いざ天空の城へ
「そんなわけで遅れちまった。本当に申し訳ねえが今は悔やんでる時間もない」
「そうだったのね。でも、山本くんが罪に思う必要はないわ。私たちが貴方を信じられなかったのが原因だし……」
「まあ、その辺は仕方ないと割り切ったよ。とにかく今は委員長のスキルだ」
「え? 私の?」
「うん。ほら、同調と協調で俺と同じ強さに出来るだろ?」
「い、いいの?」
「いやいや、戸惑ってる場合じゃないって。ほら、早く」
「う、うん」
過去の事を全て説明した俺は委員長のスキルを使う為に手を繋ぐ。俺の身体が突然発光すると、光が委員長の方に流れていく。委員長の身体も光に包まれる。
「すごい……なにこれ。福田君の時も凄かったけど山本君の方が何倍も、ううん、何十倍も凄いよ!」
「褒めてくれるのは嬉しいけど、早くみんなにもやってくれ」
「うん! あっ! ちょっと待って。急にこんな力を流したら驚くかもしれないから、みんなに連絡するね!」
すると、委員長は目を瞑ってだんまりになってしまう。俺はアルファが襲ってこないか警戒していると委員長の目が開かれる。
「これで大丈夫」
「もう手を離してもいいかな?」
「えっ!? えっと、まだ繋いでおかなきゃ駄目かな~」
「マジ? わかった。終わったら教えてくれ」
「うん……」
なにやら目を泳がして動揺しているみたいだが、多分もう手を繋いでいる必要ははいのだろう。でも、委員長可愛いからその嘘に乗っかっておこう。
しばらくすると、戦場のあちこちからど派手な爆発音が聞こえ始める。どうやら、上手く俺の力が行き渡ったらしい。
俺はそれを確認すると委員長から手を離す。手を離した際に僅かだが委員長の顔が曇るのを見逃さなかった。
え?
もしかして俺に気があるの?
勘違いしちゃうよ、俺?
「じゃあ、俺は行くよ。あの空に浮いてる城でふんぞり返ってるであろうサイファをぶっ飛ばしに」
そう言って委員長に背を向けて飛び立とうとしたら委員長が抱き付いてきた。いきなりでびっくりしてしまったが何とか取り繕って冷静に対応する。
「まだ、何か?」
「この際だから言うけど……私前から山本君のこと好きだった!」
「へあっ!?」
やべ!
びっくりしすぎて変な声出ちゃった!
「多分覚えていないと思うけど高校受験の時に筆記用具を忘れた私に貸してくれたでしょ? その日からずっと……」
そんなことしたのか俺は!?
いや、待て!
思い出せ!
確か受験のとき隣の席でアタフタしてる女の子がいた記憶はあるけど……
「もしかして、メガネとか掛けてた?」
「えっ! うん、そう! 今はコンタクトだけど受験の時はメガネしてたの!」
「ああ~、じゃああの時の前髪ぱっつんのメガネさん?」
「うん……」
「覚えてるよ。あの時はシャー芯とシャーペンに消しゴムを貸したのも」
過去にいじめられたから友達が誰もいない所を受けて筆記用具は忘れたら貸してくれる相手がいないので予備を含めて三つも持っていたからな。
「全部覚えててくれたんだ……」
メスの顔してる。
知らんけど。
でも、頬を染めて潤んだ目で見つめてくる委員長が可愛いです。
「その返事は――」
「いまはいいの。全部終わったら猛アタックするから覚悟してて!」
背中に抱きついていた柔らかい感触が去ってしまい寂しくなるが委員長からの宣戦布告を受けて気が緩む。
「……ああ。全部終わらせる」
「応援してる。がんばって」
ただ一つ思うのは好きだった割にはどうして俺のことを信じてくれなかったの?
と思いました。
ちょっともやもやしながらも天空の城へと乗り込み、襲い掛かってくるブラックリミナーレを破壊して城の中へと入る。
城の中は一本道で真っ直ぐ進むと大きな扉が立ちはだかる。どう考えても人間サイズじゃない。なんでこんなのを扉にするんだと思いながら扉を開ける。
「ようこそ。勇者ショウ。まさか、生きていたとは思わなかったよ」
「ははっ。死んだと思った奴が生きてて悔しいか?」
「いいや。これで私も楽しめると思ったのさ」
「あ、そう。じゃあ、御託はいい。かかってこい」
「来るのは君の方だ」
若干、イラっとしてしまったが玉座にふんぞり返ってるサイファを俺は殴り飛ばした。
「ごはっ……」
「舐めんなよ。今の俺は最高に強いぜ!」
玉座を破壊しながらサイファは吹き飛び壁に激突した。しかし、なんともなかったようにサイファは普通に立ち上がる。
「む……」
「この程度ならあまり期待は出来そうにないな」
言いやがる!
見せてやるよ!!
先代勇者達に鍛えてもらった力を!
不定期更新ですがよろしくお願いします
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