んだらしい! 死ねぃ! 勇者っ!」


不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとうございます


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ