共闘
崩壊する城の中、俺は傷だらけになりながらも立っていた。しかし、目の前にいるサイファは多少の傷はあれど俺より余裕そうに立っている。こっちは息切れまでしてるというのに。
「はあ、はあ、参ったな……」
「もう終わりか?」
「ははっ……まだまだだぁ!!!」
吼えると俺はサイファに突っ込み、乱打を繰り出す。だけど、俺の攻撃は掠りはしてもダメージには繋がらない。対してサイファの攻撃は的確に俺へと当たりダメージが蓄積していく。
それでも、俺は攻撃の手を緩めない。拳を交え魔法を放ちと激しい攻防は続く。あの手この手で攻めるもサイファには届かない。
「ぎっ!!」
「はあっ!」
サイファの貫手が脇腹に刺さる。堪らず抑えてしまい動けない所を蹴り飛ばされる。すぐさま空中で翻り瓦礫を足場にしてサイファに飛び掛る。
「ずあっ!!」
蹴りを放つも避けられてしまった上に足を掴まれる。そのまま持ち上げられて床に叩きつけられる。右左にと交互に叩き付けられてしまう。意識が飛びそうになるがなんとか堪えて魔法を放ち逃れる。
「ぐぅぅ……」
「苦しそうだな。諦めて楽になってしまえばいいのに」
「はっ! 誰がするかよ!」
精一杯強がって見せるが既にズタボロな為、サイファから見れば滑稽であろう。だけども俺は諦めるわけにはいかないのだ。
もう少しで夢が叶いそうな場所にまで来てるのだから。
「俺はなぁ! 最初から最後まで! 徹頭徹尾に至るまで彼女欲しさに戦ってんだよ! あともう少しでそれが叶いそうなのに諦めてたまるかよ、ボケぇ!!!」
「既に叶いそうな夢ではないか。お前が望めばすぐにでも彼女は出来るだろう?」
「出来たとしてもお前らが世界滅ぼしたら意味ないだろうが!!!」
「ならば、こういうのはどうだ? お前とお前の彼女だけは残してやるというのは」
「ななななななっ!!!!」
なんて魅力的な!
だが、しかし!
「俺は今の世界が好きだからそれじゃ寂しいだろうが! 我が侭で強欲なんだよ、俺は!」
「人間らしいな。欲ばりさえしなければ幸せになれたものを」
瞬きすらしていないのに、気付いたら目の前にサイファがいて腹に魔法を撃たれた。
「がっはぁ……」
腹を撃ち抜かれた俺は呻き声を上げながら倒れる。魔力化を施しているが、サイファ相手にはあまり意味を成さない。致命傷にはならなくともダメージは残るのだ。
「少しは楽しめたぞ。それではな」
不味い!
このままじゃ殺される!
絶体絶命の危機を迎えたとき、俺に止めを刺そうとしていたサイファが突然現れた人影により吹き飛んでいく。
「よう。苦戦してるみたいだな」
「た、タカシくん……!」
「おら、さっさと立て」
手を貸してもらいながら立ち上がる。しばらく会わない間に随分と成長していたようだ。この世界で死んで蘇ってハイスペックイケメンになり超絶チートを持つ彼を見て改めて思う。
爆発すればいいのに。
「なんだ、その目は?」
「別に~。なんでもありませ~ん」
「気持ち悪い奴だな」
「な! ちょっとイケメンになったからって調子に乗りやがって~!」
「うわ、馬鹿! やめろ!!」
戦闘中だというのにふざけあってると、瓦礫の中に消えていたサイファが瓦礫を吹き飛ばしながら現れる。
「やれやれ、また一人増えたか。しかも、ガンマに手も足も出なかった男ではないか」
「ふん。そのガンマなら俺が始末したぞ」
「ははは。異世界人はどうしてこうも大口を叩くのだろうか。借り物の力でよく吼えるわ」
「勝てばいいんだよ」
「もっともな意見だ。では、私に勝てるかな」
「上等だ」
「あ、ちょ!」
煽られたタカシ君は真っ直ぐにサイファへと突っ込んでいく。俺は止めようと手を伸ばしたが間に合わず一人取り残されてしまった。
そして、案の定タカシ君は打ち負けてしまいこちらに吹き飛んでくる。俺が受け止めてやると、タカシ君は呆然としていた。
「あいつ、俺のスキルが効かない……」
「え? あの半減させたり減少させたりするチートスキルが?」
「ああ……!」
驚愕の表情を浮かべるタカシ君は思わず歯軋りをする。どうやら、思った以上に悔しかったようだ。
「助っ人がその体たらくとは悲しいな」
タカシ君をぶっ飛ばしたサイファがこちらに向かって歩いてくる。俺はタカシ君を引き離してサイファに向かう。床を砕くほどの力で駆け抜けてサイファとぶつかる。
しばらく、殴り合っていたが力負けしてタカシ君のいる場所に殴り飛ばされる。
「二人掛りで仕掛けよう!」
「それしかないか!」
「二人だろうと結果は変わらん」
『うおおおおおおお!!!』
二人同時に突撃してサイファを攻める。入れ替わり立ち代りと目まぐるしく拳や蹴りを放つが、どれも防がれる。魔法を交えてさらに激しく攻めるも二人同時に弾き飛ばされた。
「うぐぅ……」
「くそぅ……」
ズザザッと床を擦りながら止まる。助っ人に来たはずのタカシ君も既にボロボロになってしまっている。まさか、ここまで実力差があるとは思いも寄らなかった。
覚醒でステータスが跳ね上がった俺でさえも勝てないのだから、俺と同等のタカシ君じゃ到底無理であろう。
こちらへと歩み寄ってくるサイファを見ていると、横方向から魔法が飛来しサイファに直撃する。避ける素振りも防ぐ動作もしていなかったので完全なる不意打ちだった。
この場には俺とタカシ君しかいない。一体、誰がサイファに魔法を当てたのだろうかと不思議に思っていたら足音が聞こえてくる。
「良かった! 二人とも無事か?」
「……桐谷かよ」
「ちっ。獅子王か鰐淵あたりがよかった」
「え、えぇ……」
新たな助っ人は桐谷大輝だった。いけ好かない奴だがいないよりかはマシ程度だろう。そもそも、俺のステータスや戦闘技術を委員長のスキルで与えられているから誰が来ても変わらないけど。
「やれやれ、次から次へと増える。お前達はゴキブリだな」
「はん。ゴキブリ並みの生命力だよ。だから、まだまだやんぞ!!!」
俺を先頭に二人が着いてくる。三人でサイファを取り囲み激しく攻め立てる。
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