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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
最終章 彼の願いは

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呆気ない幕切れ

 今度こそ詩音は大丈夫だと確信してスキルを発動させるが、一真が突然デルタの飛んでいった方向に走り出してしまう。



「えっ、えっ! なんで!? もう終わったんじゃないの!?」



 困惑する詩音をよそに一真は走る。まだ、生きているだろうデルタを倒す為に。一真には直感的にわかっていた。まだ、デルタが生きていることが。



 吹き飛ばされたデルタは土埃を払いながら立ち上がる。そして、こちらに向かってきている一真の気配を感知しながら笑みを浮かべる。



「いいぞ。もっとだ。もっと楽しませてくれ」



 獰猛な肉食獣を彷彿させるような笑みを浮かべるデルタの視界には一真が映っていた。同様に一真の視界にも大したダメージを負っていないデルタが映っている。



 彗星のように走る一真は勢いを落とすことなくデルタとぶつかる。デルタも一切避ける素振りを見せず一真とぶつかる。二人が組み合っただけで衝撃波が生まれて周囲の地面を吹き飛ばす。遠方にいた詩音が突風を受けて迷惑そうに眉を顰める。



「もうなんなのよ、この風は!?」



 視界に映ってないデルタと一真の取っ組み合いなのだが詩音には知る由がない。



「はああああああ!!!」


「がああああああ!!!」



 組み合っている二人は互いの手を握り潰さんとばかりに力を込める。しかし、両者の力は拮抗しており中々決着が着かないでいる。その状態に嫌気が差した一真がデルタに頭突きを入れる。デルタも負けじと頭突き返す。



「ぐっ!」


「ぎっ!」



 互いに額が割れて血を流しているのだが、些細な事だと気にしない。そもそも、一真の方は理性を失っているので手足が砕けようとも戦い続けるだろう。



 しかし、いつまでもこの状態が続くわけではなく一真は大きく口を広げると魔力を収束させていき極大な魔力砲を撃ち放った。



「はああああああああ!!!」


「なあっ!?!?」



 両の手で一真と組んでいたデルタはまともに魔力砲を受けてしまい手を離してしまう。手が離れた瞬間、デルタが魔力砲により吹き飛んでいく。追いかける一真は地面に激突したデルタを容赦なく踏みつける。



「るぅあああああああ!!!」



 何度も何度も一真はデルタを踏みつける。そして、どんどん地面が陥没していきデルタがどんどん埋まっていく。



「ぐ、う、調子に乗るなああああ!!!」



 踏みつけてくる一真をデルタは魔法で吹き飛ばして埋まっていた地面から抜け出す。飛び出したデルタは魔法を連射する。機関銃の如く放たれる魔法は一真を傷つける。



「があっ!? ががああ!?!?」



 夥しいほどの魔法を被弾した一真が耐え切れずに膝を着く。そんな一真を見て魔法を放った張本人であるデルタも一真が原型を留めている事に驚きを隠せないでいた。



「あれほどの魔法を浴びてまだ人の形を保っていようとは……どこまで頑丈なのだ」



 デルタはゆっくりと一真に近付く。次の瞬間、膝を着き沈黙していたはずの一真が牙を向く。恐らく魔法を両腕で防いでいたのであろ形跡があり、血を流している一真は腕が使えないのでデルタの首に噛み付きを仕掛けた。



「何だとっ!?」



 予想外の攻撃にデルタは驚き声を出してしまう。だが、寸前のところで首への攻撃は避ける。首への噛み付きは失敗したが一真はデルタの肩に喰らい着いた。



「ぎゃうううう!!」


「ぐあああああ!?」



 肩に噛み付いた一真はデルタの肩を噛み千切る。噛み千切られるとう経験したことのない痛みにデルタは堪らず声を張り上げる。一真は口の中にあるデルタの肩の肉片を吐き捨てて睨み付ける。



「おのれぇ……」


「ぐるるぅ……」



 食い千切られた肩を抑えながらデルタは一真を睨み付ける。お互いに睨み合いが続き、痺れを切らした一真が先に動く。



「がああああああ!!!」



 腕が使えない一真は蹴り技でデルタを攻める。時折、噛み付きなどの変わった攻撃も交えてデルタを追い込んでいく。しかし、デルタ相手に何度も同じ手が通用するわけも無く悉くを潰されていく。



 そして、遂に一真の両足がデルタに折られる。流石に一真も骨折した足では戦えず、吼えるだけで何も出来なくなった。せめてもの抵抗に口から魔力砲を放つもののデルタには当たらない。



「手負いの獣が最も恐ろしいと言うのはこのことだろうな」



 両手足が使えなくなっても一真は戦意を喪失しておらずデルタを睨みつけている。その眼光は今でもデルタの命を狙っている。



「そんなに睨みつけても何も出来はしまい。しかし、貴様との戦いは中々に良かったぞ。少々熱くなってつい本気を出してしまったが……まあ、本気を出させた事は喜んで良いぞ」



 デルタが喋っているが一真には届いていない。今もただ目の前の敵を殺すとばかりに睨みつけ、動かない手足を引きずっている。



「理性がないというのも困ったものだな。会話が出来ぬと話が進まない。ふむ、どうしたものか」



 低く唸っている一真に困り果てていたデルタにサイファから連絡が入る。その内容は勇者達の殲滅が完了したというものだ。正確には勇者達の戦闘要員を戦闘不能にしたというものだ。回復を担当している勇者達を残して、アルファ、ガンマ、ベータは既に帰還したとの事。



「わかりました。ただちに帰還します」



 デルタはサイファに返事を返すと、転がっている一真をこちらに向かってきている気配の元に放り投げる。一真を放り投げたあと、デルタは天空の城へと帰還した。

不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとうございます

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