抗うクラスメイト
五日目の戦い、クラスメイト達はいつも通りに全力で抗う。世界を埋め尽くしそうなブラックリミナーレの大群とクラスメイト達がぶつかり合う。
クラスメイト達の魔法で一気にブラックリミナーレが破壊される。大群の中に開けた場所が出来て、近接戦闘の得意な者達が突撃する。
道を切り開いた後はそれぞれ戦い始める。東西南北に分かれイスカンテを取り囲むブラックリミナーレ。それらを破壊する為にクラスメイト達も東西南北へと散って行く。
各地で爆発音が絶え間なく鳴り響いている。そして、一際大きな爆発音が轟き、クラスメイト達は誰かがアルファ達と接触したのだろうという事がわかった。
「また会ったな」
「ガンマ……」
タカシはガンマと遭遇してしまう。先日、傷一つ負わすことの出来なかった相手が目の前に現れてタカシの心は挫けそうになる。
「タカシ様っ! 戦う前から諦めてはいけませんよ!」
「っ! そうだな! エレノア。一緒に戦ってくれるか?」
「はい! 最後までお供します!!」
「ふっ、想いだけでは我には勝てんぞ?」
そんな事は百も承知だとタカシが啖呵を切りガンマと激突する。先日と違いエレノアと共に最高のコンビネーションでガンマと戦いを繰り広げていく。
タカシとエレノアがガンマと交戦を始めた時、別の場所でも激しい戦闘が起こっていた。
「どうした? 昨日より動きが鈍っているぞ?」
「黙れっ!」
剛史は現れたベータに猛然と襲い掛かるが、昨日の一戦は剛史の心に傷を残しており、動きにも現れているのをベータに指摘されてしまう。動揺を隠すように剛史は声を張り上げて果敢に攻める。
そんな剛史をフォローしようと何人かのクラスメイトが剛史に支援魔法で強化を施し、剛史が離れた瞬間に魔法で攻撃する。
「昨日と同じで芸が無いな」
「うるせえ! こっちはこれが最善なんだよ!」
「そうか……ならば、死の淵に立たされれば少しは変わるか?」
「なに――っ!?」
剛史は何が起きたか理解できない。何故、自分の腹部から腕が突き出ているのか。何故、ベータが背後にいるのか。理解した剛史は強烈な痛みと夥しいほどの血を撒き散らし絶叫する。
「ふん。言われていたはずだ。今日がお前達の最後だと。昨日までは怪我だけで済ませていたが――今日は容赦しない」
倒れる剛史を見てクラスメイトは逃げ出したくなるが、必死に気持ちを押さえ込み魔法を連射した。
「今だ! 鰐淵に回復魔法を!!!」
貴章が声を出して指示を飛ばす。朱莉が飛び出して剛史に回復魔法を施し怪我を治していると、貴章の痛みに悶える声が鳴り渡る。
「ぎぃやああああああ!!!」
「いい判断だ。逃げ出さず仲間を救おうとするその精神は大したものだ。惜しむらくは実力が伴っていないことだな」
ベータの手には誰かの腕が握られていた。見なくても分かる。その手は貴章のものだろうと瞬時に理解した。
「西川っ!!!」
「ちくしょうっ! てめえっっっ!!!」
貴一が貴章の名を呼び、憲明は怒りに我を忘れ単身ベータに突撃する。
「友をやられて怒ったか。しかし、貴様程度の実力であれば目を瞑っていても容易い」
「うぎゃあああああ!」
無謀にもベータに突撃して拳を振るった憲明の手は掴まれて、そのまま握りつぶされてしまう。悲痛な雄叫びを上げる憲明をベータは一切の加減無く地面に叩きつける。
「脆い。脆いぞ、お前達!」
「ひっ!」
近くにいた希望はベータに睨みつけられた瞬間、小さく悲鳴を上げてしまう。圧倒的な強さに、今まで無かった残忍さを目の当たりにしてしまったのだから怯えても仕方ない。
「女子供とて容赦はせん!」
「い、いや――」
「せえい!!!」
希望に迫り、容赦なく拳を振るうベータに白音が体当たりした。バランスを崩したベータは希望に振るった拳が空を切った。
「よし! もう一丁!」
不意打ちとはいえベータに一撃入れた白音はふんすと鼻を鳴らして再度突進する。助けられた希望は恐怖に固まって動けなかったが白音がベータに一人立ち向かっていくのを見て友達が戦ってるのに自分だけ何もしないわけにはいかないと白音と共にベータに立ち向かう。
そして女子が勇敢に戦っているのに男の自分が行かないでどうすると貴一も己を奮い立たせてベータに立ち向かう。
時同じくして、デルタが大輝達の前に現れた。空から降りてきたデルタを確認した大輝は歯噛みする。ここで死ぬかもしれないと思いながらもデルタに立ち向かう。
「ふむ。先日とは違う相手か。少しは楽しめると良いが……」
「そうやって人を馬鹿にするようなことばかり言いやがって!」
「馬鹿にしていない。事実を述べているだけだ。現にお前達は弱いだろう?」
「くっ! 黙れ!!」
事実なだけに何も言い返せない大輝は目一杯叫びながらデルタに向かって駆け出す。
「やれやれ、図星か。しかし、怒りに身を任せて直進してくるのは愚かな行為だぞ」
「はあああああっ!!!」
我武者羅に攻める大輝だがデルタに掠りもしない。デルタはつまらなぞうに息を零しながら大輝に反撃する。
「つまらんな。この程度か」
「ぐわあああああっ!?」
デルタの一撃を喰らい大きく吹き飛んでいく大輝。一緒に行動していた楓と留美が激昂しデルタへと襲い掛かる。
「よくも大輝を!!!」
「許しません!!!」
「はあ……散れ」
襲い掛かってきた二人をデルタは腕の一振りでなぎ払う。
『きゃああああっ!!!』
つんざく悲鳴を上げながら楓と留美は吹き飛ばされて地面を転がる。
「これは楽しめそうにないか……」
残念そうに呟くデルタはゆっくりと地面に倒れる二人に向かって歩いて行く。そこに、猛スピードで突っ込んでくる気配を感じたデルタが振り向いた先には一真がいた。
「先日の!」
「があああああああ!!!」
既に暴走している一真はデルタに目かって飛び掛る。
「先日と変わらぬのなら貴様に勝ち目はないぞ!」
「うがあああああ!」
「やはり、昨日と同じか……」
「ところがどっこい。昨日と違って俺もいるんだよな」
「何奴!? む! 下か!!」
目の前には一真が迫っており、地面にはいつのまにか雅樹がデルタの足を掴んでいた。
「行けえ! 獅子王!!」
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